「ザ・ポートレイト・オブ・オトムネ・ドロウン・バイ・ジェラート」あとがき
あとがき自体は一応冊子中に書いてはいるんですが、徹夜明け脱稿直後午前6時に眠い目擦って書いたあとがきが良いものかと言われるとそうでもなく、というか読んだ方はわかると思うんですがなんか喧嘩腰なんですよね。ふざけんな。というわけでどっかで内容のまとめをしたいな〜と思っていたらからすまさんに先を越されたので書いていきます。あと在庫まだまだありますので欲しい方がもしいれば冬コミに準新刊として持っていく予定のほか、DMなどに連絡いただければ対応する予定です。
全体のあらすじ
木になってしまう紅茶、木になるティーを飲んでしまった梢は、蓮ノ空の校舎をも貫く巨木になった。花帆と慈の手によって木の中から救出された梢だったが、なんとその体には時限爆弾が取り付けられていた。梢は蓮ノ空と部員たちを守るため、巨木のうろの中で爆発を抑え込むことを決意。そのへんにあった石ころでうろに蓋をし、梢は壮絶な爆死を遂げる。失意に暮れる花帆だったが、慈の発破によってライブで彼女を弔うことを決意。曲は「ハッピー至上主義!」。ライブのさなか梢に想いを馳せる2人だったが、なんと梢が息を吹き返し2人に銃撃で襲いかかってきた!梢は蓋に使った「石」と爆発による「煙」、「木」の焼失、そして目の前でかほめぐを見せつけられた怒りによって「硝煙」を纏い、ヤクザとして復活したのだった…
というのが大体の概要です。
シナリオの解説と経緯
もふちさんから合同サークルのお話をいただいた段階で「梢で何かやろう」ということだったので、当初から乙宗梢を主人公とする予定だったのですが、これがまた何をすれば面白くなるのか難航しまして、梢ほどどこ持ち上げてもおもろい女はそうそうおらんだろ、と皆さん言いたいかもしれませんが、例えば筋肉、機械さん、画伯、みたいなみんながやっているネタ、あからさまなツッコミどころは使いたくなかったんですよね。みんなと同じなのは嫌だから。彼女の本質を抉り出していくような話にできればと考え、シナリオを作っていきました。
乙宗梢の本質とは何か?という問いに対してもかなり難航して、悩んでいた時に「木になる」という考えが浮かびました。ここは特に思考回路とかはなく、脳内細胞がスパークを起こした結果です。前のスク水の時も同様ですが、全く由来がないものの説明は難儀しますね。最初は木の前で花帆と慈が「梢はどういう人間か」を話し合い悩み合う(という名の漫才)という、今悩んでいる自分をメタファーとして落とし込んだ作品にする予定でした。表紙はこの段階でラフを描いていて、花帆がツッコミ、慈がボケの予定だったので完全に名残が残っていますが、本文を描き終わった段階で描き直す余裕がなかったので使いまわしています。本文でめぐはツッコミ花帆がボケなので表紙詐欺です。そのままだとかほめぐ漫画になっちゃうところを、なんとかかほめぐによって梢の肖像=ポートレイトがぼやっと浮かび上がるような作品にしようと試みました。その中で、梢の誕生日配信に出てくる部員からのビデオメッセージを見ていて、印象的なセリフがありました。慈の「わかりそうでわからない、それが梢」という言葉です。彼女は部長としての顔や、夢見る少女の顔、堅物故に不器用な顔など様々な面を持っていますから、当然の言葉であるように感じましたが、私はここに彼女の本質を見ました。色々ぐちゃぐちゃになってわけわからんくなってる女、それが乙宗梢であると。そうなれば、私ができることは一つです。彼女が身に纏う、とっくにそれすらも自分のものとして、彼女を彼女たらしめる要素、責任感や不器用さまでも無理矢理に引き剥がして、この本の中だけでも彼女を自由な存在に、「破壊」しよう、と思い至りました。私の二次創作漫画に共通する「暴力」の要素です。そこでこの木を「彼女の持つ木のように頼れて揺るがない性質」と捉えて、梢を取り巻く枷の象徴とし、それを破壊する話にしようとなりました。それが爆発であり、ヤクザとしての復活です。ヤクザにしたのは…完全に今読んでいるニンジャスレイヤーの影響を否定できないのですが…ニンジャスレイヤー内でヤクザを示す数字893は「獣の数字」であると言われ、全てを解き放った姿として、獣は相応しいんじゃないかなと今では思っています。長々と書きましたが本格的にシナリオを組んだのは僕ラブ当日から遡って2日間くらいだったので、実はあっという間だったりします。
感想
まず、まず、スケジュールがキツキツすぎましたね。いちおう8月半ばから取り掛かってはいたのですが、シナリオが組めずお手上げ状態が続いていたので全然ダメでした。結局脱稿が先の通り当日午前6時、製本(ホチキス留め)に至っては入場後にやってたので、マジでみなさん心配をおかけしました。電車の中とかスペースでも気づいたら寝てました。
内容に関しては、難産だった割には2コマに1回ボケがある楽しげな作品になったのではないかな!と感じています。頭が凹む慈の天丼と、カホチャンボウガンの変形バンクが気に入っています。梢は!?そこなんですよ。かほめぐは漫才向きなんですけど、本当に、ちゃんと梢を主役にできていたかどうか、そこが心配です。ただ「楽しいが1番!」なわけなので、そこは大丈夫だったかなと感じています。「硝煙」の言葉遊びがめちゃくちゃ良いなと思います。当社は梢から頼れる「木」の要素を抜いたダーク梢的な概念の「肖ちゃん」を出そうと思っていましたが、弱いなと思ったのでヤクザにしました。何より、乙宗梢という存在と向き合って、うんうん唸った時間が楽しかったです。またやりたいとは思いませんが。梢に関しては「ウェポンマスター梢」「花帆が亡くなった世界線で葬式に参列する梢」「超蓮華マシーンコズテスV」など描きたいものが結構あるので、卒業してしまわないうちに描いていきたいと思います。