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ウイスキーを女性に喩えるシリーズ #13(キルホーマン)

『美しく蒼き風』


ある夫婦が、新天地に引っ越してきた。

その場所というのは上品かつ独特な雰囲気の漂う一帯であり、気高く、伝統ある屋敷が身を連ねているため、新参者にとってはたいそう居心地がわるく、肩身の狭い思いをするのが大概というところ。

しかし、その夫婦は違った。

若い夫婦であったが、その二人の品行方正は他を真正面から認めさせるだけの輝きがあり、かつ、妬みを買うような嫌味もない。

事業家である夫は外交に長け、周囲を引き込む能力がある。
もちろん資産も潤沢である。

それを支える妻は、美しく、品のある佇まい、かつ美的センスを備えており、その一帯で前提とされる華道や茶道といった伝統的な教養はすでに心得ているという。

どこを叩いても埃ひとつ出ないような、美しく蒼き夫婦であった。



ある日、その夫婦は新しい生命を授かった。

深い森に佇む泉にように美しい娘である。

両親からの愛情をうけて、まっすぐに育ったその娘は、その一帯の人々にも可愛がられた。

母親譲りの美的センスは、華道の先生を驚かせたほどである。



審美眼というものは、正しき教養の具現化である。

美しいものを美しいと感じられることは、その人格を形成する上でとても重要な要素だ。

娘は、その素養にも優れていた。



数年が過ぎ、その娘は美しい女性となった。

今年から、西洋文化を学びにフランスへ留学するとのこと。

興味深いのが、パリやリヨンといった都市ではなく、ボルドー地区の一角にある小さな村を選んだことだった。

ガロンヌ川の大流にシロン川の冷たい水が流れこむことで、その土地は多くの日が霧に覆われており、その特殊な気候からこの地は世界的に有名な貴腐ワインの産地である。


伝統という言葉は、国によってそのニュアンスが大きく異なる。

内面の美の概念が異なれば、それを反映させる外面も違った趣になる。

これまで学んできた「奥ゆかしさ」とはまた別の「深み」があり、彼女はそれをぐんぐんと吸収していった。

永く続いてきた文化というのは、風化しないだけの魅力と、普遍的な真理を内包している。




この親子たちがこれからどういう人生を歩んでいくか、これからも見守っていきたい。


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美しく蒼き風が、世界を吹き抜ける。
キルホーマン マキヤーベイ。

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永き伝統に、橋を架けよう。
キルホーマン ソーテルヌカスク。

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