ゾンビ論文の総括(2024年03月)
概要
2024年03月にGoogleスカラーのアラートに次の検索条件を設定して、ゾンビ論文の収集を行った。
「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network」
「zombie -firms -Chalmers -xylazine -biolegend -DDoS」(取りこぼし確認用)
単語の前にハイフンをつけると、その単語を含まない論文を探す検索条件となる。「zombie」でゾンビ論文を探し、「-〇〇」で不要なゾンビを検索結果から排除するというわけだ。各キーワードで排除したゾンビは次の通り。
「-firms」:ゾンビ企業
「-philosophical」「-Chalmers」:哲学的ゾンビ
「-drug」:ゾンビドラッグ
「-network」:情報科学系の論文ならなんでも
「-DDoS」:ゾンビPC
「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬
「-gender」:ジェンダー学系の論文ならなんでも
「-narrative」:ゾンビ映画・小説などの評論
3月中にメインの検索条件に引っかかったゾンビ論文は13本であり、私が探している「本物のゾンビを扱った(と仮定しても矛盾しない)論文」は見つからなかった。
また、4月も同様の検索条件で引き続き論文を確認していく。ただし、検索条件1をメインの検索条件とする。
「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network」
「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers」(取りこぼし確認用)
以下、3月の調査の詳細を記載する。
集計結果
まず、集計結果を示す。
合計で13件のヒット。二月の14件と同等で、平均0.9件/日。ゼロ件の日は六日もあった。件数がここまで減ると論文に目を通すのもとても楽。
ジャンルごとにヒット数を見ると最大でも二件。二件までならば誤差としてあり得るので、これ以上検索条件を調整してヒット数を減らすことは難しいと思われる。それに、これ以上論文チェックを楽にするために排除用検索キーワードを追加すれば、ねらいの論文まで排除してしまうかもしれない。
次に、検索条件ごとのヒット数は次の通り。
取りこぼし確認用である検索条件2は50件。取りこぼし確認用の検索条件は50-60件で推移しているため、普段通り。
3/14に3/27、3/30の検索条件1・2がゼロ件であることから、「なんでゼロ件=アラートが来ていないのにわかるんだよ」というご指摘があるかもしれないが、「zombie」という条件でアラートを設定しているからわかるのだ。これは、たとえ検索条件2でもゾンビ論文を取りこぼしてしまった場合でも、万が一にも論文を逃さないための設定だ。隙を生じぬ二段構えというわけだ。
あるいは、アラートメールが勝手に関連性の高い結果と低い結果を分けて表示してくるため、関連性の低い論文しか通知されていない場合もゼロ件にしている。なぜ関連性の低い論文を取り上げないかというと、中身を確認してねらいの論文でないことを確かめているからである。関連性の高い結果でさえ中々ねらいの論文を提示してくれないのに、関連性の低い論文にかかずらっている暇はない。面白かったら取り上げることもあるが。
また、Googleスカラーのアルゴリズムが変わったのか単にゾンビ論文がたくさん発表されたのかわからないが、今までは火木土の三日がゾンビ論文のお届け曜日だったのだが、3/17(日)を境に月水金土の四日に変わった。最終日などは月水金土日の五日にアラートメールが来ていたのだが、これまでも日曜日に来ることはあったので、そこまで驚くことでもない。これが毎週になると多少大変だ…と言いたいところだが、月に13件程度しか来ないのであればそこまで大変ではないか。
3月の検証結果
検証していたことは特にない。ないと研究が進まないので何か設定しなければならないが…。
3月の新しい学術ゾンビ
3月も新しい学術ゾンビをいくつか得ることができた。リンク先はそれぞれの紹介記事になっているので、意味を知りたければ飛んでいただきたい。
2024/04/06時点で、これらのゾンビワードがどの程度使われているか、つまり各論文の執筆者が適当に作った造語でないかを確認し、各項目の末尾にヒットした件数を記載した。
一応はどれも一義的であり、それなりの使用頻度があるようなので、すべて学術的ゾンビのリストに加えておこう。
ただ、ゾンビデバイスはほぼゾンビPCと同じ意味であるし、ゾンビワームやゾンビ細胞、スクリーンゾンビのヒット件数は真実の値ではない。
まず、ゾンビワームは深海でクジラの骨を漁るオセダックスワームを指すが、「"zombie worm"」の検索結果には"zombie, worm"という間にカンマが入る形のヒットが多くあった。これはウイルスに感染したゾンビPCとワームというマルウェア(悪意のあるソフトウェア)の二つを扱う論文だった。ゆえに、たとえば「"zombie worm" -computer」で検索するとヒット件数は26件まで減る。
次に、スクリーンゾンビは「スマホやPCの画面(=screen)に熱中して社会から孤立した人間」以外にも、映画を意味するscreenと混同されて「映画に登場するゾンビ」を指す場合も多かった。たとえば、映画関連の論文を排除すべく「"Screen Zombie" -film」で検索すると15件しかヒットしない。その15件ですらスクリーンゾンビが同じものを指しているとは限らないのだが。また、過去、スクリーンゾンビと似た概念に「スマホやPCでインターネットやSNSを無心でスクロールし続ける」ことを意味する"zombie scrolling"(ゾンビスクロール)というものを扱ったことがあるので、こちらも併せて学術的ゾンビに加えておこう。
最後にゾンビ細胞だが、上述の通りゾンビ細胞のヒット数は最も多い90件であるものの、今回は細菌がファージに感染して生と死の過渡状態にある状態を指してゾンビ細胞と呼んでいる。論文内で著者がそう定義しているため、過去に同様の論文があるはずがない。ではヒットした90件は何かというと、通常「ゾンビ細胞」と呼ぶとき、それはアポトーシスせずに劣化したままずっと死なない細胞を指す(老化細胞とも呼ばれる)ため、それがほとんどだろう。また、こちらも過去に扱ったことがあるが、「ゾンビ太陽電池」とでも訳すべき"zombie cell"も存在する。ここでいう"cell"が集まって皆が思い浮かべる太陽電池になるのだ。これも追加しておこう。
研究グループは色素増感型太陽電池の研究を行なっており、古くて電解質が乾燥してしまった太陽電池を試験してみたところ、機能していることを発見したという。
4月の検証
4月も引き続き次の2つの検索条件で調査を行う。
「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network」
「zombie -firms -Chalmers -xylazine -biolegend -DDoS」(取りこぼし確認用)
検索条件1のヒット件数が少なくなってきた今、キーワードを追加して検索結果を選定することが難しくなってきた。週に三四件程度では、論文の内容確認に苦労することもない。一方で検索条件2の方は、アブストラクトから概要を把握し、zombieの単語が使われた理由を調査するだけだが、週に10件あるとまあまあ厳しい。ということで、検索条件2も条件1同様にジャンル分けして分析し、減らせるようにキーワードを追加することとする。
以上。