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高知県本社の上場企業を徹底分析(1)ミロク、技研製作所、兼松エンジニアリングについて

はじめに

高知県に本社を置く上場企業は数が限られていますが、それぞれ独自の強みを持ち、業界内で存在感を示しています。本記事では、高知県発の上場企業について企業概要(事業内容・設立年・業界)、財務情報(売上高・利益など最新データ)、成長性(業績推移・成長率)、業界ポジション(競合比較・シェア動向)、投資の観点(株価動向・配当・IR情報)を投資初心者にも分かりやすく解説します。

株式会社ミロク (証券コード: 7983)

企業概要: ミロクは1946年創業(設立1946年7月)で、高知県南国市に本社を置く老舗メーカーです​。事業分野は多彩で、猟銃(ハンティング用ショットガン・ライフル)の製造を主軸に、工作機械や近年ではIT/IoT/AI関連事業にも取り組んでいます​。狩猟用火器では国内有数のメーカーとして知られ、海外輸出も行っています。また、関連企業として会計ソフトで有名なミロク情報サービス(MJS)があります(ルーツを同じくする企業群です)。

財務情報: 最新の2024年10月期連結決算では、売上高約109億円、営業利益は▲5.19億円(営業赤字)、親会社株主に帰属する当期純利益は▲22.94億円と大幅な赤字となりました​。売上は前年比▲8.2%減となり、収益が悪化した結果、最終損益が赤字に転落しています​。前期(2023年10月期)は売上約119億円・純利益4.8億円の黒字でしたが​、今期は採算が大きく悪化しました。赤字要因としては、主力の猟銃市場の低迷や工作機械事業の受注減少、一部で減損損失の計上などが考えられます。自己資本比率は約59%で財務基盤は比較的安定しています​。

成長性: ミロクの業績推移を見ると、近年は横ばいから減少傾向でした。売上高は2010年代後半にかけて100億円前後で推移し、2021年10月期には136億円まで伸びましたが​、その後は伸び悩み、2024年期にかけて減少しています。営業利益も2019年10月期に約11.5億円を上げましたが、その後はコロナ禍の影響もあり変動が大きく、2024年期に初の営業赤字となりました​。成長分野として注力しているIT/IoT事業の貢献はまだ小さく、現状は猟銃・機械の成熟事業が中心です。今後は新事業の育成や海外市場の開拓が成長のカギとなるでしょう。

業界ポジション: 猟銃事業では国内で数少ないメーカーの一つで、老舗ブランドとして一定の評価があります。ただし日本の猟銃市場は限定的で、主な収益源は海外輸出です。世界的には大手銃器メーカーが多数存在し、ミロクはニッチな高品質路線で差別化しています。工作機械分野では、大手メーカー(DMG森精機やオークマ等)に比べ規模は小さいですが、独自製品を持つ中堅企業として位置づけられます。IT関連事業についてはグループ企業のMJSとのシナジーが期待されるものの、業績への寄与はこれからです。総じてミロクはニッチトップ戦略で独自の地位を築く企業と言えます。

投資の観点: ミロクの株価は近年低迷傾向にあります。2024年期の赤字転落を受け、業績回復まで株価には厳しい状況が続く可能性があります。直近の株価指標ではPBRが約0.25倍と解散価値に対し極めて低い水準にあり​、市場からは厳しい評価を受けています。一方、配当利回り(予想)は約0.9%で、業績悪化を踏まえ減配されました​。財務体質は健全なため倒産リスクは低いものの、収益力の回復が課題です。投資家向け情報としては、猟銃需要や設備投資動向など業績に直結する指標に注目が必要です。また、低PBRゆえの資産バリュー株として、中長期での再評価を期待する向きもあります。業績改善策(新製品開発や事業再編等)の進捗を注視することが重要です。

【参考】: 決算短信や株主向け資料から主要事業の把握と財務数値を確認できます​。

株式会社技研製作所 (GIKEN, 証券コード: 6289)

企業概要: 技研製作所は1978年に設立された高知市発祥の機械メーカーです(創業は1967年)​。主力製品は無公害杭打ち機「サイレントパイラー」で、地盤に杭を圧入する際の騒音・振動を大幅に低減する独自技術を持ちます。国内外の土木建設現場で利用されており、圧入工法(インプラント工法)のパイオニアとして世界的にも知られています。事業内容は建設機械の開発・製造・販売が中心ですが、地下自動駐輪場「エコサイクル」の開発など新分野にも取り組んでいます。現在はアジアや欧米に現地法人を設け、グローバル展開を加速中です​。

財務情報: 直近期(2024年8月期)の連結業績は、売上高約294.8億円、親会社株主に帰属する当期純利益24.37億円となりました​。前期(2023年8月期)は売上約292.7億円・純利益8億円程度でしたが​、今期は大型案件の進捗により増収増益を達成しています。特に純利益は前年比で大幅増となり、収益性が改善しました。自己資本比率は80%超と高く、無借金経営に近い堅実な財務です​。2024年9~11月の第1四半期(2025年8月期)は売上55.3億円で前年同期比▲25.4%減と減収でしたが、通期では300億円(前期比+1.8%)の売上を計画しています​。足元の業績は四半期ごとに変動があるものの、年間では堅調さを維持しています。

成長性: 技研製作所は中長期で成長基調にあります。リーマンショック後の2010年代前半は停滞期もありましたが、その後技術提案営業の強化や海外案件の獲得により業績が拡大。2019年8月期には売上約336億円・営業利益約66億円を記録しました​。しかし2020年8月期はコロナ禍の影響で売上249億円・営業利益約25億円まで落ち込みます​。その後、2021~2022年にかけて需要が回復し、2022年8月期は売上約302億円・営業利益約46億円とV字回復しました​。2023年8月期は一時減益となったものの​、2024年8月期に再び業績を伸ばしています。今後は海外市場の開拓が成長ドライバーで、同社は2025年から2027年までの中期経営計画で海外売上の拡大を掲げ、2027年8月期に売上360億円超を目指す計画です​。さらに、2031年までに売上1000億円という長期目標も発表しており​、積極的な成長戦略を描いています。

業界ポジション: 同社は杭圧入工法の世界的リーディングカンパニーです。環境規制が厳しい都市部での基礎工事需要を追い風に、国内では競合他社に先駆け高シェアを獲得しています。世界市場でも独自技術により評価が高く、欧米やアジアで実績を伸ばしています。ただし建設機械分野全体で見ると、売上規模は日立建機やコマツなど大型建機メーカーに比べ小さい中堅企業です。そのため、同社は大手が手掛けないニッチ市場を専門技術で独占する戦略をとっています。例えば、都市型無公害杭打ちという分野では事実上の標準技術を確立しており、参入障壁が高い状況です。また官公庁案件(防災・減災工事など)にも強みがあり、国土強靭化関連の需要を取り込んでいます​。業界内ポジションは「技術開発型の中堅グローバル企業」であり、高収益なニッチトップ企業として今後も存在感を保つでしょう。

投資の観点: 技研製作所の株価はここ数年、業績変動に連動して上下しています。直近の株価水準では予想PERが約19倍、PBRが0.8倍程度で​、同業他社比で割安感があります。配当利回りは2~3%前後​と市場平均並みで、安定配当を継続中です。自己資本比率が高く財務健全性が優れている点は投資上の安心材料です。一方で、建設投資サイクルや公共工事予算の影響を受けやすく、業績のブレが大きいリスクがあります。直近では受注残高の増減や海外展開の進捗が株価材料となっており、2025年8月期以降の中期計画達成が注目されています​。加えて、同社は革新的技術を武器にしていることから、SDGsやESG投資の観点で評価される可能性もあります。総じて、高収益ニッチに強い成長企業として中長期の成長を期待する投資家に注目されています。

【参考】: 決算説明資料や中期経営計画の公表資料から、海外売上拡大や将来目標について詳細が確認できます​

兼松エンジニアリング株式会社 (証券コード: 6402)

企業概要: 兼松エンジニアリングは1971年創業の機械メーカーで、高知市に本社を構えます。社名に「兼松」とありますが、大手商社の兼松とは資本関係はなく、独立系の企業です。主力製品は環境整備機器と呼ばれる産業車両で、具体的には強力吸引作業車(バキュームカー)高圧洗浄車汚泥脱水車などの特殊車両を設計・製造・販売しています​。これらは下水道や産廃処理の現場で用いられ、同社は「環境をキレイにする製品」をモットーに開発を続けてきました​。創業以来、一貫してこの分野に特化しており、国内シェアトップクラスの製品も有しています​。本社工場のほか南国市にも生産拠点を持ち、全国の官公庁や自治体、インフラ関連企業に製品を納入しています。

財務情報: 最新の2024年3月期決算(単体)では、売上高約124億03百万円、当期純利益6億18百万円となりました​。売上は前年比+9%の増収となり、過去最高水準を記録しています。営業利益は前年比でやや減少しましたが、それでも6億円程度を維持しています(営業利益率は約5%)。財務体質は堅調で、自己資本比率は約50%まで向上しました​。前期(2023年3月期)は売上113億円・純利益7億54百万円であり​、純利益は若干減益となったものの、おおむね安定した利益水準です。近年は受注増に対応するため設備投資を行っており、2024年3月期は営業キャッシュフローが▲1.11億円(設備投資の増加による)となりました​が、次年度以降の効率改善が期待されます。

成長性: 兼松エンジニアリングは長期的に緩やかな成長を遂げています。売上高は2010年代初頭に40~50億円台でしたが​、その後新製品開発や需要拡大により右肩上がりとなり、2017年3月期に初めて100億円を突破しました​。以降も100億円前後で推移し、2020~2021年はコロナ禍にも関わらず過去最高の117~119億円を維持しています​。2022年3月期には119億円、2023年3月期は113億円と若干の変動はあるものの​、概ね安定成長と言えます。2024年3月期に124億円となったことで再び過去最高を更新しました​。利益面でも、コスト管理の徹底により大幅な赤字になることなく、営業利益ベースで毎期7~10億円程度を計上してきました​。今後は老朽化した上下水道設備の更新需要や、環境規制強化に伴う清掃需要の増加が追い風となる見通しです。また、創立50周年(2021年)を機に組織力強化を図っており、開発力と営業力の向上によるさらなる成長が期待されます。

業界ポジション: 環境整備機器の分野で、兼松エンジニアリングは国内トップクラスのメーカーです。同社の強力吸引作業車は国内シェアNo.1との評価もあり​、競合には新明和工業や極東開発工業など一部上場企業も存在しますが、製品ラインナップの広さと専門性で優位に立っています。官公庁向け入札案件でも高い採用実績があり、ブランド力を築いています。また「環境をきれいにする」というミッションに特化している点で独特な立ち位置にあります。総合的大手企業が手掛けないニッチ市場を開拓し、地道な改良によってユーザーからの信頼を獲得してきました。最近ではSDGsやインフラ老朽化対応の観点から注目が高まりつつあり、市場からも「地方発の隠れた優良企業」と見なされています。製品の性質上、新車需要は景気に左右されにくく更新サイクルも安定しているため、同社は堅実な収益基盤を持つ業界のリーディングカンパニーと言えます。

投資の観点: 兼松エンジニアリングの株式は東証スタンダード市場に上場しており、時価総額は約82億円(2023年時点)と小型株です​。株価はここ数年、1株あたり1000円台前半で推移し、PERは一桁台後半、PBRは0.7~0.8倍程度と割安水準にあります​。地方の中小型株で流動性が低いため、市場から十分注目されていない側面があります。しかし配当利回りは4%前後と高めで​、安定配当を続けています。実績として増配も行われており、株主還元に積極的です。課題としては、さらなる成長シナリオが見えにくい点が挙げられます。市場規模が限定的な中でどこまで事業拡大できるか、不確実性があります。ただ、財務の安定性や確固たる国内需要を考えるとディフェンシブ銘柄としての魅力もあります。大手企業によるM&Aの候補になる可能性も指摘されており、隠れた価値株として中長期の投資対象となり得るでしょう。投資家向け情報は公式サイトのIR資料で丁寧に開示されており、業績見通しや受注状況などを確認できます。

【参考】: 決算短信やディスクロージャー資料にて、売上・利益の推移や高水準の配当性向が確認できます​。

最後に

いかがでしたでしょうか?
本社を置く上場企業は数が限られていますが、それぞれ独自の強みを持ち、業界内で存在感を示していることがわかります。興味を持った方は各社のIR情報や企業情報などをさらに深ぼって調査することをおすすめします。


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