サビアンシンボルから見る、乙女座サインの恒常性
乙女座サインにどんなイメージを抱いていますか?
勤勉で責任感が強く、ちょっと神経質だけど思慮深くて、手先が器用な人が多い……地のサインが持つ現実性、支配星の水星が持つ知性を組み合わせると、そんなイメージになるかと思います。
乙女座サインのサビアンシンボルを見ると、規律によって自分を安定させたいという願望(=安定希求)があちこちに登場します。この規律は乙女座サインにとって外的刺激から自分を守るための手段なのかもしれません。
※この記事は旧ブログで2018年3月に公開されたものを編集しています。
恒常性と乙女座サイン
タイトルにある「恒常性」は「ホメオスタシス」とも呼ばれ、生物が体の状態を一定に保つ働きのことです。生物を取り巻く外的環境は常に変化し、体の内部も変化しています。これらの変化に対して体が安定した状態を保てるよう、調節する能力が備わっています。
変化する要因に合わせて調整機能が働くということは、恒常性は一定の状態を保とう(=元の状態に戻ろう)とするだけでなく、柔軟さも持っています。例えば、急激に痩せると脳の働きによる「現状維持バイアス」によって、体は元の体重に戻ろうとします。しかし、痩せた後の体重を維持できた場合、痩せた後の体重がその人の恒常的な体重となることがあるそうです。恒常性が柔軟に働いた良い例ですね。
乙女座サインは健康と関わりが深いのですが、それは乙女座がケーデントハウスの6ハウスに対応し、自分自身の調整を行う意味合いがあるからだと思います。ケーデントハウスは12サインを4つに分けたグループのそれぞれ最後のハウスであり、サインの柔軟宮と同様、調整の意味を持ちます。
さらに、6ハウスは個人性のハウス(1~6ハウス)と社会性のハウス(7~12ハウス)のちょうど境目にあるので、自分自身の最終調整という意味合いが強まり、その調整の中に健康管理も含まれているのだろうと思います。
自分自身を調整するということは、自分をあるべき状態に保っておくこと。心も体も常に変化し続けている人がいるとしたら、おそらくその人は“自分”が認識できなくなり、崩壊してしまうでしょう。能力や技術面で成長することは変化の一種と言えますが、心や体のように存在そのものに関わっていはいません。自分という存在を認識するためには、心身が一定の状態を保っている必要があります。
規律を重んじる性質
サインの思考や行動の源泉となる2度を見ると、乙女座2度は「A large white cross upraised.(高く掲げられた白い大きな十字架)」です。白い大きな十字架は教会の屋根に取り付けられていることが多いです。upraiseは高く持ち上げるという意味があるので、おそらく教会の屋根に取り付けられた十字架と考えて良いでしょう。
熱心な信者を除き、現代では昔ほど宗教が私たちの生活を支配することは少なくなりました。しかし、宗教が政治と深く結びつき科学もそれほど発達していなかった時代、宗教は人々の心だけでなく生活をも支配し、戒律によって食べ物や普段の過ごし方が定められていました。
十字架(教会の十字架)を象徴として考えた場合、(宗教的な)規律や制限を表していると解釈できます。乙女座2度に示された十字架の象徴的な意味を考えると、乙女座サインの源泉にあるのは、規律に基づいた生き方ということになります。
また、乙女座4度「A colored child playing with white children.(白人の子どもたちと遊ぶ1人の有色人種の子ども)」、乙女座7度「A harem.(ハーレム)」にも、人種的な区別や男女の区別が表れています。乙女座4度は“人種的偏見をなくした親密な状態”という意味で解釈されることが多いのですが、有色人種の子どもが1人しかいないことを考えると、乙女座4度に登場する子どもたちが置かれている状況は、人種差別の影響を受けていると推測できます。サビアンシンボルが生まれた1920年代、アメリカの一部地域ではまだ人種差別が根強く残っていたからです。
誤解のないように補足しますと、乙女座サインが人種差別をするという意味ではありません。あくまでも規律(間違った規律ですが……)を象徴するサビアンシンボルとして、「A colored child playing with white children.」が提示されているということです。
周期的なリズム
人間の体内には生体リズムを作り出す体内時計(サーカディアンリズム)が存在し、恒常性と並んで生体機能を調節する2大システムとして知られています。生体機能は体内時計の指示に従って約25時間周期で働き、1日は24時間ですが、外的刺激によって1時間のズレを調整しているそうです。
乙女座サインが恒常性と関連があるとしたら、リズムとの関連はどうでしょうか?探してみると、乙女座8度「First dancing instruction.(最初のダンスの指導)」がリズムと関連していそうです。8度はサインの性質が集約された状態です。
1920年代という時代を考えると、乙女座8度で踊られているダンスの種類はワルツ、タップダンス、チャールストンあたりかもしれません。“最初の”と限定しているので、おそらくリズムの指導なのでしょう。ダンスは種類によって固有のリズムがあり、リズムとステップはセットになっているので、リズムがとれないとステップが踏めません。
生活リズムが崩れると心身に不調が表れることがあるように、乙女座サインも象徴的な意味において、ある種のリズムやルーチンを必要とするのかもしれませんね。
規律やリズムが崩れた時
人間の体に備わった恒常性が常に働いているように、乙女座サインも常に外的要因による自分への影響を分析・管理しようとします。それは自分自身を一定の状態に保とうとする心の働き、安定希求によるものです。
要するに“心配性”なのですね。
人間は強い緊張や不安を感じると交感神経が興奮状態になり、自律神経のバランスが崩れてしまいます。乙女座13度「A strong hand supplanting political hysteria.(政治的な興奮状態を押しのける強い手)」には、強い政治家が登場して働いてヒステリー状態を収めようとする様子が示されています。13度はこれまでのやり方を見直す度数です。
また、乙女座17度「A volcano in eruption.(噴火している火山)」も緊張状態が極度に達した状態を表しており、乙女座サインの規律性や分析性がネガティブな方向で働くと、自身の内部に爆発的なエネルギーをため込んでしまう可能性を示唆しています。
変化への対応
乙女座サインのサビアンシンボルは、15度前後から新たな能力の発見や弱さの克服など、自分自身の内面と格闘するような場面が展開されます。しかし、それはなかなか容易な作業ではありません。最初の方でご説明した「現状維持バイアス」の働きもあり、心理的な面で新しい自分を作り出すことは、なかなか難しいのです。それまでの状態、つまり今日までの自分を否定することになるからです。
乙女座サインが本当の意味で新しい自分を作り出すには、境界を越えなければなりません。
それが7番目のサイン、天秤座から始まります。
image photo : by swooshed(pixabay)
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