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若手でもベテランでもない立場だから

 今回は『駆け出しマネジャーの成長論』という、立教大学経営学部教授の中原淳先生の本を読んでの学びについてです。中原先生の書籍は、総合診療の指導に有用な『フィードバック入門』であったり、自分自身の学びを振り返るために『働く大人のための「学び」の教科書』『プレイフル・ラーニング』であったり、自分のあり方自体を振り返るために『リフレクティブ・マネジャー』であったりと、いろいろ読ませていただいています。どの本も実践的な内容になっているので、何か悩んだ時や実務に生かそうとしたときによく読み返しています。

 今回読んだ『駆け出しマネジャーの成長論 7つの挑戦課題を「科学」する』は、その名の通り、「マネジャーなりたて」の方向け(※マネジャーの上の立場の方向けの内容も一部含まれています)の書籍です。自分自身、もはや若手ではないし、でもベテランというにはおこがましい、くらいの年代であり、一般組織で言えばいわゆる「マネジャー」にあたるだろうと思っています。まず直接会えるような身近に、自分と同じ世代で総合診療・家庭医療の分野で頑張っている人となるとほぼいません。ですが、全国規模ではこの「若手でもないしベテランでもない」世代は徐々に増えているし、この年代特有の、SNSや学会活動を通じて思うのは、皆さんある程度同じような悩みを抱えているように思います。そういう自分くらいの世代において、組織内の自分のあり方に一つの方向性を示してくれるのではないかと思い、この本を手に取りました。

そもそもマネジャーとは?

 H・クーンツとC・オドンネルによると、マネジャーは「Getting things done through others」→「他者を通じて、物事を成し遂げた状態にすること」と定義しています。すごくシンプルで分かりやすいですが、かなりレベルの高いことだと思います。プレーヤーとして自分で直接手を出さずに成果を出す、ということは実際にはなかなか難しいですね。
 マネジャーになるときの変化におけるキーワードがとして以下が挙げられています。
①突然化(いきなりマネジャーになる)
②二重化(プレーヤーとマネジャーのバランス)
③多様化(職場メンバーの多様性)
④煩雑化(マネジャーの仕事はとても煩雑)
⑤若年化(若手がマネジャーになる)
 総合診療・家庭医療の分野では、どれも当てはまることが多いように思います。①や⑤は、そもそも人員が豊富なところが多くないので、必然的にそうなりやすいし、②も同じ理由でプレーヤーの仕事そのままにマネジャーの仕事が追加されてしまって、バランスをとるどころではなくなっていると思います。

挑戦課題

 この書籍の題名にもなっている「7つの挑戦課題」の中で、『意思決定の克服』『マインド維持の克服』は、積極的に取り組むべき課題だと思いました。

 マネジャーの扱う問題は「基本グレーである(白黒はっきりつけられるような問題は実務レベルで解決されている)」と指摘されていますが、非常に本質を突いています。臨床チームのリーダーとして責任を持って悩ましい意思決定を下すことや、特定の原因がはっきりしないトラブルへの対応など、が挙がります。そのときに、できるだけ様々な情報を集め、考えうる対応策それぞれのメリット・リスクの計算をし、行動に移すときにも責任を持ってやりきる(部下にやらせきる)という『意思決定』ができるかどうかは非常に重要ですね。明確な解答や正解がないだけに悩むところではありますが、中途半端にやるより「やりきる」ことでチームメンバーにとっても後悔がなく、事後的に振り返ったときに他の対応策の可能性をより検討しやすくなると思います。
 ただこの『意思決定』はかなりストレスフルなことなはずです。ポジティブなモチベーションが維持できていないと、グレーな問題に対して冷静な判断は難しいです。ここで重要なのが、自分の意見や考えに耳を傾けてくれる「他者」の存在とされています。現代社会は「個人化(何をするにせよ個が過剰に重視される)」が加速している時代ですが、個人はそこまで強くも頑健なものでもありません。正解のないグレーな問題に翻弄され、戸惑い、揺れ動くのが普通です。そのような状況において、自分を平静に保つための社会的ネットワークが必要です。自分であれば、同年代の仲間と一緒に学会関係の仕事を行ったり、SNSでつながっている仲間の活躍を見聞きしたりすることが、間接的にモチベーションになっています。

まとめ

 白黒つかないグレーな問題への意思決定も、それが積み重なる事によるストレスとどう付き合うかも、難しい問題ですね。特に『マインド維持』のためにいかにポジティブなモチベーションを保つかということは、これからマネジャー的立場になるであろう方々には、必要なスキルだと思います。「社会的ネットワーク」は、言葉で伝えられるようなものではないと思いますし、急にネットワークを作り上げようと思って作れるものでもないので、ネットワークを作るサポートをどうしていくか、ということも自分という「マネジャー」の役割なのだと認識しました。

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