ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #7(ザ・マッカラン 12年)
『ザ・高嶺の花』
彼女は、家柄がよく、
教育熱心な家庭ではあったけれど、
あたたかく、恵まれた環境で育った。
自らすすんで人前に立ちたがるようなタイプではなかったけれど、人柄の良さと優秀な成績が相まって、中学では生徒会長を任せられていた。
文武両道とはまさに彼女を形容するための言葉で、弓道の全国大会では賞を取るほどである。
合唱コンクールでは、
ピアノの伴奏者をしていた。
とりまきの男たちからすれば、
まさに高嶺の花。
ここまで完璧に何事もこなされると、
もはや自分のどこをアピールすればよいのかと頭を抱えるほどである。
高校は有名私立に進学して、
そこでは彼女に告白をする男も何人かいた。
中には、教室でいきなり花束を渡す男もいたが、あえなく撃沈して校内の話題になっていた。
OKを出さない理由は、よくよく聞いてみると
どうやら父親からの恋愛禁止令が出ているらしい。
どこの馬の骨かもわからない高校生と付き合わせるわけにはいかない、というのが父親の主張とのこと。
たしかに、これだけよく出来た娘には、
それ相応のひとと巡り合わせたいという父親の願いはよくわかる。
家柄のよい家庭特有の窮屈さというのだろうか、まさに「箱入り娘」の典型のようだ。
このようにして、彼女は大学に入ってからも、
しばらくの間、無垢を貫いた。
そんな彼女にも、20歳になって最初の春に、彼氏ができた。
周りからは、いったいどこの御曹司と付き合うのか、とか、きっと相手は弁護士か、医者だろう、といったさまざまな憶測が飛び交っていた。
が、付き合った最初の男性は、同級生の至って普通の大学生にみえた。
仲良く手を繋いで歩くような感じではなかったけれど、二人でいるときはよく笑っていた。
デートでは、映画や水族館、遊園地など、
まさに王道コースであった。
やはり気になるのが、「夜」を経験したかどうかという点だろう。
(これは筆者としても、非常に気になるところ)
そして、それについては、同年の秋に、お相手の家で無事完了なさったとのこと。
(ほんとうは初夜の様子を存分に描写したいのだが、なぜか、彼女に対しては恐れ多く感じてしまう。箱入りバリアがここまで強力だとは)
男と付き合い、「すること」をしっかり経験してもからも、彼女の完全性は崩れることがなく、一切汚れのないステータスは確固として維持されていた。
このあたりは、育ちの良さや環境によるものだけでなく、「彼女本人の素質」なるものが優れていたためであろう。
彼女がこれからどんな人と出会い、
どのように人生を経験していくのか、
非常に興味深い点である。
P.S.
ここからさらに7年ほど経って、
今度は僕と付き合う、につづく。(えっ)
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王道って、存在する。
ザ・マッカラン 12年。
《オマケ》
とらやの羊羹に、「夜の梅」というのがあります。
これとマッカランの組み合わせがとてもよいのでおすすめです。