見出し画像

⑦「飼い犬に手をかまれる」に相当する英語とスペイン語での表現はどんなもの?

人間と動物との関係が由来となっていることわざに注目してみましょう。人間が集まれば、裏切りや失望といったことは起こってしまうもの。言語が変わると、文化を反映してその関係性はどう変わるのでしょうか?

では、さっそく検証してみましょう。

「飼い犬に手を噛まれる」の意味

ふだんから目をかけてやっている者に裏切られ、ひどい目にあう。

こちらの表現は、わりとよくドラマなどで耳にしますよね。だいたいが、上司が部下に裏切られたときなどに使っています。あと、せっかく育てた弟子が、反抗してどっかに行ってしまったときとか。

このことわざは、明らかに上下関係のある場合でしっくりくる表現なので、同等である友人関係や恋人関係では使われません。家族間で使うのも妙な感じですよね。

英語で相当する意味の表現は?

Bite the hand that feeds you.
(自分を養ってくれている人の手を噛む。)

その意味するところは、自分を助けてくれる人や助けてくれた人に対して、ひどい態度をとること。

日本語の表現とほぼ同じ状況です。どっちから見てるかだけ違います。つまり、やる側か、やられる側かの差です!

ただ、あまりに同じ状況だと、英語表現を輸入して途中で解釈が逆になっただけではないのかと、疑わしくなってきます。

そもそも、日本での犬の扱いが、欧米と同じであったかどうか・・・?

犬との歴史

まず、日本での犬との関係性をおさらいしてみましょう。

日本での犬の歴史はそこそこ古いようです。縄文時代には犬の骨が見つかっているので、猟犬として使っていたといわれています。(が、食用にされていた疑惑もある!)

また、犬を飼う習慣というのは江戸時代ぐらいから一般化したということです。ただ、放し飼いがほとんどで、特定の飼い主がいるというよりも、地域で飼っているという状態で、犬は街を自由に歩き回っていたとのこと。

そういう犬は里犬と呼ばれていて、地域に見知らぬ人が入ってきたとき吠えまくる番犬的な役割と、家庭の残飯ごみを食べるという役割を地域で担っていました。(治安も守るエコパトロール隊?!)

欧米では猟犬として人々の役に立っていた犬ですが、日本では生ごみ処理、衛生担当動物として活躍していたようです。

なんだか、欧米とは扱いの雰囲気が違いますね。犬の容姿も違います。キリリとした顔立ち、スマートな四肢・・・。抜きんでたエリート技術者という印象です。

かたや、里犬はヒラの外回り営業担当といったところ?のんびり地域を回りながら、世間話に花を咲かせるようなのどかさ。

では、一対一での明確な主従関係がなかったかというと、西郷どんの銅像の傍らになんか犬がいたし、微妙です。

ただ、西郷隆盛はかなりの犬好きだったとかで、一度に20匹ぐらい連れて散歩していたとか。(多すぎ!)

なんにしても、江戸時代に犬が愛されていたのは、確かなようです。

中国語では、「飼い犬に手を噛まれた」とドンピシャのことわざがないようなのと、西洋輸入の証拠もないので、日本発祥のことわざと思ってよいようです。

でも、ちょっとまって!英語表現(Bite the hand that feeds you.)では、噛むといっているだけで、主語が犬とは一言も言っていません!

なんで犬だと思いました???犬だと決めつけたのは、あなたの思い込みです。人でもいいですよね?猫も豚も馬だって、歯のあるものは噛めます!ぶはははーー!


なんてね!大丈夫です。


英語表現でも、もともと想定している主語は犬のようです。

スペイン語で相当する意味の表現は?

Cría cuervos, y te sacarán los ojos.
(カラスを育てると、目をえぐられる。)

その意味するところは、良いことをしてもらったのに、悪いことで返す、恩知らずな行いのこと。

画像1

カラス・・・!?
目をえぐられる・・・!!!

例えが怖いのでビジュアルにしたくない。

そして、犬はどこにいった?

実は、犬の表現も存在はします。

No muerdas la mano que te da de comer
(自分を養ってくれる人の手を噛んではいけない。)

でも、「親切にしたのにひどい仕打ちを受ける意味のことわざはなに?」と聞くと、たいていのスペイン人はカラスの表現で答えてきます。まぁ、犬の表現だと、立場が逆ですからね。

こちらのカラス表現で注目すべきなのは、カラスの習性です。そもそも、カラスは、肉食で死骸を見つけたら目から食べる習性を持っています。そんな期待してはいけない相手に期待するのがそもそもおかしい。このことわざでは、誰かに親切にするときは慎重にしましょうということも伝えています。

また、そんな危険な相手を育てたら、自分もひどい目に合うのは当然のことだという見方もしています。つまり、自分の蒔いた種というニュアンスもあります。

このことわざは、親子関係でも使われます。親が、子どもにひどい仕打ちをしていれば、子は大きくなった時、親に仕返しをすると。それも当然の報いという考えがあります。

どちらにしても、英語表現では実際の裏切り行為が実行される前に、「してはいけない」という意味をこめて使われることが多いです。もしくは、「そんなつもりはなかったのに結果的にそうなった」という感じですかね。

また、スペイン語表現では、そういう状況にしてはいけないという意味で使うことが多いので、これからという時、または進行形での注意という印象。

一方で、日本の犬表現では、すでに裏切り行為が実行されてから使われることが多いですよね。ことわざが飼い主側の立場であるので「まさか!こんな事になるなんて!」という感じで。時々、腹黒い飼い主もいますが、表向きには飼い主は被害者です。

犬が飼い主を噛む時はどんな時?

通常、飼い主に従順な犬が噛みつくというのは、よっぽどの事態だと理解されます。それは、飼い主側にも、なんらかの責任があるはずです。英語のことわざ表現では、弱い立場(犬)に寄り添った表現です。

一方、日本の表現は強い立場(飼い主)なので、上の意見が絶対という封建主義的な雰囲気がそれとなく漂っています。(権力者の非はおとがめなし?!)

カラスを育てることはどのくらい危険なのか?

スペイン語のことわざ表現では、カラスをとても危険視していますが、本当にそうでしょうか?まず、カラスは生きている人の目をつくことは、基本的にありません。狙うのは死骸です。(ホッ!)

そして、カラスはとても賢い鳥です。人間の7歳程度の知能があるとも言われています。記憶力もよいようです。体に対する脳の割合を示す脳化指数は0.16で、犬の0.14より高い数値となっています。鶏が0.03なので、その差は歴然!

カラスはお友達には、贈り物をする習性もあるとのこと。知ると不思議な存在ですね。

そういえば、バレンシアの市内ではあまりカラスはみかけません。圧倒的に迷惑な存在なのは、鳩です。なので、日本に行ったことのあるスペイン人は、街中で群れるカラスの姿に若干びびるようです。

なんにしても、人間関係では、裏切りや失望はあることですが、行為にはそれなりの理由があるもの。いろいろな立場から物事を見るようにすることが大切ですよね。

やっぱり、ことわざは面白い!知らなかった動物の一面を知るのも楽しい!

以上、トリリンガル的思考での表現考察でした。

*合わせて読むとよい関連記事


【スキを押すと次回の記事の予告が見れるときがあります!押してみてね♪】 かつての毎日投稿は中断中でいまはぼちぼち更新:日本時間の19時ごろ(スペイン時間の12時ごろ) 頂いたサポートはnoteの有料記事の購入に使わせていただきます。