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さらっと書けそうなのに奥が深い! 「はじめに」の役割とは?
多くの書籍の冒頭に「はじめに」があります。
ここは書籍の中でもかなり重要なパートで、次の3つの要素を過不足なく含んでいる必要があります。
①自己紹介
「著者である私はこういう人です。こういうふうに生きてきて、今はこんなことをしています」
②本の概要紹介
「この本はこういう人に向けて、こういう内容をお伝えしていきます」
③本を書いた動機
「なぜこの本を書いたのか。実は私のこういう経験、思いがもとになっています」
「はじめに」は、この3つを簡潔に伝えつつ、読者の「それ知りたい!」「続きを読みたい!」といった欲望、本編への期待感をぐぐぐーーーっと上げるという、めちゃくちゃ重要な役割があります。
ジェットコースターは、最初上へ、上へと、ぐぐーーーっと上がっていきますよね。
位置エネルギーを高めれば高めるほど、勢いよくスピーディーに滑りおりることができるからです。
それと同じように、本の入口である「はじめに」には、読者の興味関心を引きつけて期待感を高めながら、本編に勢いよく突入させる役割があります。
本のコンセプトを確定させる
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世の中、シンプルで簡単そうに見えることほど、実は難しかったりしますよね。
1,000字でまとめるよりも、300字で言いたいことをまとめるほうが難しかったり。
「はじめに」もまさにそうで、短くてシンプル、さらっと書けそうに見えますが、実はそんなことはありません。
なぜかというと、
「はじめに」を書く=本のコンセプトを確定させる
であり、表面をさらっとなでるどころか、一度深い海にぐっと潜る必要があるからです。
深い海の底で、なぜこの本を書くのか、どういう人に何を伝えたいのかといった、いわば本の「原液」を拾ってきたうえで、どんな塩梅で水と混ぜながら(エピソードをまじえながら)、どんな軸(コンセプト)をもとに伝えていくか、本全体のイメージをつかんでからでないと、満足のいく「はじめに」は書けないと思います。
そのため、いざ「はじめにを書くぞー!」と勇んでパソコンに向かったはいいものの、なかなか考えがまとまらない! 全然書けないじゃん! 一応書いたものの内容が薄い!という状況に陥ることも多々あるはず。
つまり、「はじめに」を書くことは、本のコンセプトが自分の中で確定しているかどうか、本の仕上がりがリアルにイメージできているかどうかを判定するリトマス試験紙になるということです。
「はじめに」を書くタイミングって?
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ちなみに「はじめに」って、どのタイミングで書かれるものなのでしょうか?
一番多いと思われるのが、企画が走り出すタイミングで「何はともあれ、まず『はじめに』を書いてみましょうか!」と編集者に促されて書くパターン。
編集者は、著者さん自身がどういう本にしようとしているのか、何を書こうとしているのかを知るために、この依頼をすることがあります。
もし、「はじめに」に書いてある方向性が編集者(出版社)の意図とズレていた場合は、早い段階で軌道修正することもできますしね。
私自身、編集者として著者さんに「はじめに」を最初に書いていただくこともありますが、本編を含めてある程度ざーっと書いてもらってから、「はじめに」にぴったりな部分を抜き出し、以下のことに留意しながら編集することもあります。
☑️読者が「この本を書いた人は、こういう人なのね」と著者さんをイメージできるような基本情報を最低限盛り込む
☑️本編の内容を明かしすぎず、でも本編への期待感が高まるように
☑️長すぎず、短すぎず、ほどよい分量で
☑️テンポよく読めるように
書くと、気づくこと
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そんな本の最重要パートでもある「はじめに」。
いつか本を出したいと思っている方は、ぜひ「はじめに」を書いてみることをおすすめします。
実際に書いてみると、
「あれ、私はこの本で読者に何を伝えたかったんだっけ?」
「具体的に何を書くか全然考えられていなかったな」
「違うまとめ方をしたほうがおもしろいかも!」
「この言葉をキーワードにするとキャッチーかもしれない」
など、気づくことがあるはずです。
出版社に企画を提出する際も「はじめに」の原稿が添付されていたほうが効果的なので、ぜひチャレンジしてみてください。
いろいろな本の「はじめに」をまとめて読んでみるのも、おもしろいと思いますよ!
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