2024/10月第三週のゾンビ論文 フィンランドでゾンビが出たら?
本物のゾンビについて書かれた論文を探すべく、Googleスカラーのアラート機能を使い、ゾンビについて書かれた論文を収集している。
アラートの検索条件は次の通り。
「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network -AI」
「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers -narrative」(取りこぼし確認用)
「zombie」をキーワードにゾンビ論文を探しているのだが、比喩としてゾンビを使う論文も多いため、「-◯◯」で比喩としてのゾンビを扱う論文を排除している。排除したいゾンビや論文は、以下の通り。
「-firms」:ゾンビ企業
「-philosophical」「-Chalmers」:哲学的ゾンビ
「-drug」:ゾンビドラッグ
「-network」:情報科学系の論文ならなんでも
「-DDoS」:ゾンビPC
「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬
「-gender」:ジェンダー学系の論文ならなんでも
「-narrative」:ゾンビ映画・小説などの評論
「-AI」:人工知能を扱う情報科学系の論文
検索条件1には一般性の高い排除キーワードが含まれているため、それらが不必要にゾンビ論文を排除していないかを条件2で確かめる。
今回、10/14~10/20の期間で収集し、以下の通りの論文を得た。
「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network -AI」五件
「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers -narrative」三件(条件1との重複を含めれば八件)
検索条件1は生物学、医学、政治学、情報科学、社会学が一件ずつだった。そして、ねらいの論文が見つかった。
検索条件1「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network -AI」
去勢性ゾンビフジツボ寄生虫に感染したチェサピーク湾のマッドクラブの形態学的変化の ImageJ 分析
一件目。
アラート日付:10月17日
原題:ImageJ analysis of morphological changes in mud crabs from the Chesapeake Bay infected with castrating, zombie barnacle parasite
掲載:College of Science: Department of Environmental Science and Policy
著者:Joey Kimを筆頭著者として、四名
ジャンル:生物学
Loxothylaucus panopaeiというフジツボに寄生されたEurypanopeus deressusとRhithropanopeus harrisiiという二種のカニの分析。カニがこのフジツボに寄生されると甲羅の腹の部分の形状が変わるらしく、その分析を行っている。ゾンビの名を冠しているのは、オフィオコルディセプスという真菌に寄生されたアリと同じく、カニを自分たちのいいように操る特徴からだろう。
また、似たようにカニに寄生するフクロムシ(Rhizocephalan barnacle)というフジツボがいる。前述のLoxothylaucus属よりも、こちらのRhizocephalan属の方が有名のようだ。どちらもカニのオスを去勢してメスにする点では同じなのだが。
ジャンルは生物学。
睡眠:脳の回復に欠かせない活動
二件目。
アラート日付:10月17日
原題:Sleep: The Essential Activity That Allows the Brain to Recover
掲載:Brain Fitness
著者:NeuroLaunch editorial team
ジャンル:医学
睡眠による脳の回復を解説する論文。睡眠しないとゾンビみたいになるよね、というただ一言を言うためだけにzombieの単語を使っている。
ジャンルは医学で良いだろう。
ポピュリズムというものが存在するのかという問いの意味についての紹介
三件目。
アラート日付:10月19日
原題:An introduction to what it means to ask whether there is such a thing as populism
掲載:Is There Such a Thing as Populism?
著者:Benjamin Arditi
ジャンル:政治学
うーん、つい先日記事で扱ったばかりだ。ポピュリズムがゾンビアイデアかどうかを議論しようと試みるらしい。
ただ、今回引っ掛かった記事ではポピュリズムがなぜゾンビアイデアになったのかに触れている。
ジャンルは政治学。
ゾンビ流行 - 介入効果のモデル化について
四件目。
アラート日付:10月20日
原題:Zombie Epidemic--on Modeling the Effect of Interventions
掲載:arXiv
著者:Kaisa Ekを筆頭著者として、10名
ジャンル:情報科学
コロナの大流行を受け、"extreme, life-threatening phenomena"(極端で生命を脅かす現象)を事前に研究する必要性を感じたらしく、実在する地域でゾンビパンデミックをシミュレーションする研究。ということで、この論文はゾンビが本当に存在する(と仮定しても矛盾しない)論文である。したがって、この論文をもって今回のアラートチェックは大当たりとする。
実在する地域というのは、今回はフィンランドのウーシマー県。首都というわけでもないから、きっと著者たちがそこの出身なのだろう。ただ、ざっと読んだ感じではモデルを理解することができなかった。まあ、後で読もう…といって今ゾンビ論文が溜まりすぎているのだが。
ジャンルは情報科学。
ナイフ犯罪の段階的廃止に向けた暫定スケジュール
五件目。
アラート日付:10月20日
原題:A preliminary schedule for phasing-out knife crime
掲載:CRIMRXIV
著者:Graham Farrell と Toby Davies
ジャンル:社会学
論文の内容はタイトルの通り。ナイフを使った犯罪を減らすために、とりうる施策のスケジュールを提案している。
zombieの単語は"zombie knife"という文字列で出てくる。意味が論文中に書かれていないが、なんとWikipediaがあった。冒頭を引用しよう。
なお、論文によればゾンビナイフのような殺傷を目的とした武器よりも包丁を使った犯罪の方が多いらしい。そりゃそうでしょ。ゆえに先を丸めた包丁を販売するだけで犯罪頻度がぐっと下がる可能性があるのだとか。
ジャンルは社会学。
検索条件2「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers -narrative」
上記の条件でねらいのゾンビ論文を誤って排除していないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。ただし、ゾンビ企業とゾンビドラッグ、ゾンビ試薬、ゾンビPC、哲学的ゾンビおよび評論系の論文は排除されるように設定してある。
真の人間強化の基準に向けて
アラート日付:10月14日
原題:Towards the Criteria of Genuine Human Enhancement
掲載:このタイトルの本がある
著者:Tatjana Kochetkova
ジャンル:経営学
「-drug」および「-gender」、「-network」、「-philosophical」で排除。アブストラクトを読んでみたが意味が分からなかった。なぜ検索結果に引っ掛かったかも。
起床時の脳の霧:原因、影響、解決策
アラート日付:10月15日
原題:Brain Fog When Waking Up: Causes, Effects, and Solutions
掲載:Brain Fitness
著者:NeuroLaunch editorial team
ジャンル:医学
排除キーワード不明。上記の『睡眠:脳の回復に欠かせない活動』と同じ類の記事。やはり睡眠しないとゾンビみたいになるよね、とただ一言言っているのみ。
理性の力:カントの心の経験的研究
アラート日付:10月20日
原題:The Power of Reason: Kant's Empirical Study of the Mind
掲載:PhilPapers
著者:Christopher Benzenberg
ジャンル:哲学
「-philosophical」で排除。カントの理性がどうのこうの。きっと哲学的ゾンビを扱っているのだろう。
最後に
検索条件1は生物学、医学、政治学、情報科学、社会学が一件ずつだった。そして、ねらいの論文が見つかった。
記事を書いて、二回連続で本物のゾンビを扱った(と仮定しても矛盾しない)論文が見つかった。喜ばしいが、中々時間が取れずに溜まる一方だ。記事をちゃんと作らなければ。
今回はねらいの論文がなかった。