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73.さぶちゃんとフィラリアの戦い

元野犬のさぶちゃん。
山口県の山の中で、兄弟で暮らしていましたが、保健所が仕掛けた檻の中に、食べ物を取りに入って、さぶちゃんだけが捕まりました。
山中での生活は過酷であったことは想像できますが、さぶちゃんがウチに来てからの色々な検査でも、それが証明されていきました。

まず、お腹には、ありとあらゆる虫がいました。中には、ヘビやカエルを食べることで寄生される虫もいました。
食べる物がなくて、そんなものまで食べていたのか、と想像するだけで涙が出てきます。
その、たくさんのお腹の虫は、お薬を飲むと間もなくさぶちゃんの体から出ていってくれました。

次に、こちらも野犬にとっては防ぐ事が難しい、ノミ・ダニです。ウチに来た頃、さぶちゃんは常にどこかを掻いていました。
ウチに来た日に市販のノミダニ駆除薬を首に添付しました。ですが、市販のものではやっつけきれない、しぶといヤツだったんです。3回目に病院へ行った時に先生に相談して、やっとノミがまだいることが分かりました。すぐにその場で先生がフロントラインをつけてくれ、間もなくノミダニの痒さからも解放されました。
フロントラインってすごいのね(^_^)

最後に一番の強敵、フィラリアです。
6月6日に初めて病院に行き、血液検査をした結果、さぶちゃんはフィラリアにかかっていることが分かりました。血液中にフィラリアの子虫がたくさんいる状態でした。血液中に子虫がたくさんいるということは、心臓の中に親虫が2匹以上(1カップル以上)いる、ということです。
お腹の虫なら、薬でやっつけて、便と一緒に外に出せば終わりです。
でもフィラリアの厄介なところは、親虫が心臓や肺動脈に寄生しているというところです。
強い薬でいっぺんにやっつけると、親虫が死骸となって残ります。その死骸が血液中を漂って血管に詰まると心不全、肺動脈塞栓などを引き起こし、最悪の場合、死に至ることもあるのです。
かと言って退治に時間がかかると、その間ずっと心臓などの臓器はフィラリアにダメージを受け続け、そのダメージにより命の危険が迫る、という、、、
なんと恐ろしい憎らしい、そんなフィラリアに、さぶちゃんは感染していたのです……

フィラリアの一番ひどいパターンでは、心臓に大量に成虫がいて、すでに命の危険がある症状が出ている場合。すぐに手術で心臓の虫を取り出します。もちろん命懸けの手術になります。

次に中程度のパターンの場合、心臓に親虫が数匹(2匹〜数匹)いて、卵をどんどん産んでいる状態です。(さぶちゃんはこの状態でした)

軽症の場合は、まだ心臓で親虫が育っておらず、血液中にだけ子虫がいる状態。この場合は子虫を一斉にやっつける薬を飲んで様子を見る、のを何ヶ月か繰り返す事で、全滅させることができます。ただ、この子虫をやっつける薬もリスクがあります。血液中の子虫を一気に攻撃すると、犬本人がショック状態に陥り、命を落とす事があるのです。また、子虫の死骸が一度に大量に出るため、血管が詰まり命に関わる事もあります。
この、子虫を駆除する薬は、必ず病院が開いている時間に何かあればすぐ駆けつけられる用意をしてから、投与して下さい、と言われます。
このように、軽症であっても手放しで喜べないのがフィラリアです。

フィラリアの成虫の寿命は2年くらいだそうです。でも、2年も心臓に親虫を抱えていれば、相当なダメージを受け続ける事となり、間違いなく犬本人の命が尽きてしまいます。また、寒くなってくると後大静脈症候群(V.C.S)が起きやすくなり、こちらも急変し、命に関わることとなります。

さぶちゃんは血液検査で、子虫がいることが分かりましたので、他者へうつさないため(フィラリアは蚊を媒体として感染します)すぐに子虫をやっつける薬を飲むことになりました。
投与後はショック状態にならないよう、よく気を付けて見ていて、1週間後に再び病院へ行きました。
さぶちゃんと、この子虫の薬の相性は、それほど悪くなく(良かったぁ…)大丈夫そうなので、1ヶ月に1回継続して飲む事になりました。(薬の効果が1ヶ月程度なので)
そして次は、心臓にいる親虫です。エコー検査の結果、数匹を確認した、との事でした。
幸い、さぶちゃんは急を要する病気や症状は出ておらず、緊急手術をするほどではありませんでした。
そこで、親虫を弱らせる薬を毎日、朝晩飲んで、親虫の寿命を短くする、という療法に取り組む事になりました。
さぶちゃんは心臓にフィラリアを抱えているため、激しい運動には、ドクターストップがかけられました。。。
こうして、さぶちゃんとフィラリアとの、長い戦いが始まりました。

親虫を弱らせる薬を毎日朝晩飲み続け、1ヶ月後に病院へ行きます。

7月4日 
病院へ。
💩検査。お腹の虫は、いなくなりました!
血液検査。フィラリア陽性。
再び子虫退治の薬を飲んでショック状態に気を付ける。後は毎日朝晩の親虫を弱らせる薬。

8月1日 
病院へ。血液検査の結果、フィラリア陽性。
子虫退治の薬。朝晩の親虫弱体化の薬。

9月4日 
病院へ。フィラリア陽性。
子虫退治の薬。親虫弱体化の薬。

10月3日 
フィラリア陽性。子虫の薬。親虫の薬。
「秋が終わる頃には後大静脈症候群の心配も出てくるため、次の治療を考えなければいけません。次の治療というのは、心臓に直接注射針で、親虫をやっつける薬を入れる、というものです。これまでの飲み薬によるソフトな治療とは違って、体への負担が大きく、命を落とすリスクも高くなります。次回、まだ親虫が退治できていなければ、次の治療への決断をしなければいけませんので、ご家族でよく相談しておいて下さい」と先生に言われ、頭が真っ白になりながら、帰ってきました。
そのままでも、治療しても命の危険があるなんて!!決められないよ〜〜涙
さぶちゃん、どーしたらいい??涙涙

11月5日 
血液検査後、先生に呼ばれる。
「血液中の子虫がほとんどいなくなっています!
つまり、親虫がだいぶ弱っていて、卵を産む元気がなくなってきているという事です!
でも、まだ親虫は生きているんですよね。。。
そろそろ寒くなってくるし、次の治療の決断を、、と思っていたのですが、親虫がかなり弱っているようなので、どうしましょう?もう1ヶ月だけ、様子を見てみましょうか?」と先生に言われ、ひと筋の光が!!
神さま、仏さま、じろさん!!
さぶちゃんを守って〜〜!
1ヶ月間、急変とかしないで、無事に過ごせますように……

12月4日 
血液検査の15分後、先生に呼ばれる。
「お母さん、この試薬を見て下さい。陽性だったらここに濃いピンクの線が出ます。ここです、ここです。言われないと分からないくらいに薄いでしょう?
親虫、もう、いないです!
死骸が少し漂っていて、それが薄い線になっているという事です。
親虫、退治できました!
手術も注射もしなくていいんです!
本当に良かったです!!」

やった〜〜〜〜!!!
良かった〜〜〜!!!!!

娘と顔を見合わせて、二人で天を仰ぎました。
あまりにもほっとして、涙が浮かんできました。
先生も「本当に良かったですね〜。ぼくもホッとしました〜。さぶちゃん、よくがんばりましたね。いやぁ、良かった〜」と何度も言ってくれました。
そこにいた全員、満面の笑みでした。
拍手して、小躍りしたいくらい。


こうして、半年に及ぶフィラリアとの戦いに終止符を打った、さぶちゃんでした。

さぶちゃん、よくがんばったよ!
ほんまにほんまに良かったなぁ〜!!!

「いやぁ、オレはジャーキー食べてただけ
やねんけどな」
(お薬をフードに混ぜてもぺッと出すので、
キューブジャーキーを割って薬を挟んでくるみ、
ひと粒ずつ食べさせていました。
朝晩ふた粒ずつ、一日4粒! 笑)

「お薬終わっても、
フードに、ジャーキーのトッピング、
お願いしますよ〜〜…」
って言うんですよ。
このおぼっちゃまは。 笑笑

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