②イヤフォン
「今日はこの曲にしよう」
一日の始まりは、好きな曲がいい。
好きなアーティストばかり詰まった、私だけのオリジナルアルバムから今の気分で選曲する。
それが片想いを女目線で綴ったこの曲だ。
・・・そう、まさに今の私の心情とリンクする曲。
デートの待ち合わせ場所に向かう足が少し早くなる。
街ゆく人たちのイヤフォンの中では、その人の世界ができていると思う。
たとえ同じ曲が流れていようと、それぞれの世界は違うものになる。
歌詞の意味を考える人や、自分の思い出を重ねる人、その歌詞の情景を浮かべる人、別のことを考えている人―――
アーティストも、実体験や人から聞いた話を歌詞にしているのだろうから、
曲にはその人の世界があるはずだ。
ただ、その世界を自分の中に広げるか、他の人にも見せるかの違い。
そう考えると世界を作り上げる音楽はすごいなと思う。
危ない。待ち合わせ場所を間違えるところだった。
もう少しで、彼に会える。
流れていた曲は、終わっていた。