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元スケオタが久しぶりに羽生選手を見て

ショートプログラム8位。
他の選手がP Bを更新しバンバン点数を出した中、私はそれが羽生くんの結果だとすぐ飲み込めなかった。自分のことでもないのに、頭が真っ白になった。その後のインタビューで、いつも感謝しているリンクに「嫌われちゃったかな」となんとも言えない顔で呟く羽生くんを見て、涙が止まらなかった。一人暮らしの誰もいない部屋で、ティッシュで何回も鼻をかんだ。思うような演技ができなかった時の羽生くんはいつも悔しさを全面に出すのに、昨日は見たこともないような顔をしていた。

ソチオリンピックで、私は完全に羽生結弦選手のファンになった。元々好きではあったが、ソチをきっかけにどっぷりハマった。たまたまチケットを持っていたその年の国別対抗戦で生のパリの散歩道を見たことは一生忘れないだろう。勉強と部活に全てを捧げていた中学時代、ストイックな羽生くんは憧れで、自分のなりたい姿だった。中学3年生になって、スマホを買ってもらい、スケートアカウントを作った。スケート好きのフォロワーさんと仲良くなって、毎日のように羽生くん、スケーターのことを考えた。試合はいつもチケットが取れなかったけれど、アイスショーには何回か行くことができた。毎シーズン、何の曲なのかどんな衣装なのか、どんな演技を見せてくれるのか、ワクワクしながらテレビの前に張り付いた。他の選手ももちろん好きだったけれど、試合で一番美しくて強いのは羽生くんだった。
 けれど高2あたりから他に夢中になる趣味ができて、少しずつスケートを見なくなった。それでも大学受験と重なった平昌オリンピックはしっかり見た。2回目の金メダル。以前より力を入れて情報を追うことはしていなかったが、それでも人並み以上に応援していた。
 そして大学4年生になった昨日、久しぶりにリアルタイムで羽生選手の演技を見た。大学生活はサークルにハマってほとんどテレビを見ていなかった。就活も卒論も終わり、久しぶりに演技を見た。見ていない間に最終グループはもちろん、第3グループまでレベルの高いスケーターだらけになっていた。
  最初のジャンプが空振りに終わっても、羽生くんの演技はただひたすら、美しかった。陳腐な表現しかできないが、一つ一つの手の動き、滑らかなステップ、繊細なスピンは前見た時よりパワーアップしていて改めてびっくりした。私は最初のジャンプの前にとても緊張していたが、正直、一本目のジャンプ後は脱力してしまっていた。だからハラハラドキドキではなく冷静に鑑賞していた。冷静に観察しても、全く手を抜いていなかったことにびっくりした。
  プロだから、オリンピックに出るような選手だから、羽生くんだから。最後まで諦めない。当たり前なのだが、人生の全てを捧げてこの数分に賭けている、だから諦めるわけにはいかないんだろう。それを初めて実感して、ひたすら感動した。そして羽生くんの並大抵ではない努力を想像して、泣いてしまった。
  諦めるなんてもったいない、そう無意識に最後まで思えるくらい、私は努力したことがない。ストイックな羽生くんを見ながら努力していた中高時代。大学時代は本当に楽しくて、人生で初めて生きていてよかったと思えた4年間だった。けれど羽生くんを見ていなかった4年間、私は努力をどこかに置いてきてしまった。今日の羽生選手から受けた衝撃は、多分一生忘れない。春から社会人になると、私立文系でのらりくらりと生きている今より遥か大変で、嫌になることが多いと思う。そんな時、また羽生くんの演技から力をもらおうと思う。
  27歳、スケーターとして大先輩になった羽生くんはもう少しで引退してしまう。それまでに、とりあえず明日は、羽生くんが満足する演技ができるようにひたすら応援しようと思う。
  「同じ時代に競技できることを光栄に思う」とインタビューで話してくれたネイサン。私も、同じ時代に競技を見ることができて本当に光栄だと思った。


男子ショートプログラムが終わって、思わず殴り書いた自己満の文章をのせました。少し堅苦しい文章になってしまいましたが、とにかく今日のフリーでどんな演技が見られるのかワクワクです…!

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