医療の道を志す // キセキ13
この記事は、こちらのマガジンの記事です。
(前回までのあらすじ)
お世話になった病院に恩返しをするために始めたボランティア。さらに医療の知識を深めたいと思って始めたピアサポート。しかし、それらの時間は長くは続きませんでした。
医療の道へ進みたいと思うが……
病院でのボランティア、がんピアサポート活動を通して、私は医療の世界に対する興味がますます募りました。このまま会社員を続けながら活動を続けるつもりでいましたが……2020年に入り、コロナ禍で一切の活動が止まってしまったのです。
世界規模で広がる感染症。そして、駒込病院は感染症センターでもあります。私の愛する病院は、未知のウイルスと最前線で戦っているのです。医療の経験が一切ない私は、ただ静かに応援することしかできませんでした。皆さまのご無事を心から祈りながら……。
さて、私の医療に対する情熱を今後どういう方向へ持っていこうか?医療を本業にしたいという気持ちはありましたが、業界未経験の自分にどこまでできるか、わからずにいました。しかも10年以上勤めている会社を辞める勇気は、この時点ではまだありませんでした。
未来への道しるべ
そんなある日、病院でとある先生とお話をさせていただきました。11月にお会いしたので、仮に霜月先生とします。
私は、これまでがん治療などでこの病院に大変お世話になったこと、ボランティアなどを通してさらなる高みを目指したくなったことなどを伝え、医療の世界に興味があるけどどうしたら良いのか分からない、と霜月先生に相談してみました。すると、先生はこのような話をしてくれました。
「あなたの興味あることは、医療ソーシャルワーカー(MSW)の仕事ではないでしょうか。これは社会福祉士の資格が必要になると思います」
……なるほど。帰ったらさっそく調べてみよう!
さらに、ボランティアを通して患者さんから「ありがとう」という言葉を頂けることや、患者さんが私に心を開き、自分のことを話していただけることなどがとてもうれしかったことなどもお話すると……霜月先生から、素晴らしい一言をいただけました。
「ありがとうの言葉が何よりもうれしい……。あなたは人生で一番幸せなことに気づきましたね!」
この言葉をいただいたことで、自分の想いは間違っていなかったんだ!と確信しました。霜月先生、ありがとうございました。
社会福祉士について調べてみた
帰ってきて、社会福祉士についてさっそく調べてみました。
この資格は国家資格です。社会福祉士は、生活全般の困りごとを抱えている方の相談に応じ、課題解決に向けて一緒に考えていく役割があります。また地域との連絡調整、ネットワーク構築なども行っていきます。
社会福祉士に必要なのは、
・利用者さんからニーズを引き出す力
・問題を解決するために必要な制度などの知識
・必要に応じて適切な専門職や機関などへ引き継ぐための調整力
など、多岐にわたります。制度やサービスなどに精通し、さまざまな専門職の人とお話できなければなりませんので、幅広い分野を跨いだ知識が必要となるのです。
人生の岐路に立つ
さて、社会福祉士の資格は、未経験者が仕事を続けながらとれるものなのでしょうか?
まず、社会福祉士の受験資格を未経験から取得するには、養成施設(専門学校など)を修了する必要があります。(入学には一定の条件があります)
通信科であれば仕事との両立がしやすいですが、ひとつ注意。それは、現場実習が1か月以上あることです。原則、実習は実習先施設の勤務時間に合わせますので、その間は仕事ができません。
私の場合は、実習前に退職かな……。逃げ道をつくらず、自分の情熱を確認するためなら、これくらいしても悪くはありません。また、私の現状であれば、仮に転職したとしても、収入や生活が激変してしまうわけでもなさそうです。
(なお養成施設の学費は、条件を満たせば、専門実践給付制度が利用できます。初期投資は必要ですが、後からそれなりに戻ってきます)
……うん。勇気はいりますが不可能ではなさそうな気がします。
私はここでついに、現職は退職し、新たな道へ進む決断をしました。
10年以上勤めてきた職場を退職し、40代から新しいことに挑戦するのは、勇気のいる決断でした。
しかし、私をここまで大きく成長させてくれた医療業界に残りの人生をかけてみることは、私にとってはそれ以上に意味のあることでした。そしていつか、今度は私が新しいキセキを起こせる可能性が少しでもあるのなら……。
こうして翌年、ついに私は専門学校生となったのです。
今日の音楽
米津玄師 - カナリヤ
夢を叶えるための道が新しく拓けるのなら、長年勤めた会社や業界には二度と戻れなくても、悔いはありません。