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映画感想文「ゆきてかへらぬ」中原中也と小林秀雄を魅了した女優を演じる広瀬すずが圧巻

さすがの広瀬すず。

ひとりの女を挟んで男ふたり。

詩人中原中也と文芸評論家小林秀雄と奇妙な三角関係を送った女優長谷川泰子を演じる。

廃退の甘い香り漂う大正時代。まだ売れる前の20歳の新進女優。どこか謎めいて腹が座ってて自由な女。それでいてどこか脆く弱い。そんな魅力的な女を見事に体現していた。本当にいい女優さんになってるなー。10年前の「海街diary(2015年公開)」の頃からみてる身としたら、親戚のおばさんでもないのに勝手に感慨深かった。

そしてこちらも流石の岡田将生。どんだけ仕事してるんだ、というくらい色々な映画やドラマに大活躍だが、いずれも好演してて凄い。100本ノック的な覚悟を感じる。この人は本当にひと癖ある2枚目役がよく似合う。よって理屈っぽくてニヒルな小林秀雄役がぴったりだ。

最後に中原中也役の木戸大聖。かなり奮闘。しかも見た目が写真で見る中原中也にそっくり。ということでよくぞ見つけたな、というキャスティングではある。そして彼の持つ永遠の少年性みたいなものが中原中也役にぴったりである。しかし演技はやはりやや深み足りず。キャリアからしたらやむなしではある。

際どいベッドシーンなどは出てこない。ただただ、濃密な3人の人間関係が描かれる。むしろそっちの方がこってりである。

後世に認められる、天才の中原中也。当時からその才能が理解できた評論家小林秀雄。互いに良き理解者であり、ライバル。嫉妬し憎しみあったこともあったろう。同じ女と恋愛するのもわかる気がする。

恋愛というより、予告で泰子を演じる広瀬すずが気怠げに呟くように「魂で繋がっていた関係」なんだろう。

しかしこの時代の日本、次々と結核で幼児や若者が亡くなっていく。中原中也も結核性の脳膜炎で30才で夭折。しみじみいまの時代に生まれて良かったと噛み締めた。

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