法制度と診療報酬制度
診療報酬の改定があると、医療スタッフ・医療機関としては敏感に情報をキャッチして対応を迫られることは多いと思います。医療機関の組織としての維持に関わることなので、仕方ないことではありますが、本質的には診療報酬の改定に振り回されない組織運営が大事ですよね。
医療行政学で、診療報酬を法制度の視点から学びなおせたのでまとめてみます。
法制度の構造
法令とは、ヒエラルキー(階層構造)を持ったものです。法令の秩序として、以下の階層構造をとっています。下位の法令は上の法令に矛盾できない、という秩序があります。
憲法
ー法律
ーー政令
ーーー省令
ーーーー告示
それに加え、「違憲立法審査権」を裁判所は権限として持っており(司法の権限)、国会(立法府)が認めても裁判所でそれを否決することができます。
上記の法令を、それぞれを例にすると、
法律 … 医療法(昭和23年7月30日・法律第205号)
政令 … 医療法施行令(昭和23年10月27日・政令第326号)
省令 … 医療法施行規則(昭和23年11月5日・厚生省令第50号)
告示 … 厚生労働大臣の定める地域医療支援病院の開設者(厚生省告示第105号)
通知 … 各省庁の事務次官・局長・課長さんらが出す、となります。
では、「診療報酬の改定」とはどれにあたるのでしょうか?
診療報酬の改定=告示
診療報酬は、「告示」になります。「診療報酬の算定方法」(平成20年3月5日厚生労働省告示第59号)ということで規定されており、その別表として「点数表(別表第1が医科診療報酬点数表、第2が歯科診療、第3が調剤)」があります。改定があるとあれだけ話題になるのに、思ったよりヒエラルキーの下位だな、という印象を持ちますが、逆に告示レベルだからこそ2年おきに改定ができるという意味でもあります。下位だから重要でないということではなく、ヒエラルキーの下位だからこそ柔軟な対応ができる、政府としても時代に応じた政策誘導ができる、とも言えますね。
※ちなみに、改定の頻度が「2年おき」であることに決まりはなく、実は慣習らしいです。介護保険の報酬改定は3年おきですが、これは介護保険法が3年を1期としており、施設認可も3年おきなので根拠がなくもないです。
診療報酬を法令の視点で学ぶことで、行政側の視点での意図も見えてくるかと思います。極端に捉えれば、新たに診療報酬として算定されるようになったことも、極端に言えば「2年でなくなってしまう」ことも十分にありうるので、自施設において報酬改定をうまく活用ないし利用しつつ、それに振り回されない医療を展開することの重要性を感じました。
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