2023/07/06(木)のゾンビ論文 動的密度汎関数理論を組み合わせたSIR/SZRモデル
ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。
アラートの条件は次の通り。
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -viability -gender」(メイン)
「zombie」(取りこぼしがないか確認する目的)
メインの検索条件は次の意図をもって設定してある。
「zombie」:ゾンビ論文を探す
「-firm」:ゾンビ企業を扱う経済学の論文を排除する
「-philosophical」:哲学的ゾンビを扱う哲学の論文を排除する
「-DDoS」:ゾンビPCを扱う情報科学の論文を排除する
「-xylazine」:ゾンビドラッグことキシラジンに関する論文を排除する
「-viability」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬を使う医学の論文を排除する
「-gender」:ジェンダー学の論文を排除する
また、「zombie」の内容も確認するのは、上記の検索キーワードで不必要にゾンビ論文を排除していないかを確かめる目的である。
それぞれのヒット数は以下の通り。
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -viability -gender」四件
「zombie」五件(差分一件)
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -viability -gender」は政治学が二件、分子生物学、感染症学が一件ずつだった。そして、感染症学の論文は私が望むゾンビ論文だった。
検索キーワード「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -viability -gender」
内因性カリモウイルス: 化石、ゾンビ、植物ゲノムに存在する生物
一件目。
原題:Endogenous Caulimovirids: Fossils, Zombies, and Living in Plant Genomes
掲載:Biomolecules
著者:Héléna Vassilieffを筆頭著者として五名
ジャンル:分子生物学
化石、植物ゲノムとタイトルにあるため、明記されていないがゾンビウイルスに関する論文と思われる。
ゾンビウイルスとは、太古の昔に存在していたウイルスがたとえば南極の氷壁に閉じ込められ、氷壁が溶けることで現代社会にばらまかれてゾンビ・パンデミックのような恐ろしい感染症を引き起こす可能性のあるウイルスのことである。
さて、この論文はというと、植物に感染するウイルスのゲノム解析結果(ゲノム配列データ)があり、最近そのデータへのアクセスが増えている、と。その増加傾向からウイルスの進化に対処するための将来の見通しについて述べるものである。
ジャンルは分子生物学。植物学でもよさそうだが、掲載誌のタイトルから、分子生物学とした。
「ロシアの英雄、フランスのゾンビ」:中央アフリカ共和国における大国間の外交的緊張
二件目。
原題:“Russian Heroes, French Zombies”: Diplomatic Tensions Between Great Powers in the Central African Republic
掲載:University of Oregonのリポジトリ
著者:Justin Wickstrand
ジャンル:政治学
ロシアとフランスがアフリカにどのような外交をしてきたかを分析・比較する論文。
どうやらアフリカのどこかの国がロシアやフランスに内政干渉されているらしく、それを暴くためにプロパガンダビデオが作成されているらしい。そのビデオの中にフランス国旗のついたヘルメットをかぶったゾンビが描かれている。また、巨大なコブラのような化け物が街を燃やしている様子も描かれている。相当に嫌われているようだ。
英語の本文を読まないまでも、フランスやロシアを皮肉る風刺画を見るだけでも十分面白い。興味があれば、ぜひ。ジャンルは政治学でよいだろう。
病気の蔓延に対する受動的場の理論と能動的場の理論
三件目。
原題:Passive and active field theories for disease spreading
掲載:arXiveのみ
著者:Michael te Vrugtを筆頭著者として三名
ジャンル:感染症学
SZRモデルに関する論文だ!これをもって今回のアラートチェックは「大当たり」とする。
だがヤバイ。物理分野の中でも私が苦手とする分野のようだ。たとえば、次のように難解な単語が並んでいる。
私は工学出身で、博論執筆時には第一原理計算に大いにお世話になったのだが、いまいち理論計算を信用できずに終わってしまった。ポテンシャルエネルギーの切り方や計算の過程で「操作」を加えて計算を加速するなど、どうにも結果に結びつけるための作為的な前提があるように思えてしまい、物理学に期待していた純粋さが棄損されたように思えたからだ。またソフトマター物理学も、学生時代には視覚的にインパクトのあるものが多かったため、表面だけなぜて何もわからないまま終わってしまった。
論文の解説に戻ると、最も単純なSIRモデルは簡単な微分方程式のみであらわされるのだが、それでは複雑な感染形態を説明することができない。たとえば、ワクチンがあるケースやウイルスの変異など、感染能力に変化がある場合を説明できないのだ。
そこで、本論文では別のモデルを適用してSIRモデルを解析、そしてSZRモデルにも適用する、という内容になっている。そのモデルがソフトマター物理学をベースとしているのだから大変だ。そして、中の数式を見る限り今の私の知識では太刀打ちできないようだ。ラプラス演算子の上にベクトルがあるが、これはいったい…?
きちんと読んでから別途解説したい。
中国における海事司法の透明性指標に関する報告書(2017年)~海事裁判所ウェブサイトにおける情報公開の観点から~
四件目。
原題:Report on Indices of Maritime Judicial Transparency in China (2017)—From the Perspective of Information Disclosure on the Websites of Maritime Courts
掲載:Report on the Rule of Law Index in China
著者:He Tianを筆頭著者として三名
ジャンル:政治学
タイトルの通り、中国の海事裁判所の透明性を調べた報告書。zombieの単語は以下の文に現れる。
「ゾンビ列」という訳が正しいとは思えない。ただおそらく、もともと何かの記事で"zombie columns"が定義されており、それを引いて使っているのだろう。
アブストラクトを読んでも「中国は引き続き徹底的に情報開示せよ」としか書いていないため、内容は実態の紹介とそれに対して「もっと情報開示せよ」と評論していることだろう。
ジャンルは政治学とした。
検索キーワード「zombie」
このキーワードでは「zombie」ゾンビ論文がアラートに入ってくる。誤ってねらいのゾンビ論文を取りこぼしていないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。
ゾンビ: スヌープしないミドルボックス
原題:Zombie: Middleboxes that Don't Snoop
掲載:Cryptology ePrint Archiveのみ
著者:Collin Zhangを筆頭著者として六名
ジャンル:情報科学
「-DDoS」で排除された。タイトルのミドルボックスというのは「通信している 2 つのエンドホスト間のパス上にあるネットワーク内デバイス」のことらしい。なんのことかわからない。
まとめ
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -viability -gender」は政治学が二件、分子生物学、感染症学が一件ずつだった。
私が望むゾンビ論文…SZRモデルに関する論文がついにヒットした。しかし論文中の数式を見る限り、理解するには相当な勉強が必要になる。ただでさえ、手持ちのSZRモデルの論文にわからない数式が多く、理解の途中だというのに。
しかも、このアラートチェックを始めてから大当たりと判定した論文もたまってきている。アラートチェックに時間がかかっているため、論文を読むひまがないのだ。どうにかしてチェックにかかる時間を減らす必要がある。そのためには、取りこぼし確認にかける時間を減らす必要があるだろう。どうすべきか。
とにかく、今日はねらいのゾンビ論文が見つかった。
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