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ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #16(グレンファークラス 25年)

『それは、形がわからないほどにやわらかい。』



物を掴もうとするとき、境界となる固さがあるからこそ、それを掴むことができる。

すなわち物理的な形とは、「固さ」によって知覚できるといってもよい。

では、究極にやわらかいものがあったなら、それを掴むことができるだろうか。

おそらく、掴むという感覚を失ってしまうだろう。

まるで水を掴もうとするように、触れていること自体はわかるのに、どうしても掴むことができないという不思議な感覚だ。



彼女に触れるときも、そういう感覚に陥る。

体温は感じるのに、その形状を測ることができない。

隔たりはあるのに、境界線を掴めない。

欲望はあるのに、圧力がない。

まるで、熱帯魚のひれのようだ。

そのくらいにやわらかく、じんわりと沁み込んできて、知覚をすり抜けてゆく。



女性は、年を重ねていくごとに粘度を失って、水のようにさらっとしてくる。

溜め込んでいたものを放出し切って、澄んだ泉となる。

そういう種類の美を、この女性から感じることができる。


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あたたかい水に触れる。
グレンファークラス 25年。

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