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ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #14(ポートエレン)

『その羽根は、折れてもなお飛び立つ』


バレエにおいてもっとも重要なのが、バランス感覚である。

彼女の優れたバランス感覚は観客を魅了するだけの演技力を裏付けており、彼女の長い手足はバレエに向いた体躯をしている。

彼女は、天性のバレリーナであった。



若い頃の彼女は、まさにスワンのようだった。

しなやかで洗練された動きは、息を呑む美しさがある。

彼女をとり巻く老若男女の熱狂的なファンは、こぞって花束をプレゼントした。

いっぱいの花束を抱え、笑顔でファンに挨拶する様子は記憶に新しい。



その日は突然にやってきた。

なんと本番中のアクシデントで脚を痛めてしまい、舞台を降りることとなったのである。

『復帰未定』の4文字。

ファンは彼女の降壇を深く悲しんだ。

誰もが彼女の不幸を哀れんだ。



しかし一転して、彼女は安堵しているようだった。

注目を浴びることに慣れてしまっていたが、そのスポットライトは実は彼女を縛っていた。

正しく生きることは、ある種、人の理想を生きるということである。

それは、もともと彼女の使命とされてきたことだ。

ただ、それは彼女が望んだことではなかったのかもしれない。

一種の呪縛から解き放たれるように自由の身になった彼女は、その機会を人生の転機とした。



姿勢のきれいな女性は美しい。

歳を重ねた彼女は、若き頃のバランス感覚をいまも変わらず身に宿していて、遠くからでも歩く姿だけで彼女を判別できるほどだ。

生活における動きひとつ取っても、その洗練されたるや、彼女の才能と言わざるを得ない。

まるで百合のような佇まいである。



女性の身体は歳を重ねるごとにハリを失うが、それと引き換えに特有のやわらかさを得る。

触れるとやわらかに沈み込み、相手を包み込むように許容する。

こうした身体の変化は、バレリーナにとって好ましいものではない。
しかし、これは彼女の「女性」としての魅力を上げていった。

女性というのは、なにかと反比例な生き物である。



バレリーナとしての人生が終わってから、
彼女の「女性」としての人生が始まった。


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外側に光を放つダイヤモンドと、内側に光を宿す真珠。
ポートエレン カスクストレングス 3rdリリース。

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