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優しい下北線路祭

5月最後の週末に、下北沢でやっていたお祭りへ行ってきた。「下北線路祭」というもので、会場は小田急線跡地に出来たスペース。何を隠そう息子は大の鉄オタなので、「線路祭」という名前を聞いてから「行きたい」と言うまで0.2秒くらいしかかからなかった。恐らく脳で判断するよりも速く体が鉄分に反応しているのだろう。「お風呂入っておいで」と言われると20分はかかるのに、鉄道に関しては切り替えが超特急だ。恐るべき小学生である。そんなトップアスリート並みのオタク精神を見せられては行くしか無い。

朝食は最寄駅でささっと
線路脇に紫陽花が咲いていた。

電車に乗る時はもちろん先頭車両である。運転席の窓から背伸びをしてずっと前を見つめている。念(ハンターハンターで登場人物たちが出す力)が出ているんじゃ無いかと思うくらい真剣な目つきだ。こんな小学生が真後ろにいたら運転手もさぞ運転しづらいだろうと思う。運転手が少しかわいそうだ。

まずは動物園

下北沢に着くと、まずは動物園。孔雀がいたが檻が小さくて、綺麗な羽を十分に広げられなくてかわいそうだった。僕があの孔雀だったらストライキを起こして決して羽を広げないだろう。でもあの孔雀はサービス精神旺盛で、何度も羽を広げては、十分に広げられないまま変な姿勢で3秒くらい固まり、また閉じるという動作を繰り返していた。そんなに無理しないでもいいのにと気の毒に思うほど、何度も何度も繰り返していた。ずっと見ていると壊れかけのおもちゃのように見えてきた。子どもは喜んでいた。

そんななか、アヒルだけはなんとも快適そうに過ごしていた。

アヒル

アヒルは可愛かった。アヒルという生き物はこんなにもつぶらな瞳をしているのだろうか。
今までの人生でアヒルの瞳を良く見てこなかったことを後悔するほどその瞳はつぶらだった。アヒルにもイケメンがいるとしたらこのアヒルは間違いなく日本代表だろう。

reloadの建物
2階に見えるのはパン屋

reloadという建物では、各店舗でスタンプラリーをしていた。鉄道と同じくらいスタンプラリーが好きな息子たちは、早速飛びついた。スタンプは通路にある場合もあれば、店舗内にあるものもある。「店舗内でも買い物不要」と事前に言われてはいても、大人だと「何か買い物した方が良いだろうか」「少なくても少しは商品を見るくらいした方が良いだろう」と薄っぺらい見栄を出してしまいそうになるが、その点子どもは素晴らしい。迷いなく店舗に入り、スタンプまで最短距離で進み、当然のようにスタンプだけ押して帰ってくるのである。物理法則に従って水が上から下に向かって流れるように、リンゴが木から落ちるように、彼らはスタンプだけを押して帰ってくるのである。彼らにはそういう法則がある、ただそれだけのこと。一方で、つまらない虚栄心をちらつかせてしまった自分を恥じる。いつの間にか身についてしまったそういう世間体とかプライドとかは全てトイレに流して捨て去りたい。

物理法則によって完成されたスタンプラリー

スタンプラリーは完成させるためにあり、そして完成したスタンプラリーは景品と交換させるためにある。
集まったスタンプを受付に見せて、くじを引く。コーヒー、紅茶と、中華料理屋でチャイと交換するチケットをもらった。無料でスタンプ探しを楽しんで、最後には景品まで貰えるとはなんて素晴らしいのだろう。いろんなものが値上がりして、とにかくお金がかかるこの新自由主義な社会で、このスタンプラリーは優しい。

くじ
チャイをもらったお店
パン屋
どれも美味しそうで迷う
パンが並べられている姿は美しい

そのあとは、ポニーに乗ったり、餅つきを見たりして過ごした。この祭は下北沢駅に加えて、東北沢駅と世田谷代田駅に跨る3駅間の広い区間で開催されており、その間にある道の模様を紙に写しとるワークショップも開催していた。もちろん子どもと一緒に楽しんで、その景品ももらった。これも無料である。ああ、どこまでも優しい。僕は感動した。お祭りの受付係の方達も子どもを抱っこしながらだったり、小さい子どもと一緒だったり、暖かい雰囲気がひしひしと伝わってくる。

餅つき大会。良くわからないけど人がたくさんいた。

世田谷代田駅では小田急線のスタンプラリーもやっていた。僕はいったい今日どれだけのスタンプをラリーすれば許してもらえるんだろうと思いながら、もちろん参加。その景品ももちろん無料なのである。この世界はスタンプラリーと無料の景品で出来ているんだなあと思いながら、楽しい時間を過ごした。

歩き回ってくたくたになって、「どこかでお茶しようよ」という全員一致の意見が出た時、ふと空を見てみると優しい夕焼け空がどこまでも広がっていた。やっぱり下北沢は優しかった。


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