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花よりダンゴ、夢よりムチュウ

4月特有のにおいがする。

新しいことがはじまるにおいだ。
某チョコレートショップではたらいていたときは、毎年新入社員が入ってきて、そのキラキラした表情をながめていた。

そして、そのキラキラがだんだん消え、疲れきっていく姿もまた、毎年の光景だった。


入社面接で「将来は独立して、お店(ケーキ屋さん)を出したいです」と9割の学生が言う。

わたしは「どうしてまだなにもしてないのにそんなこと言っちゃうの?」と心から疑問に思っていたので、「それはまあどうでもいいや」とかわし、「学校のクラスや部活で、あなたはどんな役回りでしたか?」といつもたずねた。


まだ1日も働いていないひとの、夢を叶えるために会社があるわけではないし、勉強のために仕事をおぼえるわけではない。

あたりまえのことだけれど、お菓子屋さんという仕事柄なのか、そのことを本当にわかるのに時間がかかるひとが多かった。

そして、その夢が大きければ大きいほど、本気なら本気なほど、仕事ができないのだ。

なぜなら、たぶん、自分のことしか考えていないからだ。

自分の夢を叶えるために何をしたらいいか、なにが得でなにが損か、急いで知りたがる。急いで先に進みたがる。


わたしが「学校のクラスや部活で、あなたはどんな役回りでしたか?」とたずねるのは、頼まれなくても自然にできる役回りを、自分で把握できている人は、そのまま仕事にも生かすことができるからだ。

しきり役とか、聞き役とか、笑わせ役とか、ひとりが好きとか。

むりやりできない役割を与えるよりもスムーズにできるから、スタートに自信を持たせてあげられる。


かく言うわたしも、新卒で入社したお菓子屋さんでは散々だった。

「使える」と思われたくて毎日空回りして、結果、ただの怒られ役になった。

そして、その後の会社(その後13年働く、某チョコレートショップ)では、常に目の前に問題が山積みで、誰かの評価など気にしているヒマがなかったのもあり、気がついたら夢中ではたらいていた。

何にそんなに夢中になったかといえば、わたしの場合「把握と共有」だった。


無法地帯だった職場の、ありとあらゆるもの(商品や材料や包材)の在庫表を作りまくり、社内のどこになにがどれくらいあるのかを把握して表にして共有した。

そしてすべての商品のレシピを入力し、材料の仕入れ値を業者別に一覧にしたものから連携させて、レシピに数字を入力すると、使う包材も合わせてその商品の原価計算ができる表をつくり、共有した。

例によって誰にも頼まれていないのだけど、時間の隙を狙っては、夢中になってそれらをつくった。(通常業務とは別にちまちまと)


これは、わたしが学校のクラスでも「おせっかいで仕切りたがり(でも舞台に立たなくていい)」という役割で、そのまま出ていると思う。


そんなおせっかいなわたしから言えることは、

遠くの夢を語るより、今すぐ夢中になれることを語れたほうが、仕事ができるようになると思う。それがどんな種類の仕事でも。

夢は未来にあるけれど、夢中になれることをみつけるには、過去をさがすといい。こどものころ、食べるのも忘れて夢中になったのはなにか。

それをもっているひとはとてもとても強いから。

だいぶおとなになった今でも、おおきな夢をもっている人より、夢中になれることがある人のほうが、羨ましいしカッコイイと思う。


わたしもまだ、夢より夢中がほしい。(夢中になられる、というのもいいかも!)


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桜林 直子(サクちゃん)
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