ゾンビ論文の総括(2023年09月)
概要
2023年9月にGoogleスカラーのアラートに次の検索条件を設定して、ゾンビ論文の収集を行った。
条件は次の通り。
「zombie -firm -philosophical -botnet -xylazine -biolegend -gender」
「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -viability -gender」
「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」
「zombie -firm -philosophical」(取りこぼし確認)
「zombie -firm -consciousness」(取りこぼし確認その2)
各検索キーワードの意図は次の通り。単語の前にハイフンをつけると、その単語を含まないものを探す検索条件となる。
「zombie」:ゾンビ論文を探す
「-firm」:ゾンビ企業を扱う経済学の論文を排除する
「-philosophical」:哲学的ゾンビを扱う哲学の論文を排除する
「-DDoS/-bot」:ゾンビPCを扱う情報科学の論文を排除する
「-xylazine」:ゾンビドラッグことキシラジンに関する論文を排除する
「-viability/-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬を使う医学の論文を排除する
「-gender」:ジェンダー学の論文を排除する
各期間でメインの検索条件に引っかかったゾンビ論文は22本であり、私の目的に合致した論文は見つからなかった。
また、10月の検索条件を次の3つに設定する。ただし、検索条件1をメインの検索条件とする。
「zombie -firm -philosophical -botnet -xylazine -biolegend -gender」
「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」
「zombie -firm -xylazine -biolegend」(取りこぼし確認)
以下、8月の調査の詳細を記載する。
集計結果
まず、集計結果を示す。
7,8月とも30件以上のヒットがあったが、9月は22件と少ない。また、そのうち最も多かったのは評論の八件で、情報科学の三件が続く。ほかは一件のみの論文が11ジャンルという二件以下は誤差レベルで混じる可能性があるため、無視してもよいだろう。
ただ、教育学や教育哲学、あるいは情報科学と情報工学などは同じものとしてカウントすべきだったかもしれない。どの程度まで細かく分類すれば私の目的に合致するのかは一考の余地がある。そもそもジャンル分けは、共通するキーワードを見つけ出し、明らかにねらいとは異なるゾンビ論文を排除するために行っているのだ。細かく分類しすぎては共通するキーワードを見つける気すら起こらない。
とはいえ、アラートチェックをする時間や手間を考えると、一日平均二件程度がうれしい。今回は12日で22件だったため、その目標を下回っており、これ以上のゾンビ論文排除は必要ないかもしれない。
一旦、月に30件以上あったら、月の終わりの総括記事でジャンル分けをもう少し大雑把にすることを考えることとしよう。
9月の検証結果
9月は以下五件の検索条件を設定し、次の三つを検証していた。
情報科学の論文を排除するためのキーワードを「-DDoS」と「-bot」で比較する。
医学論文を排除するためのキーワードを「-viability」と「-biolegend」とで比較する。
哲学的ゾンビを排除するためのキーワードを「-philosophical」と「-consciousness」とで比較する。
前者二つの検証は検索条件1-3で検証し、後者一つは検索条件4-5で検証した。
「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -viability -gender」
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -biolegend -gender」
「zombie -firm -philosophical」
「zombie -firm -consciousness」
検証結果を以下に示す。検索条件ごとの差分は次の通り。
アラートのメールが送られてきた12日のうち、検索条件1-3には一日の差異も見られなかった。また、五日で検索条件4,5に差異があった。
検索条件1-3の差異
検索条件1-3に差異がなかったのは、9月にはDDoSに関する論文もゾンビ試薬に関する論文もヒットしなかったからである。なぜそんなことがあるのかは判然としないが、学会が開かれなかったとかGoogleアラートがAI機能で勝手に排除したとか、そういう理由があったのだろう。
特に後者は深刻である。Googleアラートには関連性の低い論文を表示しないという機能があり、それを今までオンにしていたのだ。その機能をオフにしたのが下図である。見「zombie」としかキーワードを設定していないにも関わらず、勝手にゾンビ論文を排除している様子がうかがえる。どのようなアルゴリズムを使えばそんなことになるのだろうか。不思議だ。
この機能とどう付き合うかは、今後の課題とする。
ただよく見てみると、ゾンビ試薬を使った細胞の研究論文が関連性の低い論文であるとして排除されている(一番上と下から二番目)。「-viability」と「-biolegend」の比較をしたかったにも関わらず、ゾンビ試薬を扱った論文がほとんど引っ掛からなかったのはこれが原因だったのだ。
ということは、関連性の低い論文を表示しないだけでゾンビ試薬を扱った論文は私の前にほとんど現れないことになる。それでも残ったゾンビ試薬の論文は月当たり二件にもならないだろうから、「-viability」と「-biolegend」のどちらでもアラートチェックには大きな影響がないと考えられる。
したがって、「-viability」と「-biolegend」の比較はこれ以上不要であり、10月からはこの二つの検索キーワード比較を行わないこととする。「-viability」は一般的な単語である一方で「-biolegend」は固有名詞(ゾンビ試薬の販売会社名)であるため必要以上に排除する懸念がない。よって、「-biolegend」を採用するのがよいだろう。
また、固有名詞のキーワードが必要以上に論文を排除しないのであれば、「-biolegend」によって排除される論文はゾンビ試薬を扱った論文に限定される。であれば、「-biolegend」で排除された論文は確認する必要がない。ほとんど固有名詞である「-xylazine」についても同じことが言えるだろう。
そこで、10月以降は「-biolegend」と「-xylazine」で排除されたゾンビ論文の確認は行わないこととする。
検索条件4,5の差異
次に、検索条件4,5の差分を確認する。
個別の記事でも触れたが、「-consciousness」はあまりに多くのゾンビ論文を排除してしまう。事例は以下の通りである。
どの論文も哲学的ゾンビを扱った論文ではない。そして、明らかに排除しすぎだ。"consciousness"がここまで一般的に使われる単語だとは思いもしなかった。
一方、「-consciousness」で排除されず、「-philosophical」で排除されたのは以下の一件だけである。
評論は「-philosophical」で排除されがちだが、「-consciousness」はそれ以上に排除を決めている。
ということで、「-consciousness」は哲学的ゾンビの排除に使えるかもしれないが、それ以上に異なる論文を排除しすぎているため、「-philosophical」を使うべきだと結論した。
10月の検証
10月は以下の検証を行う。
情報科学の論文を排除するためのキーワードを「-DDoS」と「-botnet」で比較する。
月の合計で30件以上のヒットがあった場合、各日で設定したジャンルを再分類する。
ということで、10月の検索条件は次の3つに設定する。
「zombie -firm -philosophical -botnet -xylazine -biolegend -gender」
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -biolegend -gender」
「zombie -firm -xylazine -biolegend」(取りこぼし確認用)
検索条件1,2がメインで確認する条件である。これらの検索条件で本物のゾンビ論文がヒットすることを期待する。
また、検索条件3の「-firm -xylazine -biolegend」で、ゾンビ企業・ゾンビドラッグことキシラジン・ゾンビ試薬を扱う論文を完全排除し、同時に「-philosophical」や「-gender」、「-botnet/DDoS」で排除された論文の中に本物のゾンビ論文がなかったかを確認する。
変更は10/1(日)以降のゾンビ論文に適用される。
以上。