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日本を離れたら本当に価値観はぶっ壊されるのか?
「オーストラリアに行ってみてどうだった?価値観は変わったりした?」
帰国してちょうど四か月、言い回しは違えど必ずと言っていいほど聞かれたこれについて、改めて考えてみる。
正直帰国したての回答は「…いや?特には」だ。これは天下のエリカ様風の声色ではなくて、ひょっこりはんがひょっこりしたときみたいなそれだ。(ひょっこりはんって喋るのかしら、あんなに「ナイスひょっこり!
!」て友達に行ってたのに、ひょっこりはん本体のことはあんまり知らない。大学お笑いではレジェンドだったらしい、ということだけは何故か知っている)日本でこれまでの生活を続けていたら、まったく出会うことのなかった人、触れることのなかった文化を1年間浴びてきたのだからそりゃ刺激は山ほどあったけれど、「価値観の変化」があったとは思えなかった。
そもそも価値観とは何なのか。
マセガキ全盛期の中学生時代、大人が言うみたいに好きなタイプは「価値観が合う人」とか言ってみてたけど、今国語のテストを受けて意味を説明しろという問いがあったらものすごく稚拙な回答になりそうだ。
そうだ、こういうときの広辞苑だ。
「何に価値を認めるかという考え方。善悪・好悪などの価値を判断するとき、その根幹をなす物事の見方。」
ほう、つまり人が物事を良い・悪いと考える基準とその根っこにある考えってわけね。
…変わったかもな。
特に、帰国して友人や家族とのコミュニケーションで感じることとキャリア観に関してそれぞれ一個ずつあるわ。
まず前者は、体重の増減についてだ。日本を離れる前は痩せていることこそが善だった。この矢印は自分に向いていて他人ではない。たった500グラム増えること、ふと鏡に映る自分のムチっと感にいつも敏感になっていた。痩せていないと世間に「普通に」溶け込めないような、そんな気持ちだった。
けど日本を離れて、そもそも容姿に関する話題がほぼほぼ上がらない環境にいて、昼夜問わず好きなものを食べるシェアメイトと生活して、好きなファッションを好きに着る人々に囲まれて過ごして、そもそも体重を気にするということがなくなった。
するとなんということでしょう。
苦手だった写真も、そこに映る自分が前より良く見えるではないか。「制限」の対象から「幸福を実現する」手段に姿を変えた食事。あとこれはたぶん気のせいだけど、たった一つのロールケーキに対して刑法に触れたかのような罪悪感を覚えていたあの頃より圧倒的に脂質糖質を積極的に摂取しているのに対して太らない、末端冷え性で運動もしないので代謝能力の低さには自信があるから真偽は問わないけど、心的ストレスの減少っぷりったらない。
あともう一個は人生に前向きになったことだ。
自分に過度に自信がないうえに、前職の職業柄、一度大学を出てしまえば自分が唯一周りと同じようにできるっぽい営業職として働き続けるしかないと悲観的になっていたあの頃から一転。10年弁護士やったけど次は農業やりたいラファエル君とか、10年ワイン作ってきたけど次はスペインの大学に行って植物育てたいチリ人の彼とか、子供4人育てながら大学でバリバリマーケやるフランス人のあの子とか、「人生を変えるのに年齢なんて関係ない」「やりたいことをやりたいときにやって、何より自分を信じるべき」のサンプルをたっくさん見てきて触れ合ってきて、人生に希望を持たないのはあまりにも勿体ないんだと知った。誰かの模倣じゃなくて、周りを見て判断するんじゃなくて、自分の人生は自分で舵を切ることでいかようにもなるらしい。芸術分野以外は誰かが出来ることは私も出来る、と考えるタイプなので、私もやってやろう!と思えたのだ。
なんだ、結構影響されているじゃないか。それにようやく気が付くなんて、愚かでかわいいな、2025の私も。
いなくなった自分も、形を変えた自分も、芯のようにずんと構える自分も、全部正しくも間違ってもなくてただ私であると思う。「変わっていくことをなぜ、僕らは恐れるのかな。変わらないことを笑うくせに」初めて聞いたときからなぜか忘れられないこの歌詞を、トラリア渡航以降特に思い出したなと思う。(これは蛇足)
人の目を気にするには人生は短すぎるし、人のうわさに時間をたっぷり割くほど人生は暇じゃないし、誰かにやってもらうでもなく自分で人生を豊かにしたいし、私のためのように聞こえる発言もそれを言う自分に陶酔しているだけの薄い言葉かもしれないし、素晴らしいアドバイスに思えるそれも単なる思い付きに過ぎないかもしれないし、人生の責任を取ってくれるのは自分だけだ。明日死ぬかもと思って目の前のことを充実させたい。
試験まであとちょうど1週間、受験料無駄にしたくないし、頑張るぞ~~