ラジオ品川『クリス米村のGO!GO!レインボー!』→#失って気づく話
「こんばんは、クリス米村です。
今、オレはラジオ局で話してるわけだけど、正直に言うと、しゃべりたくない。
もちろん、仕事だってことはわかってる。
だけど、ショックが大き過ぎて。
なんていうかな。
失ってはじめて、わかるものってあるよな。
あって当然だと思ってたものが、なくなるんだ。
目の前から、忽然と消える。
ショックだよ。
いくら探しても、ないんだ。
そんで、気づく。
それが自分の心の中で、どれほど大きい部分を占めていたかを。
人間関係なんて、まさにそれだ。
今まで、いて当然だと思ってたヤツが、ある日、突然いなくなる。
理由はいろいろあると思う。
退職するとか、転勤するとか、担当が変わるとか。
2年前か。
こんなことがあった。
ずっとオレの髪を担当してるスタイリストがいたんだ。
髪をいい感じにしてくれるし、話してても楽しいから、いつもそいつを指名してた。
向こうも、オレに感謝してるみたいで。
それに、あれだ。
クリス米村の髪を切ってるって宣伝すれば、めちゃめちゃもうかるのに、そいつはそうしなかった。
今までオレを利用しようとするヤツばっかりだったから、逆に新鮮で。
プライベートでも会ったり、人を紹介したりしてたんだ。
そいつの憧れの人間何人かに、会わせてやったりもした。
そりゃ、感謝されるよね。
で、まあ、そのスタイリストの話じゃないんだ。
そいつにアシスタントの男の子がついてて。
20歳ぐらいかな。
髪をピンクに染めて、服もなんかピエロみたいな、派手な格好して。
やたら人なつっこくて、どんどんオレに話しかけてくるんだ。
そういうの苦手でさ。
こいつはなんなんだ、と思って、割と冷たくあしらってたんだ。
しゃべり方も、生意気そうな感じだし。
あー、クリスさん、さすがスターっすね、みたいな。
オレは一回、怒鳴ったことがある。
スターじゃない、スーパースターだろ、って。
よく考えると、あの言い方は失敗だった。
オレは笑わせようとしたんだ。
自分で自分をスーパースターって言ったらダメじゃないですか、って注意してくれると思ったんだ。
ところが、周りもそいつも、黙っちゃって。
オレが自分のことをスーパースターって思ってる、ってなったかもしれない。
まあ、いいけど。
とにかく、そんなふうにいろいろ目障りな点はあったんだけど、本当に気が利くアシスタントでさ。
たとえば、オレは髪を切られてるときに、上の服を脱ぐんだ。
上半身、裸になる。
ちょっと変だけど、切った髪が服について、チクチクするのがイヤで。
それまでは、脱いだ服をそこらの椅子にかけてたんだ。
そしたらある日、そのアシスタントが銭湯にあるようなカゴを持ってきて、この中に入れてください、って言うんだ。
マジ、びっくりしてさ。
なんかおもしろいだろ。
気が利くっていうか、ユーモアがあるっていうか。
別に金もたいしてかかってないし。
そのうちお返しをあげようと思ってた。
なにをあげるかは決めてなかったんだけど。
すると、この前だよ。
ピンク髪だったそいつが、黒く染めて、分け目をきっちりつけてるんだ。
びっくりした。
理由を聞いたら、学校の先生になるって言うんだ。
小学校の先生に。
えー、って驚いて。
先生になるのはいいんだ。
すばらしい職業だしね。
だけど、それならもっと早くにお返しをあげればよかった、ってすごく後悔したんだ。
その日がアシスタント最後の日だっていうから、オレの使ってるバッグをあげた。
いい値段のするバッグだし、オレがサインしたから、かなり価値はあると思う。
大事に使うんじゃないかな。
いや、大事にしすぎて、使えないかも。
だけど、ありあわせのプレゼントになっちゃった。
申し訳なくて。
アシスタントとして、一緒にいるときに、もっといろいろしたやればよかったって。
後悔してる。
ふと思い出してさ。
失ってから、気づくのさ。
なんでこんな話をしたのか、って?
いや、今日も、またなくしたんだよ。
ブラックサンダーの新しいのを買ってたんだけど。
チョコのやつ。
パリパリしてて、おいしいんだよな。
どこで落としたのかなあ。
新味だってさ。
楽しみにしてたのに。
失ってから、気づくのさ。
どんなに楽しみにしてたか。
ブースに持ちこまなかったけ?
まあ、いいや。
曲にいこう。
曲が流れてる間に、買ってきてもらうよ。
長めの曲だから、ちょうどいい。
聴いてくれ。
『あった、あった、ポケットに入ってた』」
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教訓👉うっかりさん。
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