2023/08/05(土)のゾンビ論文 ハダカデバネズミがゾンビを倒す
ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。
アラートの条件は次の通り。
「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -viability -gender」
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -biolegend -gender」
「zombie -firm -philosophical」(取りこぼし確認)
「zombie」(取りこぼし確認その2)
検索条件は次の意図をもって設定してある。
「zombie」:ゾンビ論文を探す
「-firm」:ゾンビ企業を扱う経済学の論文を排除する
「-philosophical」:哲学的ゾンビを扱う哲学の論文を排除する
「-DDoS」/「-bot」:ゾンビPCを扱う情報科学の論文を排除する
「-xylazine」:ゾンビドラッグに関する論文を排除する
「-viability」/「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬を使う医学の論文を排除する
「-gender」:ジェンダー学の論文を排除する
また、「zombie」の内容も確認するのは、上記の検索キーワードで不必要にゾンビ論文を排除していないかを確かめる目的である。ただし、条件4の通り、ゾンビ企業と哲学的ゾンビは完全な排除をねらう。
それぞれのヒット数は以下の通り。
「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」四件
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -viability -gender」四件
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -biolegend -gender」四件
「zombie -firm -philosophical」四件(差分ゼロ件)
「zombie」四件(条件4との差分ゼロ件)
「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」は社会学、医学、健康科学、情報科学が一件ずつだった。
検索キーワード「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」
ゾンビとその後:労働組合と自治体リニューアルについてのメモ
一件目。
原題:After zombies: Notes on labor union and municipal renewal
掲載:Environment and Planning D: Society and Space
著者:Claire Cahen
ジャンル:社会学
まず、論文のアブストラクトを引用する。
ゾンビ新自由主義は以前にも扱ったことがある。メインの検索条件に引っかかったわけではなく、取りこぼし確認で見つけたに過ぎないが。
その時はWikipediaを引用したのみで、特に内容には触れなかった。
Wikipediaによれば、ゾンビ新自由主義は2011年にワシントン・ポストの記事で使われた言葉らしい。当該記事を引用する。
要するに、新自由主義によっていわゆるポリコレは大きく進歩したが、同時に新自由主義は所得格差を促進してしまった。前者の点では生きているが、後者の点では死んでいる、と。半分生きて半分死んでいるからゾンビである、と。
ふざけた主張だ。ゾンビは半分生きて半分死んでいるわけではない。死んでいるのに動いているのだ。「死んでいること」が第一前提にある。死体が動いているからといって、生きているわけではない。ゾンビの定義に手を入れすぎだ。
また、理念が社会を間違った方向へ導いたからといって、それを死んだと表現するのは道理に合わない。大げさで扇動的で、品がないと思う。それともアメリカ人は間違っているものを指さして死んでいると呼ぶ文化を持っているのだろうか?
ということで私は「ゾンビ新自由主義」という言葉について非常に強い反感を覚えるが、とにかくそういう定義がなされている。
本論文では、そのような社会情勢の中でも教員たちが組合を作って未来を切り開こうとしていると述べている。彼らがどうやってゾンビ新自由主義を引き継ぎ、風穴を開けるのか?に焦点を当てているようだ。
となれば、ジャンルは社会学。
しかしワシントン・ポストのような左側の新聞が新自由主義推進者を「左」と書いているのは感心した。日本の新聞や論壇では左派が自身たちを「左」と書くことを忌避しており、主に左右の政治的立場二言及するのは右派の仕事になっているので。…どうしてそうなってしまったのだろうか。
ハダカデバネズミがゾンビを倒す
二件目。
原題:Naked mole-rats slay zombies
掲載:Science Signaling
著者:ANNALISA M. VANHOOK
ジャンル:医学
ハダカデバネズミはゾンビ細胞を除去できるという論文の解説記事。元の記事は以下のもの。
タイトル:ハダカデバネズミにおける細胞老化の誘導は、INK4a-RB 経路を介して進行性の細胞死を引き起こす
掲載:The EMBO Journal
著者:川村佳見を筆頭著者として二十四名
ゾンビ細胞とは、正式名称を老化細胞といい、損傷してもアポトーシスという自殺プログラムを無視してそのまま生存を続ける細胞のことを指す。学術的な説明がこの記事に記載されていたので引用しておこう。
よく意味がわからないが、いずれわかれば良い。そのような気持ちで載せておいた。とにかくp16_INK4Aという阻害剤がゾンビ細胞を生み出す要のようだ。
そして、ハダカデバネズミの細胞はp16_INK4Aが発現した後でもアポトーシスを起こしたらしい。そのときの各種物質との反応が詳細に記載されているが、私にはわからないので省略する。
気になるのはなぜ元の論文が私のアラートに引っかからなかったかだ。ゾンビという単語を使っていないからに他ならないが、なぜ使われていないのだろうか。
理由としては、日本人は使わない傾向にあるから、本当は真面目な研究者であれば使わないから、辺りがパッと思いつく。後者であってほしいものだが、前者もあながちありえない話ではないように思う。
ジャンルは医学。
インスリン抵抗性:症状、原因、およびそれを回復する方
三件目。
原題:Insulin Resistance: Symptoms, Causes & How to Reverse It
掲載:SIGNOS
著者:Sabrina Tillman
ジャンル:健康学
zombieの単語が出てくるのは次の文章。これ以外には出てこない。
フローの欠陥の空間: COBOL と開発のバックバックエンド
四件目。
原題:Spaces of Flaws of Flows: COBOL and the back-back-ends of development
掲載:Computational Culture
著者:Linda Hilfling Ritasdatter
ジャンル:情報科学
はじめにzombieの単語が出てくるのは次の一文。
この論文ではCOBOLというプログラミング言語をzombie、もっと具体的には過去の遺物、不要にも関わらず広く蔓延って除去が不可能なものとして扱っているのだ。COBOLがどのような言語か知らないが、可哀想に。
COBOLの散々な言われようをいくつか引用しておこう。
まだあるが、このくらいにしておこう。
この論文は嫌われCOBOLの一生を記述したものである。生まれ、嫌われ、しかし世に広まり、駆除できないほどにあらゆるシステムに入り込んだCOBOLの一生を。
ジャンルは情報科学。
検索条件1-3の差分(差分なし)
「DDoS/bot」と「viability/biolegend」で検索結果に差異が生じるか調べる。
今回は差分がなかった。
検索キーワード「zombie -firm -philosophical」(差分なし)
上記の条件で誤ってねらいのゾンビ論文を取りこぼしていないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。ただし、ゾンビ企業と哲学的ゾンビは意図的に取りこぼすこととする。
今回は差分がなかった。
検索キーワード「zombie」(差分なし)
「zombie -firm -philosophical」との差分を確認する。上記条件からも排除され、こちらの条件でのみ引っかかった論文がゾンビ企業・哲学的ゾンビの論文であれば、ねらい通りといえる。
今回は差分がなかった。
まとめ
「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」は社会学、医学、健康科学、情報科学が一件ずつだった。
今日はゾンビ新自由主義とゾンビ細胞を打ち倒しうるハダカデバネズミ細胞について学ぶことができた。どちらも過去にアラートチェックで扱ったことのあるゾンビで、特にゾンビ細胞はつい最近扱ったばかりであった。
前者は記憶に留める程度の扱いでよいだろう。そもそも新自由主義がまともに生きていた時代を知らない。生き生きとしていた時代も腐りかけた時代も、持ち上げてきた左派が勝手に定義して勝手に盛り上がって欲しいものだ。
後者は時間のある時にでも追加で調べてみたい。特に今回扱った論文のようなゾンビ細胞を打ち倒す研究は興味がある。その理由は、ゾンビ細胞を「生物が進化を促すために手に入れた特質」であるとワクワクしていたのに、それを覆すのは倫理に反することだと感じたからだが…。
老衰に導く体内システムを覆す病理研究。その動機は科学的興味であってほしい。万が一老衰が克服されれば、一生働かなければならない。しかも現役世代として、納税をする役割を負って。あるいは、老衰もガンも克服されれば、私が現役から退いたときにどんな理由だったら死んでも良いのだろうか。死ぬ手段が減らされれば、意地でも死から逃れたくなるに決まっている。しかし、なんのために…?
このような社会を目指すために、老衰を克服することを目的に、研究していないでほしい。そう望んでいる。
今日はねらいのゾンビ論文なし。