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楽曲派アイドルとファン(オタク)、みんなで生き残ろう!① 楽曲派アイドルを取り巻く現状

以前このような記事を書きました。多くの方の目に留まって嬉しく思っております。

ちなみに最近、実に刺激的な書籍が発売されました。

楽曲派おじさんを称している身としては黙っていられず、すぐに購入して読んでみました。

本記事はこの書籍のレビューがメインではないですが、全体を通しての感想として

よく企画が通ったな

という思いです。ニッチで、それでいてさらにコロナ禍以降特に衰退している楽曲派アイドルというジャンルにおいてこのようなガイドブックが発行されたということは、歴史的なアーカイブ資料にしなければならないレベルでの衰退ぶりなのかなと勘繰ってしまいます。こうでもしないと記録として残らないという危機感、と言うべきでしょうか。

本書は全体を通して、年代ごとにセグメントした上での関連するクリエイターや評論家へのインタビューを交えながらその年代における主だったディスクを解説しています。私がアイドルオタクになったのが2018年頃なので、それ以前の楽曲派アイドルシーンの状況については断片的知識しかなく、非常に興味深く感じました。知っているクリエイターや演者の方々の話も読めて私としてはお腹いっぱいな本です。

ひととおり本書を読んだ上で、「楽曲派アイドル」に対する自分自身の見識を深めることができました。アイドル現場に足を運んだことがある方もない方も、ぜひ本書を手に取って日本のミュージックシーンの片隅に棲む楽曲派アイドルに触れる機会になれば幸いです。

長々と書きましたが、本記事のタイトルは

楽曲派アイドル、ファン(オタク)、みんなで生き残ろう!

となっています。つまるところ、楽曲派アイドルシーン全体の生存戦略について考えてみたいと思います。

まず、「楽曲派アイドル」とは何かについて確認したいと思います。前回記事でも触れましたので、一部引用します。

…文学少女的な雰囲気を纏うあのグループも、名古屋あたりに多いゴリゴリにパンキッシュなあのグループも「楽曲派」という言葉で一括りにするのは強引ではないかとも感じます。なので「楽曲派」とは、音楽的あるいはコンセプト的なひとつのジャンルというよりもアイドルに対して持つ一般的なイメージ(王道派)に対峙するオルタナティブな概念と言えるのではないでしょうか。非主流派と言い換えてもいいのかもしれません。よって非常に恣意的で流動的なカテゴライズと言えます。

王道派、例えばFRUITS ZIPPERのようにフリフリの衣装、親しみやすい曲調の楽曲などのいわゆる「アイドル」としての一般的なイメージがあります。しかし、王道派と楽曲派の間に明確な線引きがあるかと言えば必ずしもそうではなく、両者が重複するゾーンの幅は非常に大きいものです。例えばキラキラした王道派で売っているユニットがゴリゴリのパンクな楽曲をリリースしたり、逆に楽曲派寄りのグループでもキラキラした雰囲気のアイドルソングを歌うケースも多々あります。恣意的なカテゴライズであると表現した理由はここにあります。

ではなぜ王道派に比べて楽曲派が衰退もしくは伸び悩むと言われるのか?要因はいくつか考えられますが、以下に挙げたポイントは「王道派と比べての傾向」なのであくまで参考程度にして頂けたら幸いです。

  • 楽曲および付随するパフォーマンスが一般的でない(マニアック)ので、ファンの絶対数が増えにくい

  • 容姿や疑似恋愛要素などアイドルとしての価値よりも楽曲やパフォーマンスに重点を置いているので、ファンのコミットメント(ライブへの参加回数や購買力)が小さい

  • コロナ禍の影響で、特に若年層が楽曲派アイドルにアクセスできる機会が減り、新規ファンを獲得しにくい

この他にも多岐にわたる要因が考えられます。少なくとも楽曲派アイドルシーンが衰退しつつあるという事実は残念ながら否定し得ないものです。ファンは増えにくく、年数を重ねるごとにファンも高齢化してゆく。しかしながら衰退しつつあるからと言ってまだ絶滅したわけではなく、この先の生き残りを模索する策はまだあると私は考えます。

では、どうすれば楽曲派アイドルシーン全体として生き残れるのか?そのためには戦略が必要です。次回記事から考えていきたいと思います。

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