2023/03/30(木)のゾンビ論文
ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。
アラートの条件を「zombie -firm -company」として、三件がヒットした。三件中、メディア文化学、水産学、医学が一件ずつだった。
また、差分を見るために「zombie」の条件でもアラートを設定しており、こちらでは追加で二件がヒットしていた。
検索キーワード「zombie -firm -company」
Zines of Rupture: Theorising Migration Studies using Comics by Racialised Migrants and Refugees
一件目。タイトルを直訳すると「Zines of Rupture: 人種化された移民と難民によるコミックを使用した移民研究の理論化」。掲載誌はJournal of Media & Cultural Studies。著者はDaniella Trimboli。
zineは”小稿;コラム雑誌。分量が少なく、一つの内容について書かれた雑誌を表すスラング”。そういった雑誌に載った漫画(風刺画や挿絵も含む?)を使って移民研究を理論化するらしい。
ちょっと何言ってるのかわからないが、たとえば、zombieの単語が現れる一文を以下に引用してみる。
移民や難民が自分たちをゾンビなどのモンスターとして戯画化する様子を読み解くものらしい。
これはかなり興味深い。正直に言うと、映画のモンスターと人種を結び付けて考えるのはほとんどあてずっぽうの妄想と変わらないと思っているのだが、今回は実際に移民や難民といった特定の人間が自分自身を(あるいは、おそらく自分たちを)モンスターとして描くことがある、ということだ。それがあてずっぽうの妄想になりえるだろうか。
そして、もしかしたら、私の「映画のモンスターと人種を結ぶつけるのはほぼ妄想」という考えの方が間違っているのかもしれない。それを示す重大なヒントが隠されているような気もする。
ということで、これはきちんと読んでおきたい。ただ、ねらいの論文にはカウントしない。
ジャンルは論文誌の名前から、メディア文化学としておく。
Proteomic analysis of the hepatopancreas of Exopalaemon carinicauda in response to Metschnikowia bicuspidate infection
二件目。タイトルの直訳は「Metschnikowia bicuspidate 感染に応答した Exopalaemon carinicauda の肝膵臓のプロテオーム解析」。掲載誌はAquaculture Reports。執筆者はWenjun Shiを筆頭著者として6名。
いかにも医学というタイトルの論文。であれば、もちろんzombieの単語は"Zombie Aqua"(死んだ細胞を光らせる試薬)…かと思いきや、現れたのは"zombie disease"(ゾンビ病)という文字列。
高鳴る鼓動を抑えながら読んでほしい。以下がこの論文に書かれているゾンビ病の紹介文だ。
海老の病気である。しかも死なないとか死んでなお動くとか、そういった病気でもない。病状を以下に引用する。
感染後、のろのろと動く様子をゾンビにたとえたようだ。見事に期待が外れてしまった。しかも"zombie disease"という呼び方自体この論文のオリジナルのようだ。その証拠に「"zombie disease" prawn」をグーグルスカラーで検索してみてもエビに病気に関する論文はこれ以外に存在しない。
一応、「prawn zombie disease」をGoogleで検索したところ以下のニュースがヒットした。しかしエビの種類も病状も異なっている。気が向いたらゾンビの名前を使いたがる人間がどこの世界にもいるということか。
ジャンルは水産学。
Einfluss des HPV-Status und der Strahlentherapie auf den immunogenen Phänotyp von Kopf-Hals-Tumorzelllinien
三件目。タイトルの直訳は「頭頸部がん細胞株の免疫原性表現型に対する HPV 状態と放射線療法の影響」。ドイツ語らしい。Friedrich-Alexander-UniversitatのMedizinischen Fakultät(医学部)に提出された博士論文。著者はSebastian Martin Wimmer。
zombieの単語は"Zombie IR"という文字列で現れる。死んだ細胞を光らせる試薬である。ということでジャンルは医学。
検索キーワード「zombie」(差分のみ紹介)
3月からはアラートのキーワードをzombieだけではなく、-firmと-companyも追加した。各単語の前のハイフンは”含まない”を意味するため、『zombieという単語を含み、かつfirmとcompanyという単語は含まない』という検索条件になっている。この節では差分を見ることを目的とするため、各論文の内容には立ち入らない。
PROBLEMS OF ARTIFICIAL PERSONALITY (ARTIFICIAL INTELLIGENCE) CONTROL
一件目。タイトルの直訳は「人工人格(人工知能)制御の問題」。掲載誌はJournal of Digital Economy Research。著者はOleg N. GurovとAlexey V. Sherstov。
"philosophical zombie"(哲学的ゾンビ)の文字列がある。人工知能を作る会社を指すときにcompanyの単語を使ったようだ。
Depiction of Science and Technology in Post-Millennial Tamil Cinema
二件目。タイトルの直訳は「ミレニアル世代以降のタミル映画における科学技術の描写」。掲載誌はScience, Technology and Society。著者はMangudi Ramgopal MahalakshmiとLavanya Rajendran。
"Star Film Company"という文字列がcompanyに引っかかったようだ。タイトルからしてジャンルが映画感想であるためねらいのゾンビ論文ではないように思うが、Munz Pのゾンビ・パンデミックシミュレーションの論文を参考文献に置いている点が気になる。
まとめ
「zombie -firm -company」では、三件中、メディア文化学、水産学、医学が一件ずつだった。
差分として「zombie」では、二件だった。
水産学の論文の「ゾンビ病」を調べるのに大変時間がかかってしまった。本当にやめてほしい。しかもメディア文化学の論文もちょっと興味が湧いた上に全文閲覧可能だったため、こちらにも時間がかかってしまった。
興味の尽きない内容だったが、今日はヒットなし。