超セレブだらけ(?)の謎パーティに潜入!蝋人形館「マダム・タッソー 東京」
■超セレブが……
世界中の有名人が集まるパーティが日本で開かれているという。
招待客はハリウッド俳優をはじめ、政治家、スポーツ選手、アーティスト、日本のハイクラス芸能人など。つまりセレブのみ。
主催者は外国人らしいが、どうしてそんなにVIPが集まるのか?
強い興味をそそられた私は、英会話を覚えなおしたうえでーー心のこもった会話は翻訳アプリではムリだーー会場へ向かった。
だが、きらびやかなフロアにいたのは、「本物」じゃないほうの「セレブ」たち。
完全にダマされた。読者が同じあやまちをくりかえさないよう、一部始終をレポートする。
■パーティ会場は、お台場デックス東京ビーチ3階
ある筋から事前に聞いていたのは、セレブが大集合しているということ。「セレブ」といっても、加工しすぎて実物とかけはなれてしまったインフルエンサーではなく、世界中の誰もが知る有名人、「超セレブ」。
いつ来日したのか? 過密なスケジュールを調整したのか? そんな「超セレブ」たちを集める主催者とは、いったい何者なのか?
パーティの格式の高さを表すかのように、会場の受付はこの人物だった。
世界の歌姫”レディー・ガガ”が参加者をチェックしているなんて。
こんな近くに寄れるチャンスは二度とないだろう。私はたどたどしい英語で話しかけた。
私「お会いできて、光栄です! ひょっとして極秘の来日でしょうか? あなたの衝撃的なパフォーマンスは、今でも私の記憶に……」
無視された。
どういうことだろう? 私のあやふやな英語では伝わらなかったのか? それとも一般人は相手にしないのか? 「リトル・モンスター(ガガのファンを指す)」を大事にする彼女らしくもない。
だが彼女の静かなオーラは、私にそれ以上の質問を許さなかった。頭に疑問符をつけたまま、私は奥へ進む。
メイン会場は6階らしい。エレベーターへ乗りこむ。すると中に……
アクション映画の金字塔『ダイ・ハード』の主役がいた!
一瞬、舞い上がりそうになるが、落ちついて状況を把握しようとつとめる。今は狭いエレベーター内。密な空間に2人。要注意だ。
私はブルースを安心させようと、自分が平熱であることを伝える。そのうえで、失礼を承知でチェックさせてもらった。
彼も平熱のようだ。
しかし、ブルースの額にふれたのは失敗だったかもしれない。握手してほしいと紳士的にお願いしたのだが、応じてもらえなかった。
パーティ会場はあちらか。
なんてはなやかなんだ! 美女が4人も! 英語にもだいぶなれてきたし、勇気を出して話しかけてみよう。
私「はじめまして、ジュリア。『ジュリア』と呼んでもいいですか? 今回の来日は新作映画のプロモーションでしょうか?」
苦笑いされた。
その後も懸命に話しかけたものの、彼女の反応は薄い。
確かに私はただの一般人。しかし、こんな扱いがあっていいのか? これまでのところ、全員に無視されている! だんだん怒りがましてきた私は、つい我を忘れてしまった。
くつろいでいる男性のところへつかつかと歩みより……
私「おい、このパーティはなんだ? 一般人を無視するきまりでもあるのか? 主催者の考えを聞きたい! 今すぐここへ呼べ!」
胸ぐらをつかんでから、相手があの名優“ジョージ・クルーニー”だとわかった。
あわてて謝罪。
私「アイム・ソーリー」
さすがジョージ。大人の余裕にあふれている。
こんな対応をされると、かえってこちらがいたたまれない。私は逃げるように離れた。
やってしまった。しっぽを巻いて退散したい気分だが、このパーティの主催者をつきとめずに帰るわけにはいかない。
なんとか探し出し、パーティの目的を暴いてやる。居場所を教えてくれそうな人はいないだろうか?
あの人はどうだろう? ラフな格好をした高齢男性。いかにも話しやすそうだ。
私「こんにちは。このパーティの主催者をご存じないでしょうか? パーティの目的というか、セレブをたくさん集めて何をする……あれ、頭にゴミがついてますよ」
にらまれた。
こっちとしては、親切のつもりだったのだが。
優しそうな外見なのに、いったん怒り出すと手がつけられなくなる老人がいる。そのタイプかも。
さわらぬ神にたたりなしとばかり、私は急いで移動した。
会場内をウロウロする私が不審者に見えたのかもしれない、いつのまにか背後に大男。
こいつはヤバい! 全身から殺気を放っている!
身の危険を感じ、思わずパンチ!
キ、キいてない! こいつ、バケモノか! 逃げろ!
よかった。追ってはこないようだ。
だが要注意人物として、完全に指名手配されてしまった。その証拠に、隅のモニターに私のこんな写真が。
いつの間に撮った? ※記念フォト(1枚500円、税込)
絶体絶命。もう逃げようがない。
膝をガックリついた私の顔に、ぼやっとしたライトがさした。ふとそちらを見る。
え……
あれは?
まさか?
マイケル!
舞い上がるなというほうがムリ。
私「ああ、信じられない。あなたに会えるなんて! まるで夢でも見てるようだ。どうか……どうか……友達になってくれませんか?……」
自分でもそんな言葉が口から出るとは思わなかった。”キング・オブ・ポップ”に「友達になってくれ」なんて!
だが、奇跡が起こった!
はずかしそうにうつむきながらも、マイケルは私と友情のちぎりをかわしてくれた。
それだけじゃない。主催者が見つからなくて困っている私の心を読みとったのだろう、その居場所まで教えてくれた。
私「あっちですね! ありがとう、マイケル!」
マイケルがことのほかシャイという噂は本当だった。一度も目を合わせてくれなかった。でも、なんてすばらしい人だ!
■ついに主催者(?)を発見
マイケルの指す方向へ進むと、メイクルームが。
さっきまで誰かがいた気配。
椅子の背に「マダム・タッソー」の文字。
そうか、わかったぞ!
会場外の看板に書かれていた「Madame Tussauds(マダム・タッソー)」とは主催者の名前だったのか。こんな簡単なことに気づかなかったなんて。
「マダム」というからには、女性に違いない。私は会場を見回した。
あの女性だろうか。座って、パーティ全体を眺めている様子は、いかにも主催者然としている。
私「あの、すみません。ひょっとして……あなたがマダム・タッソーですか? いくつか質問したいことがありまして」
ダメだ。話を聞いてない。
しかし、考えてみれば、「マダム・タッソー」だ。日本人のわけがない。
私はもう一度、あたりをつぶさに見てみた。
※一部閲覧注意
奇妙だ。
セレブたちの中に1人だけ、地味な服装をした白髪の女性がいる。
私「あなたが……マダム・タッソーですか?」
私は息をのんだ。
この女性の悲し気な、乾いた瞳を見たとき、理解した。
ここにいる「セレブ」たちはすべて、彼女の作り出した傑作であることを。たぐいまれな技術によって、世界に生みおとされた人形であることを。
そしてまた、彼女自身も人形であることを。
ありがとう、マダム。楽しかったです。
※かなり脚色してます。念のため。
*ほかにもいた"セレブ"のごく一部
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