Building the economic case for primary health care: a scoping reviewを読んで
SNSをやっていると、最新の文献などをシェアしてくださり、こちらとしても勉強のきっかけをいただけてありがたいです。
今回テーマにしている文献は、大浦先生がシェアくださり、非常に興味深くて早速読ませていただきました。そして翌日には大浦先生自身が分かりやすくまとめてくださっており、とても勉強になりました。いつもありがとうございます。
↓以下リンクです↓
https://moura.hateblo.jp/entry/2019/09/05/235254
個人的には、この文献の中で「効率性」や「公平性」といった言葉が出てきており、大学院でも出てきたキーワードです。今回は、このキーワードに絞って、この文献についてまとめてみます。
医療の効率性とは
医療における「効率性」とはなんでしょうか?以前自分がまとめたものがありますが、効率性というと、医療よりも経済学で出てきそうな単語ですよね。教科書的にも、狭義の効率性を「経済学の効率性(Farrel, 1957)」、広義の効率性を「その他の条件が同じならばより優れた結果をあげた場合」としています(『医療の効率性測定』より)。
狭義の効率性をもう少し細かく説明すると、
・技術的効率性technical efficiency(与えられた生産要素の投入水準のもとで、財・サービスの産出量の最大化)
・資源配分効率性allocative efficiency(与えられた生産水準のもとで、生産要素の費用の最小化)
に分けられ、2つを乗したものを「経済効率economical efficiency」と言います。
なんだか難しい単語ばかりになってしまいました。今回のプライマリヘルスケアの文献で言うと、プライマリヘルスケアやプライマリケアという「資源」を投入することで、入院を減らすとか救急外来の受診が減るとか、医療サービスにおける有効な結果を出せているかということです。医療・保健サービスも人的・技術的コストがかかっているので、それらを踏まえる必要があります。
そういう視点で効率性の向上を示す根拠になっている文献をみてみます。例えば、イギリスのcase management(個々人の長期的なケアのプランを立てるためのツール)、ケアの継続性(Worrall G, Knight J. Continuity of care for older patients in family practice: how important is it? Can Fam Physician. 2006 Jun;52:754-5.によると、継続性には15もの測定方法があるとされており、そのあり方は単一ではない)、近接性や患者中心の医療(これも継続性同様、測定方法が様々であり、そのあり方は単一ではない)など、医療・保健サービスとして実臨床で我々が「何をどのように資源として提供」すればいいのかを、個別に考える必要があるようです。
公平性について
公平性についても、根拠としているシステマティックレビューでは移民を対象にしていたり、個別の研究では人種や経済状況との関連が示唆されたりしており、そもそもプライマリケアを単に一律に提供すればいいのではなく、ハイリスクな人々のことを提供側が意識することがまず必要であることを示しています。
Richard L, et al. Equity of access to primary healthcare for vulnerable populations: the IMPACT international online survey of innovations. Int J Equity Health. 2016 Apr 12;15:64.のように、ケアの対象者と提供側のギャップを埋めることを示唆する文献もあり、日本全体やそれぞれの地域ごとの「プライマリヘルスケア」を模索していかなければならないですね。
プライマリケアとは
いくつかの定義があるのですが、Starfielrdの定義によれば、
・新しい健康問題に対するケアの最初の接触
・ほとんどの健康問題に対する包括的なケア
・ケアの継続性
・長期的な個人中心のケア
・ケアの調整
(Starfield B, Shi L, Macinko J. Contribution of primary care to health systems and health. Milbank Q. 2005;83:457–502.)
とされています。
基本的なことですが、こういったことを真剣に学び、現場に活かすことが、単に健康アウトカムを改善させるだけでなく、医療システムの効率性や公平性にも有効であるということを示している文献でした。
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