ビジネスのモデルの革新~プラットフォームビジネスの本質と可能性~
初めに
プラットフォームビジネス(PFビジネス)は、近年のデジタル経済において、最も注目されるビジネスモデルの一つです。このモデルは、提供者と利用者を結びつける「場」を提供し、双方の取引や交流を促進します。特に、デジタル技術が発展し、オンライン上での経済活動が増える現代において、プラットフォームの重要性はますます高まっています。Gawer and Cusumano (2014) は、プラットフォームビジネスを「多様な参加者が相互にやり取りし、価値を生み出す場」と定義しており、ネットワーク効果(::ある製品やサービスの価値が、ユーザー数の増加に伴って上昇する現象)を通じて規模と価値が拡大すると述べています(Gawer & Cusumano, 2014)。
プラットフォームビジネスがどのように収益を上げるか、また日本企業がどのようにこのモデルを活用して競争力を向上させるべきかを、主要な収益化モデルとともに検討していきます。
4つのマネタイズポイント
プラットフォームビジネスの収益化モデルは多岐にわたります。以下の4つの代表的なモデルは、プラットフォームの性質に応じて適用され、多様な収益化方法を生み出しています。
1. 手数料モデル
手数料モデルは、取引成立時に取引金額の一定割合または固定額の手数料を徴収する仕組みで、フリマアプリ「メルカリ」が代表例です。このモデルの強みは、取引量に比例して収益が拡大する点です。研究によると、手数料モデルは消費者が直接価値を受ける取引型プラットフォームに最適であるとされています(Hagiu & Wright, 2015)。また、デジタルプラットフォームが市場内の仲介者として機能することで、仲介費用が従来の方法よりも削減される点も評価されています。
2. サブスクリプションモデル
サブスクリプションモデルでは、ユーザーから月額や年額での定額料金を徴収します。動画配信サービス「Netflix」や音楽配信サービス「Spotify」などがこのモデルを採用し、ユーザーは定額料金を支払うことでコンテンツを無制限に利用可能です。サブスクリプションモデルの強みは、ユーザー基盤が安定することで、企業が安定した収益を確保できる点にあります。Wirtz et al. (2010) は、このモデルが特にコンテンツ集約型プラットフォームに適していると述べています。定額制による定期的な収益は、長期的な成長計画の策定に有利であるとも指摘されています(Wirtz et al., 2010)。
3. フリーミアムモデル
フリーミアムモデルは、基本サービスや機能を無料で提供し、プレミアム機能やコンテンツに対して料金を課す方法です。代表例としては「YouTube」や「LinkedIn」が挙げられます。Anderson (2009) は、このモデルがまず広範囲のユーザーを獲得し、ユーザー数に比例して広告収入や課金ユーザーを増加させる手段として効果的であると指摘しています(Anderson, 2009)。フリーミアムモデルは、無料ユーザーが多いほどネットワーク効果が発揮されやすい点が魅力で、また、利用者の多様なニーズに応じてサービスを差別化できる強みを持っています。
4. 広告モデル
広告モデルは、プラットフォーム上に広告を表示し、広告主から広告費を徴収する手法で、SNS系プラットフォームにおいて一般的です。「Instagram」や「Facebook」など、ユーザーが頻繁にアクセスするプラットフォームで特に有効です。Bhargava and Choudhary (2004) の研究によると、広告モデルは特に情報提供や娯楽提供型プラットフォームにおいて最適であるとされており、収益源として確固たる地位を築いています。利用者が多いほど広告価値が高まるため、規模の拡大にともなって収益性が向上します。
日本企業に足りない視点とPFビジネスの可能性
日本企業がプラットフォームビジネスに取り組むうえで、いくつかの課題が浮き彫りになっています。特に、日本は製造業が強みである一方、デジタルプラットフォームビジネスにおいては国際競争力が劣るとの指摘があります(経済産業省, 2020)。多くのデジタルプラットフォームが海外企業によって支配されている現状を打破するためには、「収益化の柔軟性」と「エコシステムの構築」という二つの視点が欠かせないと私は考えていますし、Parker et al. (2016) は、成功するプラットフォームは強力なエコシステムを持ち、ユーザーがプラットフォーム上で相互に価値を創出する環境を提供していると述べています。
これからのビジネスにおける「勝ち筋」を模索するなかで、プラットフォームビジネスは日本企業にとって大きな可能性を秘めています。利用者数が増えるほど価値が増大するネットワーク効果を活用することで、競争優位性を築ける可能性があるからです。これは、早期に強力なエコシステムを構築した企業が、市場のシェアを奪取しやすくなることを示しています(Katz & Shapiro, 1985)。ネットワーク効果は、ユーザーが増加することでユーザー体験の価値が高まるため、特にプラットフォームが多様なニーズを満たすサービスを提供できる場合に強力に作用します。
PFビジネスの成功に必要な視点
プラットフォームビジネスの成功には、収益モデルの適切な選択とエコシステムの構築が鍵を握ります。特に、日本企業が注力すべきなのは「収益化戦略の柔軟さ」と「ユーザーエンゲージメント」です。Evans and Schmalensee (2016) の研究によると、プラットフォームの成功はユーザー基盤をいかに拡大し、ネットワーク効果を強化するかにかかっています。
従来のビジネスモデルからデジタルプラットフォームへの移行は日本企業にとって大きな挑戦ですが、製造業が強みである日本企業にとっては、プロダクト提供にとどまらず「サービスとしてのプラットフォーム」という視点を持つことが重要です。ビジネスの枠組みを拡大し、ユーザーの声を取り入れてエコシステムを構築することで、グローバル市場でも競争力を発揮できるようになるでしょう(Shapiro & Varian, 1999)。
日本企業が進むべき未来とPFビジネスの可能性
プラットフォームビジネスは、単に収益を得るための手段ではなく、社会における新たなインフラとしての役割も担います。日本企業がこの分野で成長し、市場を牽引するためには、柔軟なビジネスモデルと、ユーザー価値の追求という視点が不可欠です。ある研究では、日本企業の競争力向上にはプラットフォーム型エコシステムの構築が不可欠であると指摘されており、特に多様なユーザーが相互に価値を高め合う場の提供が重要とされています(Aoyama, 2020)。
「皆さんが利用しているプラットフォームに、どのような価値を見出していますか?(感じていますか?)」と問いかけると、意外とその価値を具体的に説明できないかもしれません。しかし、そこには個々のニーズに対応した収益モデルやエコシステムが確立されているため、私たちは日々多様なプラットフォームを利用しています。企業は、こうした視点を持ちながら収益モデルを組み合わせ、ネットワーク効果を最大限に活用することで持続的な成長を目指すことができます。個人でも自身の事業やSNSにおいても非常に重要になってくる考え方だなと私自身も感じています。いかに、応用できるか?楽しみです。
参考文献|+個人的に面白かった文献
Aoyama, Y. (2020). Platform Ecosystems in Japan: Opportunities and Challenges. Tokyo University Press.
Anderson, C. (2009). Free: The Future of a Radical Price. Hyperion.
Bhargava, H. K., & Choudhary, V. (2004). Economics of an Information Intermediary with Aggregation Benefits. Information Systems Research, 15(1), 22-36.
Evans, D. S., & Schmalensee, R. (2016). Matchmakers: The New Economics of Multisided Platforms. Harvard Business Review Press.
Gawer, A., & Cusumano, M. A. (2014). Industry Platforms and Ecosystem Innovation. Journal of Product Innovation Management, 31(3), 417-433.
Hagiu, A., & Wright, J. (2015). Multi-Sided Platforms. International Journal of Industrial Organization, 43, 162-174.
Katz, M. L., & Shapiro, C. (1985). Network Externalities, Competition, and Compatibility. American Economic Review, 75(3), 424-440.
Parker, G., Van Alstyne, M., & Choudary, S. P. (2016). Platform Revolution: How Networked Markets Are Transforming the Economy and How to Make Them Work for You. W. W. Norton & Company.
Shapiro, C., & Varian, H. R. (1999). Information Rules: A Strategic Guide to the Network Economy. Harvard Business Review Press.
Wirtz, B. W., Schilke, O., & Ullrich, S. (2010). Strategic Development of Business Models: Implications of the Web 2.0 for Creating Value on the Internet. Long Range Planning, 43(2-3), 272-290.
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