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ゾンビ論文の総括(2024年08月)
概要
2024年08月にGoogleスカラーのアラートに次の検索条件を設定して、ゾンビ論文の収集を行った。
「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network -AI」
「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers -narrative」(取りこぼし確認用)
単語の前にハイフンをつけると、その単語を含まない論文を探す検索条件となる。「zombie」でゾンビ論文を探し、「-〇〇」で不要なゾンビを検索結果から排除するというわけだ。各キーワードで排除したゾンビは次の通り。
「-firms」:ゾンビ企業
「-philosophical」「-Chalmers」:哲学的ゾンビ
「-drug」:ゾンビドラッグ
「-network」:情報科学系の論文ならなんでも
「-DDoS」:ゾンビPC
「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬
「-gender」:ジェンダー学系の論文ならなんでも
「-narrative」:ゾンビ映画・小説などの評論
「-AI」:人工知能を扱う情報科学系の論文
8月中にメインの検索条件に引っかかったゾンビ論文は七本であり、私が探している「本物のゾンビを扱った(と仮定しても矛盾しない)論文」が2本見つかった。
ハイチの「ゾンビ声」の原因はテトロドトキシン中毒か?(8/4調査分)
歩行者回避のシミュレーション: 人間とゾンビのゲーム(8/31調査分。検索条件2にのみヒット)
また、9月も検索条件1をメインの検索条件とし、次の検索条件で論文を確認していく。
「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network -AI」
「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers -narrative」(取りこぼし確認用)
以下、8月の調査の詳細を記載する。
集計結果
まず、集計結果を示す。検索条件1から。
![](https://assets.st-note.com/img/1728395900-WupBZ5fxUFDOyw3m1iolM6T8.png?width=1200)
ジャンルごとに集計結果が多い順にソート済
合計で八件のヒット。平均0.3件/日。この条件にしてからはおおむね10件程度で推移しているため、いつもと同じくらいである。
ジャンルごとのヒット数でいえば、評論の二件が最大で、あとは一件ずつ。非常に少ない。ヒットした論文のうち、建築学を除いたすべてが排除したかったジャンルだったが、一件や二件ならば仕方がない。排除キーワードを含まないイレギュラーなゾンビ論文もあるだろう。
次に、検索条件2のヒット数は次の通り。
![](https://assets.st-note.com/img/1728713178-Ds7cqXjMz0yHmvap6hRLNTgo.png?width=1200)
取りこぼし確認用である検索条件2に引っ掛かったのは20件。検索条件1の七件と合わせても30件。
最も多かったのは情報科学と情報工学の三件。次点で社会学、教育学が二件で、あとは一件。情報科学と情報工学は「-network」で排除するつもりだったが、うまくいっていない。まあ、検索条件2に三件程度であれば、それ以上頑張って減らす必要もないだろう。
8月の検証結果
8月の検証課題は特に設定していなかった。上記の検索結果にも気になる点はなかった。条件1も2もヒット数が少なく、何かを検証するほどのデータを得ることができていないためだ。
現在使用中の検索条件1、2は、私が一年以上かけて調整して作ったものである。はじめは「zombie」だけで探していたが、その過程でゾンビ企業や哲学的ゾンビを扱った論文が多くヒットすることに気づき、本物のゾンビについて書かれた(と仮定しても矛盾しない)論文を効率よく見つけるために排除キーワードを追加していったのだ。
しかし、検索条件ももう完成しつつある。明らかに私が求めるものではないゾンビ論文の多くを排除できており、月に10件程度しか検索にヒットしないようになったのだ。昔は月に50本以上目を通していたのだから、いかに効率化が進んだかわかる。また、その検索条件で取りこぼさないようにもうひとつ検索条件を設定し、こちらに引っ掛かった論文は深く読まないようにすることで、効率を保ち精度も落とさない調査までも可能にした。
いま、この状態が検証を繰り返して行き着いた先なのだろうか。これで終わりなのだろうか。否。経済学や哲学など、明らかに私が求めるゾンビ論文ではないものたちをもっと減らしたい。具体的にはこれらのヒット数を三月に一本程度にまで抑えたい。そのためには月一の総括記事ではなく、たとえばクォーターごとの総括記事にて検索条件1に引っ掛かった論文の検証が必要だろう。
ということで、9月以降は三月に一度の頻度でゾンビ論文の総括記事を書くこととする。この記事も結構まじめに書いているつもりなので、その分の負担も減って一石二鳥である。
一方、8月は本物のゾンビについて書かれた論文が二本もみつかった。改めて触れておこう。
ハイチの「ゾンビ声」の原因はテトロドトキシン中毒か?(8/4調査分)
歩行者回避のシミュレーション: 人間とゾンビのゲーム(8/31調査分。検索条件2にのみヒット)
前者は下記記事で触れた。「ゾンビ声」なるものを定義し、その特徴を分析し、テトロドトキシンによって生じたのかを検証した論文である。本物のゾンビを扱ったと仮定した論文…ではなく、過去にゾンビと認定された人間の声を調査した論文らしい。まぎれもなく本物のゾンビについて書かれた論文だと言えるだろう。
次に、後者は下記記事で触れた。円形のフィールドにて人間とゾンビを歩かせて、同じ速度で歩いてもゾンビが人間に追いつくことができることをシミュレーションで明らかにした論文である。
ねらいのゾンビ論文に出会ったら解説記事を書くことにしている。したがって、この二件の論文に関しても解説記事を書かなければならない。ただし、後者の論文はarXiv版の論文が出た時に作成済である。もしもarXiv版と今回のPhysical Review Eとで内容が異なっていたら、その分だけ更新するとしよう。
8月の新しい学術ゾンビ
8月も新しい学術ゾンビを得ることができた。リンクを貼っておいたので、意味を知りたければ飛んでいただきたい。
"Zombie Economics", ゾンビ経済(8/31、経済学)、約1,070件
2024/10/13時点で、このゾンビワードがどの程度使われているか、つまり各論文の執筆者が適当に作った造語でないかを確認し、項目の末尾にヒットした件数を記載した。
ゾンビ経済は千件程度のヒット。しかしその意味は、過去に何度も否定されたにも関わらず何度も蘇るアイデアを指す「ゾンビアイデア」の経済学バージョンであるから、特段面白いものでもない。私が見つけた論文ではゾンビ経済を代表する五つの思想を紹介していたが、それがあらゆる研究者の「ゾンビ経済」の定義であるかわからない。
一応、学術的ゾンビ辞典に収録するが、その意味には深く触れないこととする。
9~12月の検証
2024年の9~12月は引き続き次の2つの検索条件で調査を行う。
「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network -AI」
「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers -narrative」
この2条件で、本物のゾンビ(を扱っていると仮定しても矛盾しない)論文を探す。ただし、9月からは総括記事を毎月作らず、三か月に一度作ることとする。
以上。