有吉さんは悪くない
年末、珍しく子どもが早く寝たので紅白歌合戦を見ていた。こんなにじっくりリアルタイムで見るのはいつぶりだろう。
去年の紅白歌合戦のテーマは『LOVE&PEACE-みんなでシェア!-』だったらしい。中盤になってもその意図を全くつかめないまま、後半に突入したところで、純烈(ダチョウ倶楽部・有吉弘行)の番がやってきた。
どこかの番組で、有吉さんは、僕はもう絶対に『白い雲のように』は歌わないよ、と言っていたのに、水色のキラキラしたスーツを着て、舞台に立っている。なんてったって、この『白い雲のように』は100万枚以上売れた、伝説の歌なのである。視聴率獲得に悩む紅白歌合戦にとっては、貴重な存在である。
でも、有吉さんは、そんな制作側のお願いぐらいでこの舞台には出てこないだろうなと思った。色んな事情があり、最終的にはひっぱりだされているのだろうけど、そのキーとなるのはダチョウ倶楽部の上島竜平さんなんだと誰でもわかるはず。去年5月になくなった上島さんの所属したダチョウ倶楽部が出るから、そのメンバーに誘われたから、一緒に出ている。
歌が始まって、なんだやっぱり今回のテーマは『LOVE&PEACE』じゃないか、とビール片手に妙に納得していた。舞台の上で客席に向かって「上島さん!」と呼びかける有吉さんも、感動的だとその時は思っていた。
でも、番組が終わって、酔いも醒めてきたら、違和感が湧き上がってきた。歌わないよと言ってる人を無理やり舞台にあげて、全世界放送の最中に、自害したと思われる故人の名前を絶叫させるなんて。狂気じみている。『LOVE&PEACE』なんてものはこの番組には存在しない!
すっかり番組のほのぼのした感じに乗せられて、上っ面の『LOVE&PEACE』につかまるところだった。冷蔵庫の中から日本酒の瓶を取り出して、そのまま飲み干した。今年の酒は今年のうちに。すっかり冷えきってしまった体をあたためようとブランケットを探しているうちに、年が明けた。
民放にチャンネルを切り替えて、ソファでゴロゴロしているうちに寝てしまっていたらしい。朝になり、爆笑ヒットパレードという番組が始まっていた。新婚と紹介された西野未姫さんが「愛してます」といっていた。漫才を披露した南海キャンディーズもネタ中に「愛してます」と言っていた。世間的にはこのワードが強いらしい。でも私は、一瞬でも有吉さんの発言含め、存在が感動的だと思った自分の感性にショックを受け、どんよりした気持ちでいて、全く受け入れられなかった。「愛してます」も言葉にするとなんでこんな陳腐になるんだろう。そっと胸にしまっておくべきワード第一位じゃんね、と思いながら、起きてみたら母親がいなくて泣きじゃくる子どもを早々に抱き上げたのだった。
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