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安易な”お涙頂戴”企画にならなかった理由ー僕等の図書室 リモート授業ー

2020年6月6日、制作会社る・ひまわりさん(以下るひまさん)があるイベントをイープラス「Streaming+」にて配信しました。

「僕等の図書室 リモート授業」

僕等の図書室というのは、るひまさん主催の新感覚リーディング公演の事。

そして、今回のイベントは、「僕等の図書室シリーズ」(以下ぼくとしょシリーズ)に参加した”全ての国語の先生”(出演者の事)が出演するイベントで、ぼくとしょシリーズに欠かせない先生の一人、”たっきー先生”が出演していた過去の”授業”3本の上映と、シリーズ全ての国語の先生が参加し、過去2回たっきー先生が授業を行った「智恵子抄」のリモート授業で構成されていました。

いわゆる”お涙頂戴”企画ではない

”たっきー先生”こと滝口幸広さんは、昨年突然この世を去りました。

そんなたっきー先生をメインに据えたリモート授業を見たあと、このブログを読んではっとしました。

しかし、これは危うい魔法である。死者を起用するコンテンツは、扱いを誤れば感動ポルノに堕する危険がある。商業主義のもと、他者を踏みにじってでも金を儲けられればそれでよいという考えの人間が本作の見せた魔法を模倣すれば、それはおぞましい地獄を作り出してしまうだろう。いや、細心の注意を払って作ったとしても、観る人やのこされた人にとってはじゅうぶん暴力になり得る。だからこの手法を全面的に肯定することは断じてできない。(以上引用)

感動ポルノという言い方は個人的には好きではないのですが、それに属する企画ものは私も毛嫌いしているところがあります。

確かにこのリモート授業は、ともすれば”お涙頂戴”企画に成り得たかもしれない。

ではなぜ、このリモート授業は、それを回避出来たのか。

それは、るひまさんと滝口さん、そしてお客さんとの特殊な関係性があるのではないかと考えました。

”るひま”と”お客さん”との特殊な関係性

私が滝口さんを知ったのは、るひまさんの舞台がきっかけでした。

るひまさんはあくまで制作会社であり、事務所でもなければ劇団でもありません。

しかし、るひま作品常連の役者さんというのは少なからずおり、滝口さんもその1人でした。

常連の役者さんがるひま作品に出演する時には、ならではのカラーがあり、ならではの”愛され方”が存在しています。

滝口さんは30歳の誕生日の時に、「滝口炎上」というるひまさん主催の座長公演を明治座で行いました。

30歳という節目の誕生日に、懇意にしている制作会社に座長公演を企画してもらえる役者さん。

これを愛されていると言わずに何と言えるでしょうか。

この座長公演時に制作された幟は、昨年末出演予定であった「明治座の変 麒麟にの・る」上演時にも立てられていました。

また、滝口さんはるひまさんの舞台でいわゆる”客いじり”をする事が多かったのですが、決して不快になる様な発言はしません。

そして、お客さん側も滝口さんからの”いじり”を受け入れており、さらに滝口さんへの”いじり”に乗る、という関係性が出来ていました。

こういうのは行き過ぎてしまうと”身内ノリ”になりかねないですが、出演を重ねていくうち、観劇を重ねていくうちに出来た”絆”のようなものだと私は考えています。

ちなみに「僕等の図書室 リモート授業」の開催が発表されたのは、滝口さんのお誕生日(という言い方はもう相応しくないのかもしれませんが)の5月29日。

そんなところにもるひまさんからの愛を感じます。

ストリーミングの"必然性"

今回の「僕等の図書室 リモート授業」は、ライブではなくストリーミングで配信されました。

出演者の数を考えれば、ライブ配信が難しいのかもしれないとは思いますが、私はこのリモート授業がストリーミング配信であった事には”必然性”があると考えます。

最後に披露された”シリーズ全ての国語の先生”による「智恵子抄」のリモート授業。

開催発表時のタイトルは「智恵子抄」とされていたタイトルですが、配信映像に表示されたタイトルは「ユキヒロの智恵子抄」。

これは、ぼくとしょシリーズで上演された際のタイトルと同じものでした。

全9名の先生が代わる代わる朗読していったのですが、朗読が最後に差し掛かったあたり。

”たっきー先生”の朗読が始まりました。

"シリーズ全ての国語の先生"には、もちろんたっきー先生も入っていたのです。

”シリーズ全ての国語の先生”が朗読を行う為に、ライブ配信ではなく、映像の編集が可能なストリーミング配信である必要があったのではないでしょうか。

この演出にもるひまさんからの愛情を感じます。


リモート授業の最後は”海外出張”へ行ってしまったたっきー先生への各先生からのコメントでしめられます。

そう。たっきー先生は”海外出張”へ行っているのです。

一番”感動の押し売り”がしやすいコーナーでありながらも、そんな事は一切せず、各先生からの愛に溢れたコメントが送られました。

安易な”お涙頂戴”企画。

それを避けられたのは、るひまさんがお客さん、そして滝口さんへの計り知れないほどのリスペクトと愛をもって企画したからかもしれません。

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Sachi.(引っ越しました)
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