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不釣り合いな紙袋

駅のホームで電車を待つ。
向かいのホームで同じくスマホ片手に立つ、同世代っぽいお兄さん。

黒のロングコートにヘッドホン、フチが大きいメガネにAirPods。おそらく手ぶら族の一身だろうに、片手に下げる有名なチョコレート屋さんのちいちゃい紙袋。

このあと会う人に渡すのか、誰かからもらったのか、仕事か、恋人か、好きな人か、友達か、はたまた家族か。

相当高貴な生活をしていなければ、日常には潜まないそのちょっとお高いところの紙袋に、ロマンがあるなとふと思う。

荷物入れ代わりに高級ショッパーを利用する女子、を除いて大抵はスペシャルオケーションにて登場する彼ら。スタバのそれより頑丈で、携帯ショップの彼らと質感は近いけどデザインが凝ってるそれ。

丸坊主の制服少年が持ってるチグハグ感もいいし、お花と一緒にオフィスカジュアルなお姉さんが持ってるのもいいし、明らかに結婚式帰りの御一行が持ってるでけえツルピカのあれもいい。

電車やバスで、決して目があわないように気を付けながら周囲を見渡して、そんな人を見てその紙袋に隠されたドラマを想像する。

正解なんてわかるわけないのに、なんかあったかい気持ちになったりするから、私の人生は気楽でいい。知らない方が良いこと、ってこんなところにも転がっている。

そして、気持ちを伝えたいときにさっとその紙袋を人に渡せる豊かさを持っておきたいな。

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