上原沙也加 写真集「眠る木」
上原沙也加さんの写真集「眠る木」を買った。沖縄の街並みの写真がたくさん載っていて楽しい。
同じ沖縄出身者として、見たことがあるような生活感のある景色に懐かしくなったり、逆に全く知らない景色があったり。
早く全ての写真を見たい気持ちと、見終わってしまうのが寂しい気持ちが合わさって、ページを一枚ずつゆっくりめくる。写真集を見る醍醐味を味わう。
出版元の赤々舎ホームページから直接購入した。購入時、メッセージ欄に「サイン本があれば希望します」と書いたら見事にサイン付きの写真集を送ってくれた。本人の手書きのサインとメッセージ。めっちゃ嬉しい。飛び上がって喜んだ。発送担当の方ありがとうございます。しかも代表取締役の方からのお手紙まで入っていました。おおお恐れ多い。なんて素敵な出版社なのでしょう。
写真集は表紙に写真が貼ってある面白い作り。
ページがガバッと大きく開くので見やすい。僕は寝ながら見たりもするのでここは重要なポイント。
帯の推薦文はなんと沖縄の生活史でお世話になった岸先生。(下の写真は帯を外しています。岸先生ごめんなさい。悪意は全くありません)
今回購入したのはこの「眠る木」のみだが、なんと浅田政志さんの「アルバムのチカラ増補版」と「りんご通信」も一緒に付いてきた。
サイン本のリクエストに答えてくれるだけでなくサービスでもう一冊写真集を付けてくれるとはなんて太っ腹な出版社でしょう。きっと世界一素敵な出版社じゃないかな。
りんご通信は上原さんのエッセイも含まれていて嬉しい。写真家の書くエッセイを読むのが好きだ。どういう生活をして、何を食べて、どのように考えながら写真を撮っているかがわかると写真の見方が一味も二味も違ってくるのがいい。こういう企画を通して、赤々舎の姿勢というか、写真に対する想いが伝わってくる。うん、大好きな出版社になりました。(僕は簡単に好きになっちゃうんだよね)
浅田政志さんはあの有名な「浅田家」しか知らなかったけど、人を撮るのが本当に上手だと感じた。だって、このアルバムに映っている人はみんな優しい笑顔なんだもん。微笑んでるんだもん。これはきっと撮る側と撮られる側に良い関係性があるからでしょう。写真から漂ってくる良い空気が感じられる。
そして藤本智士さんの文も思いやりがあり優しくて素敵だ。なんだ優しい者同士か。どこまで素敵なんだ。
最後に「眠る木」の感想を少し書くとすれば、駐車場の壁に大きく書かれたNO BASEという文字の「NO」の上に「YES」と上書きされていた写真が印象に残った。それがA&Wのフロートの写真や、強い日差しが照りつけるコンクリート塀の見慣れた風景の写真と共に載っている。そのことが複雑な沖縄の状況を現しているような気がする。生活の中にある圧倒的な米軍基地の存在。そして長年に渡りそれを沖縄に押し付けながら見て見ぬ振りを続けてしまっている本土側の存在。そういうことを考えざるを得ない。ちょっとピリッとした感想かもしれないけど、沖縄の光と影の両面から目を逸らさずに真摯な姿勢でいたいと思っている。
とは言え写真集自体には全くそういうメッセージは書かれていないので、これは僕が深読みし過ぎかもしれない。というか99.9999%そうなんだと思うけど、考えてしまうんだから仕方がないね。人それぞれ育ってきた環境が違うから。感じ方は自由だから。
話が広がって収集がつかなくなると困るのでこの辺りでまとめよう。
「眠る木」は沖縄の普段の姿を映している、沖縄の生活が身近に感じられる良い写真集だ。綺麗な海やステレオタイプなイメージの写真などは出てこない。でもだからこそ、とても美しくて心に深く響いてくる。見返すたびにきっと新しい発見がある。僕が持っている写真集の中で間違いなくナンバーワンだ。