2023/10/31(火)のゾンビ論文 速いゾンビ太陽電池・遅いゾンビ太陽電池
ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。
アラートの条件は次の通り。
「zombie -firm -philosophical -botnet -xylazine -biolegend -gender」
「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」
「zombie -firm -xylazine -biolegend」(取りこぼし確認)
検索条件は次の意図をもって設定してある。
「zombie」:ゾンビ論文を探す
「-firm」:ゾンビ企業を扱う経済学の論文を排除する
「-philosophical」:哲学的ゾンビを扱う哲学の論文を排除する
「-DDoS」/「-botnet」:ゾンビPCを扱う情報科学の論文を排除する
「-xylazine」:ゾンビドラッグに関する論文を排除する
「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬を使う医学の論文を排除する
「-gender」:ジェンダー学の論文を排除する
また、検索条件3では、上記の検索キーワードで不必要にゾンビ論文を排除していないかを確かめる。
今回、それぞれのヒット数は以下の通り。
「zombie -firm -philosophical -botnet -xylazine -biolegend -gender」四件
「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」三件
「zombie -firm -xylazine -biolegend」六件(差分六件)
検索条件1,2は医学、エッセイ、情報工学、分子工学が一件ずつだった。
検索条件1「zombie -firm -philosophical -botnet -xylazine -biolegend -gender」
今回はヒットがゼロ件だった。
注目の「ゾンビ」プロウイルス: HIV 持続感染の暗い側面を探る
一件目。
原題:'Zombie'proviruses in the spotlight: exploring the dark side of HIV persistence
掲載:AIDS
著者:Alexander O. Pasternaka と Tetsuo Tsukamoto、 Bena Berkhoutの三名
ジャンル:医学
リンク先には一ページ目の画像が貼られているのみだが、少し読んでみると"CD4+ T-cell"(CD4 T細胞)という文字列が見つかる。これは免疫細胞の一種である。過去にも何件かCD4 T細胞が出てくる論文を扱ったことがあり、必ずゾンビ試薬が使われていた。この論文もゾンビ試薬を使ったがゆえに検索に引っ掛かったと考えてよいだろう。
ジャンルは医学。
韓国のゾンビ: なぜ私たちは戦いをやめないのか
ニ件目。
原題:The Korean Zombie: Why We Won't Stop Fighting
掲載:The Morningside Review
著者:Andrew S. Kim
ジャンル:エッセイ
ジョン・チャンソンという格闘家がいて、"The Korean Zombie"と呼ばれているらしい。その格闘家への敬意から白人社会におけるアジア人の誇りに火が付き、人種差別に関する意見文が始まる。同胞の活躍に誇らしげに胸を張る感覚。人間が忘れてはならないものの一つだと思う。
ジャンルはエッセイ。それ以外に評価のしようがない。
IoT アプリケーションにおけるじゃじゃ馬分散型サービス拒否 (DDoS) 攻撃: 調査
三件目。
原題:Shrew Distributed Denial-of-Service (DDoS) Attack in IoT Applications: A Survey
掲載:IFIP International Internet of Things Conference
著者:Harshdeep Singh と Vishnu Vardhan Baligodugula、 Fathi Amsaadの三名
ジャンル:情報工学
タイトルにDDoSとあるように、ゾンビPCに関する論文。もちろんジャンルは情報工学。
固体色素増感太陽電池用光増感剤の分子工学:最近の開発と展望
四件目。
原題:Molecular Engineering of Photosensitizers for Solid‐State Dye‐Sensitized Solar Cells: Recent Developments and Perspectives
掲載:Chemistry Open
著者:Bommaramoni Yadagirを筆頭著者として、七名
ジャンル:工学
zombieの単語は"zombie cell"という文字列で出てくる。正式名称を老化細胞という、ゾンビ細胞のことではない。"cell"は太陽電池のセルを指すため、ゾンビセルやゾンビ太陽電池と訳すのが良いだろう。
2015年にスウェーデンのウプサラ大学に所属するGerrit Boschloo教授のグループが発見したもので、当時の日本語記事でも紹介されている。以下に原著論文と日本語記事を引用しておく。
太陽電池には大きく分けて液体タイプと個体タイプがあり、液体タイプはその名の通り液体が電解質(=発電の要)の役目を果たしている。その液体が乾燥しているにも関わらず太陽光を受けて発電した、ということらしい。
これにゾンビの名がつくのは「死んだと思っていたら生きていた」からだろう。私が考える三分類のうちのケース1に当てはまる。
今回の論文はタイトルの通りゾンビ太陽電池の概説論文である。本文を読んでみると、"rapid-zombie cell"や"slow-zombie cell"というゾンビ太陽電池もあるらしい。速いゾンビに遅いゾンビ。まるで映画のゾンビを論じているようで、ちょっとわくわくしてしまう。ただし、速い遅いは製造過程によるらしい。具体的にどう、というところまでは読解できなかったが。
ジャンルは分子工学。タイトルの”Molecular Engineering”より。
検索条件1-2の差分
「DDoS/botnet」で検索結果に差異が生じるか調べる。
今回は一件だけ、差分があった。
検索条件2で排除が一件
以下の論文が検索条件では排除されていた。
IoT アプリケーションにおけるじゃじゃ馬分散型サービス拒否 (DDoS) 攻撃: 調査
しかしアブストラクトですでにbotnetという単語が見られているため、検索条件1でも排除されてしかるべきだが…。複数形はノーカンということもないだろうし。よくわからないが、この差分をもって「-DDoS」の方がゾンビPCの排除に有効であると結論するのはよろしくないと思う。
検索条件4「zombie -firm -xylazine -biolegend」
上記の条件で誤ってねらいのゾンビ論文を取りこぼしていないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。ただし、ゾンビ企業とゾンビドラッグ、ゾンビ試薬は排除されるように設定してある。
サーバーにおける DDoS 攻撃と防御のメカニズム
原題:DDoS Attack and Defense Mechanism in a Server
掲載:Quantum Computing in Cybersecurityという本
著者:Pranav Bhatnagar と Shreya Pai、 Minhaj Khanの三名
ジャンル:情報工学
「-botnet」および「-DDoS」で排除。ゾンビPCに関する論文。
ハッピーハードコアで採点される嫌でくだらない話: オランダのニューキッズ映画の無慈悲なユーモア
原題:Harassing Hogwash Scored with Happy Hardcore: The Ruthless Humor of the Dutch New Kids Films
掲載:The Palgrave Handbook of Music in Comedy Cinema
著者:Emile Wennekes
ジャンル:評論?(文化批評)
「-gender」で排除と推測。『New Kids Turbo』と『New Kids Nitro』というゾンビが出てくる映画の批評。ブラックユーモア満載のおバカ映画であるため、このようなタイトルになったらしい。
まとめ
検索条件1,2は医学、エッセイ、情報工学、工学が一件ずつだった。
前回の記事ではGoogleスカラーがアルゴリズムを変更したのかと危惧していたが、そんなことはなさそうでまずは良かった。
それとは別に、今回は新しいゾンビであるゾンビ太陽電池に出会えたことに感謝したい。液体タイプの太陽電池の液体部分が乾くことで誕生するゾンビ太陽電池。ゾンビと聞くと血や体液でドロドロとしている印象があるが、その逆で今回のゾンビは比較的乾いているらしい。で、その乾かす速度で速いゾンビ太陽電池と遅いゾンビ太陽電池が存在する、と。
論文のReferenceを遡って調べたところ、偶発的にゾンビ太陽電池が発見され、それを模すように人工的に作られたものが遅いゾンビ太陽電池で、より効率的作れてより発電効率のよいものが速いゾンビ太陽電池らしい。
いや、同じタイミングに発明されたわけでもないのにそんなぴったりの名前がつけられているのはどういうことだろうか。もうちょっと調べる必要がある。
今回はねらいの論文がなかった。