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笹川科学研究助成の採択と完了までの1年

こんにちは!!現在、地方国立大学の博士後期課程2年で、微生物の研究を行っているさっかろです。

今年度、採択された『笹川科学研究助成』の完了報告書を少し前に書き終えたので採択から完了までのtipsをまとめようと思います。これから申請しようとしている人や採択された人のお役に立てたら幸いです。
⚠️かなり主観も入っているので、参考までに…


笹川科学研究助成って?

ご存知の方も多いかもしれませんが、『日本科学協会』が行っている修士・博士学生〜任期付研究者を対象とした研究助成です。特に、学生が応募できる者の中だと規模も助成金額もトップクラスかつ、募集分野も科学全般と広いため、研究者の間では知名度もかなりあるのかなと思います。
また、自分が採択された、2024年度の助成から助成上限金額が100万円から150万円に増額されました。その分応募者が増えたことで、採択率も22%と大きく下がったようです…

あとは、採択課題にベーシック寄りのサイエンスが多く、若手研究者らしい萌芽的かつ挑戦的な課題を好む印象があります(自分の申請書でもこういった部分をアピールしていきました)。

なぜ笹川科学研究助成に応募したのか?

自分は博士後期課程から今のラボに研究室立ち上げのタイミングで移って来たのですが、当時立ち上げ1年目ということもあり、研究室の設備や資金があまり潤沢ではなく、自分の研究を円滑に遂行する為に研究費を自分で獲得する必要がありました。
また、キャリア形成という面でも学生のうちから競争的資金を獲得する経験が大事だと思い、いろいろな助成金を調べていたところ、面識のある他のラボの先輩が前年度に採択されていたため、応募を決めました。
(知り合いに採択者がいると、コツを教えてもらえるかもしれないため、かなり有利に進めると思います。自分も後述するコツのいくつかをこの先輩に教えて貰いました!!)

申請時の研究業績

自分の申請時の研究業績は以下の感じです。

査読付き筆頭論文 3報
口頭発表(国内) 2件
JST 次世代研究者挑戦的研究プログラム 採択

筆頭論文の内の1報が今回の助成内容の着想となる研究で、これをベースに申請書を書きました。
学生が申請書を出す時に共通して言えることかも知れませんが、『研究室のテーマをただやっている』という印象をいかに審査員に持たせないかが鍵な気がします。『どう自分の色を付け加えているのか』という独自性をアピールする為に、自分の場合は前のラボで出した論文をベースにすることでオリジナリティをアピールしました。

申請書作成の注意点とコツ

まず、笹川科学研究助成は申請書のボリュームがかなりあるという特徴があります(1500文字×5項目+1000文字の応募動機)。こういったことも踏まえて、いくつか注意点とコツを挙げていきます。

・大変だけど、当たり前のことをきちんとやる

基本中の基本ですが、各項目を目一杯埋めるだったり、分かりやすい表現を使う、誤字脱字をなくす、専門用語の前には補足説明を枕詞として加えるといった申請書作成で当たり前のことは徹底しました。とはいえ、ここまでボリュームがあると項目を埋めるだけでもかなり大変で、はじめは無理矢理文字を埋めた感じで、冗長的で分かりにくい文章になっていました。指導教員の先生だけでなく、分野が少し違う人にも見てもらうことで、かなり読みやすい申請書にブラッシュアップしていくことができました。
また、申請フォーム上でet al. などのローマ字表記がWord数ではなく、字数でカウントされたので、Wordで書いた下書きに表示される文字数と齟齬があり、申請直前に文字数を調整する必要がありました(引用を多くし過ぎるとそれだけで字数が足らなくなるかも?)。

・各項目必ず1個は図を入れる!!

これは前述の先輩から教わったことで、他の採択者にも同じようなことを言ってる人がいたのでマストな気がします。1項目あたり1500文字あるので、図がないと読む側からすると本当に苦痛になるのではないかと思います…

・支出計画は詳細に!!
笹川のもう一つの特徴として、支出についてかなり細かいというのがあります。
自分の申請書では下記の様に示しましたが、区分でまとめていくらだけでなく、各試薬を何g買うから、総額いくらになるのかまで詳細に記載しました。

支出計画の一例
・微生物用培地類(グルコ―ス 500 g;2500 円×2 本=5000 円、ペプトン 500 g;1 万円、酵母エキス500 g;2 万円、寒天 500 g;5000 円、抗生物質 G418 硫酸塩 1 g;1 万円×2=2 万円)=6万円
・ディスポ器具類(マイクロチュ―ブ 500 本;2000 円×2 袋=4000 円、ピペットチップ 1000 本;1500円×4(10 μL×1, 200 μL×2, 1000 μL×1)=6000 円、滅菌済みシャ―レ 500 枚;1 万円、ネジ口瓶 500 ml;200 円×200 本=4 万、PCR チュ―ブ2万円)8 万円

採択後、まず初めに、決定した助成金額に合わせて支出計画を修正するのですが、そこから10万円以上の変更がある場合は変更届が必要になることに加え、中間・最終報告書でもこのレベルで支出簿の提出が求められるので、申請の段階からしっかりやらないと採択された後にいろいろ苦労すると思います。

・推薦書をちゃんと書いてもらう…
笹川科学研究助成では指導教員の推薦書もしっかりと評価するみたいです。
自分のボスは具体的でアピーリングかつ人間味のある推薦書を書いてくれたのですが、他のラボの人でAIっぽさがある機械的な推薦書(生成系AIを使った?)を書いてもらった人はきちんと落とされていました。
また、『推薦書に良いところだけ書くのではなく、改善が求められる部分(発展可能性)も明確に記述する』ことを、推薦者に依頼するようにと
採択後にフィードバックがありました(自分はできてなかったです…)。

・過去の書評を熟読する(超重要!!)

笹川科学研究助成のホームページに昨年度の書評が公開されています。かなり詳細に良い点と悪かった点、全体の傾向をフィードバックしてくれるので、そこを気をつけるだけで採択される可能性が一気に上がる気がします。
自分の場合は、前年度に『お金ありきの申請が多くて残念だった』というようなことが書かれていたので、あえて満額の150万円でなく、数万円引いた額を申請することで、"お金ありきじゃないですよアピール"をしました。これが採択の決め手になったのかは定かではありませんが、こういったことの積み重ねで、印象は良くなるのかな?とは思います。
(結果的に、100万円以上頂くことができ、他の助成対象者と比べても多い方だったので、支出計画の合理性もかなり厳しく見られているんだと思います。)

今年度の書評を見返してみると、自分の申請書の良かった点や悪かった点が浮き彫りになってきます。他にも申請書作成に役立つフィードバックがたくさんあり、非常に参考になります。

報告書作成が大変…

採択されたら実験をひたすら頑張ればいいのですが、気を付けないといけないことが一つ。報告書です。
助成期間中(9月)と完了後(2月)に報告書の提出があります。中間はそれほどですが、最終報告書は研究成果だけで6〜10ページ書かないといけないため、かなり大変でした。
早め早めにやっておかないとですね…
支出簿もかなり細かいので、こまめに付けて、整理できるようにしておく必要があると思います。
(自分の場合、秘書さんが支出記録をまとめてくれていたのでコピペして、形式を整えるだけでよかったのでだいぶ楽でした。秘書さんがいないラボはかなり大変な作業になると思います。)

1年間を終えて…

助成期間を1年終えて思ったことは、報告書作成などを通じて、めちゃくちゃプロジェクトマネジメント力が身に付くということです。
また、ここはラボによるかもしれないのですが、うちでは研究費の支出や管理をボスが自分に一任してくれたおかげで、『研究を遂行する為に、限られた予算を何に使えばいいのか?』ということを徹底的に考えるようになり、マネジメント能力だけでなく、研究に対する責任感が飛躍的に向上したと思います。
もちろん、研究自体も飛躍的に進みました。

最後に、大学院生から研究助成に応募するメリットとして、単にお金や業績になるだけではなく、『いろいろな面で大きく成長できる経験になること』かな、と思います。
特に、『笹川科学研究助成』は研究内容だけでなく、助成対象者の成長も重視しているため、個人的におすすめのグラントです!!
(助成終了後もいろいろと特典があるみたいですので楽しみです!!)

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