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アウトプットの重要性と効果的な話し方
皆様、こんにちは。焼鯖通信です。
今週は、アウトプットの重要性と効果的な話し方をトピックにしたいと思います。
【アウトプットとは?】
アウトプットの対義語はインプットです。インプットとは、読む、覚えるなど、知識を脳に取り込む行為を指します。それに対してアウトプットは、脳に取り込んだ知識をもとに話す、教える、書く、行動するなどの行為を指します。感情を表現することも、アウトプットに含まれます。
では、なぜアウトプットの方が重要なのでしょうか? 書いたり話したりする行為は、筋肉のような運動神経を使います。このように運動神経を使って得た記憶は「運動性記憶」と呼ばれます。運動神経を使って得た知識は、小脳を経て海馬を通り、大脳連合野に蓄積されます。この過程で経路が複雑になり、多くの神経細胞が働くため、記憶が定着しやすくなるのです。自転車の乗り方や泳ぎ方を一度覚えたら忘れにくいのは、このメカニズムによるものです。
一方、本を読んで覚える暗記は「意味記憶」と呼ばれ、こちらは覚えにくく、簡単に忘れてしまいます。数学の公式や英単語を授業だけで覚えるのが難しいのはこのためです。テスト前に声に出して覚えたり、書いたりするのは、記憶を定着させるためのアウトプットの一例です。
さらに、覚えた内容を2週間以内に3回アウトプットすると、記憶の定着がさらに効果的です。海馬は記憶に関わる脳の器官であり、仮保存の場所として働きます。しかし、海馬は2〜4週間しか記憶を保持しません。これを活用するために、覚えた情報を3回アウトプットすることで、脳がそれを重要な情報と認識し、側頭葉に長期記憶として定着させるのです。情報をお金、海馬をレジ、側頭葉を金庫に例えると、分かりやすいでしょう。なお、インプットとアウトプットの黄金比は3:7とされています。
インプットするだけでも知識は増え、脳内の世界を変えることができます。しかし、アウトプットしなければその知識は結局、自己満足で終わってしまいます。インプットで学んだ内容をアウトプットすることで、自分自身の行動や習慣が変わり、他人からの評価が得られるようになります。それが現実世界を変えていくのです。つまり、自己実現に繋がるのです。だからこそ、インプットよりもアウトプットが重要なのです。
① 長く、たくさん話す必要はない
アウトプットの代表例の一つが「話す」です。近況報告などの些細なことを話すことも立派なアウトプットです。皆さんも雑談に困った経験があるかもしれません。「何を話せば良いのか?」、「どれくらい話せば良いのか?」など。
しかし、これらはあまり重要ではありません。心理学の「ザイオンス効果(単純接触効果)」をご存じでしょうか? これは、接触回数が多いほど人の好感度が高くなるという効果です。雑談は、関係性を築くための手段に過ぎません。天気やプライベートのことを話すのも良いのです。重要なのは、話す内容や時間ではなく、接触回数です。信頼関係を築きたいのであれば、まずはたくさん話しましょう。
② 悪口はネガティブ人生の始まり
「話すこと」の有効性を伝えていますが、悪口は逆効果です。悪口やネガティブな言葉を話すと、一見ストレス発散になりますが、実はコルチゾールというストレスホルモンが増加します。
東フィンランド大学の研究によると、
他人を批判したり意地悪する人は、そうでない人に比べて認知症のリスクが3倍高い
ことが証明されています。
悪口もアウトプットの一種ですが、例えば居酒屋で「上司が嫌い」と言うことは、脳がその上司を嫌な存在だと記憶してしまうことになります。また、悪口が習慣化すると、脳は悪いところを探すように学習してしまいます。百害あって一利なしですから、ポジティブな内容を話すよう心がけましょう。
③ 緊張を味方につけよう!
プレゼンテーションなどで緊張することはよくあります。私もその例外ではありません。発表の直前に「緊張してきた、どうしよう?」という感情に支配されることもあります。
しかし、緊張して当然であり、むしろ適度な緊張はパフォーマンスを上げます。1908年、ヤーキーズとドットソン博士による実験では、マウスに黒と白を区別させる際、適度なストレス(電気ショック)を与えた方が学習速度が速く、強すぎるストレスは学習速度を低下させることが分かりました。つまり、適度な緊張は生産性を上げるのです。
アスリートの中には緊張を楽しむ感覚を持っている方もおり、その感覚を味方につけることで最大限のパフォーマンスを引き出しています。緊張を負の感情と考えず、「パフォーマンスが上がってきた」と思うようにすると、緊張は良い味方になってくれるでしょう。
④ 相談しよう!そうしよう!
日本人は、私も含めて相談することが苦手です。日本には「恥をかくこと」を嫌う文化があるため、相談=弱みを見せる=恥だと捉えがちです。
しかし、誰かに相談することで、相手から対処法を示されたり、悩みを吐き出すことで頭の中が整理され、解決策が見えてくることがあります。このプロセスだけでも、悩みという負の感情をコントロールできる可能性があり、ポジティブな方向に働きます。また、負の感情は吐き出すと小さくなり、逆に溜め込むと大きくなるという話を聞いたことがあるかもしれません。
普段から信頼できる人と繋がっておくことが大切です。信頼できる人が5人いれば十分です。それ以上の人数になると、薄い繋がりになり効果が薄くなります。
⑤ 「褒めて伸ばす」ことは理に適っている!?
日本人は、効果的に褒めることが苦手です。近年、「褒めて伸ばす」という風潮が広まっていますが、これは単に褒めるだけでなく、間違っていることに対して正しく叱ることが必要です。しかし、日本では「褒める」ことだけが強調されてしまい、ただ褒めることが推奨される傾向にあります。実際、「褒めて伸ばす」ことは間違っていません。効果的な褒め方、叱り方を紹介します。
《効果的な褒め方》
・強化したい行動を褒める。
・結果だけでなく過程も褒める。
・会社や組織に貢献したことを伝え、承認欲求を満たす。
・形に残る文章(例:ほめカード)で褒める。
《効果的な叱り方》
・自己成長を促す視点で接する。
・感情をぶつけず、冷静に伝える。
・失敗の原因や対策を一緒に考え、修正方法をフィードバック。
⑥ 謝ることで評価が上がる!?
謝ることで、「自尊心が傷つく」「評価が下がるのではないか」と思っていませんか?
しかし、
「被検者に助手をつけ、助手はわざと失敗する。被検者は実験者から低評価を受ける。その後の助手に態度で、被験者の評価がどうなるか?」
という心理実験において、助手が謝ったグループが、実験者から被検者への評価が高くなりました。
このことから、謝ることは、寧ろ評価を上げること場合があります。ミスを犯した際、逆ギレしたり他人を責めたりせず、誠実に謝罪し、改善策を示すことで、相手からの信頼が回復し、結果的に適切なフィードバックを受けられ、自己成長に繋がるのです。
今週は、ここまでです。次回は2/14(金)の投稿でお会いしましょう。「アウトプットにおける効果的な書き方」というタイトルでお送りする予定です。では、また👋
・参考文献:
①『学びを結果に変える アウトプット大全』(サンクチュアリ出版・樺沢紫苑著)