磯部温泉 恵みの湯(群馬県安中市)
磯部温泉は、むかしからその名だけはよく知っていました。
古い温泉町だけあって、浴衣で行きかう人がいて、石段をおりて河原に出て、古いまちなみを歩いて…。
そんなイメージを抱いていました。
平地にある温泉地
でもちょっと違う感じなんです。
というのも、日ごろ買い物やら役所やらにいくため、安中市の中心部に頻繁に行くのですが、そのたびに磯部温泉の近くを通るんです。
磯部付近に高い山などなく、あくまでも他と標高の変わらない高さにあるんです。
国土地理院の標高がわかる地図をみても、安中の中心あたりが標高190メートルくらい。くらべて磯部温泉付近はといえば、これが標高210メートルくらい。東から碓氷峠に向けて徐々に標高をあげていくから、安中市中心部と磯部温泉付近の高低差は、さほど目立ったものではありません。
磯部からさらに西へ向かった峠の手前、わが家のあたりは、丘陵の中腹にあるとはいえ、標高330メートルほど。それとくらべると、平地にある温泉、という印象が拭えないのです(※下の写真は安中市のホームページから拝借してきました)。
磯部温泉は、じっくり歩いたことはないし、さほど知っているわけでもありません。だから間違った指摘なのかもしれませんが、山間の温泉という感じとは、ちょっと違っているのでしょう。
標高230メートルほどの丘陵部の間を碓氷川が流れていて、その川床の高さが190メートルほど。川のすぐ南にある磯部の温泉街は、川から見れば40メートルほどの高さにあるわけで、だから石段を河原に向かって降りていき…なんてイメージも、あながちデタラメではないはず、です。
熱海とか、箱根みたいな山にある温泉地だと思っていたのが勝手な思い込みだったわけですね。一度じっくり磯部温泉を歩いてみないといけません。
近代的な日帰り温泉施設
さて、その磯部温泉には、日帰り入浴が可能な温泉施設があります。それが「恵みの湯」。
平日夕方に出向いたのですが、仕事帰りにひとっ風呂、っていう人がすくなくないのでしょうね。駐車場は車がいっぱいでした。
自動ドアを抜けると沓脱のコインロッカーがあり、フロントで手続きを済ませます。大人3時間520円。
ホールには特産品を置いた土産物コーナーあり、市民の絵を飾ったギャラリーあり、ラウンジにはいす席が、リラックスルームにはマッサージ器も設置されています。
いわゆる近代的な、公的入浴施設なのでしょう。
大浴場には露天もあって
さて大浴場に向かいます。途中に、「砂塩風呂、要予約」なんてそそられる看板もあって、いずれは、と思わせます。
脱衣所にはロッカーがあり、体重計があり、10分いくらのドライヤーつき洗面台が並ぶという、見慣れた光景です。
そして、大浴場。遠赤外線サウナは調整中のため使用不可。洗い場の備え付きシャンプー類で体を流し、まずは大きな浴槽へ。25mプールをタテに半分にしたかのような広さで、温度も申し分なし。
露天風呂も広く、室外の割には熱いくらい。湯量も問題なく、なにせ快適です。でも一緒になったおじさんたちは、こう言ってます。
「今日はちょっとぬるいな」
「ここ数日、気温が下がったからなぁ」
つまり、いつもはもっと熱いということですね。
十分に湯を堪能したあと、湯冷ましも兼ねて、脱衣場にある説明書きを読んでいると、ひとりの品のいいおじさんに話しかけられました。
「ここははじめてかい」
「ええ、そうなんです」
せっかくなので、いろいろ聞いちゃいました。
「ここの恵みの湯って、昔からあるんですか?」
するとおじさん、
「そうだね。俺が子供のころからあったよ。ただ、昔はもっとぼろい建物で、ただの共同温泉だった。10年前くらいかな。この建物になって、管理も市から民間に委託されたんだ」
なるほど。いぜんはもっと枯れた感じの温泉だったんだな…。
近代的な施設が悪いわけじゃないけど、なんだかそう聞いて、妙に安心してしまいました。
磯部温泉をもっと知るべく歩いてみたいという新たな課題を残しつつ、恵みの湯を後にしました。
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