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【こんばんはスナックボンヂュールです 後編】
前編はこちら
ナレーション
「ここは夢乃崎町のはずれ黄泉比良坂(ヨモツヒラサカ)区にあるスナックボンヂュール、年齢非公開のレイコママと愉快な仲間達の元になにやら小さな物語が飛び込んできたようです。突然やってきた見かけない二人の男女。レイコママの言うように別れ話なのでしょうか?」
カウンターで身を潜めながら耳をそばだてるレイコ・タダノリ・ヤスノリ
ソファー席で差し向かうユウとコウスケ
ユウ「少し、距離を置きたいの、あなたと」
タダ・ヤス「ほんとだぁあ!!」
レイ「ほらごらんなっ!」
コウスケ「距離を置くったって君がいなくちゃ何も出来ないよ」
タダ「一緒に暮らしてたのかな」
ユウ「でも、私もうお金もないし」
ヤス「ヒモかぁ!なかなかやるねぇ」
コウ「ノルマについては考えるからさぁ」
レイ「男に渡す小遣いにノルマなんてあるの?」
ユウ「体力的にも限界なのよ、夜遅くまで、、、」
ヤス「おっと?」
タダ「や、そっちじゃないだろ」
レイ「夜遅くまで働かされてんじゃない?」
ヤス・タダ「酷いねぇ」
ユウ「ともかくいったん」
コウスケ「わかった!じゃあ休団!ね!そういう事にしよう?ね?」
レイコ・ヤス・タダ首を傾げる
「んん??」
コウスケ「君は大事なうちのベテラン女優なんだ、やめてもらっちゃこまr」
ユウ「その大事な女優は一度も主役をはったこともないし、アンケートに何かを書かれた事もない!動員だって出来ずにピーピー言ってるの!あなたにとって便利で大事な穴埋め女優はもうおしまいなの!さよならなの!」
コウ「…まぁ、ちょっと考えてみてくれよ。な?あ、お会計よろしくね。」
コウスケなにも払わずに帰る
ユウ「んぁあ!もうっ!!」
タダ「だれー?」
ヤス「別れ話なんていったのー」
レイ「別れ話、、、では、あるわよぉー」
ユウ目の前の水割りを一気に飲み干して、自分でガツガツ氷を入れてストレートで飲み出す
レイ「あらちょっと落ち着いて落ち着いて!うちじゃそんな危ない飲み方する人お断りよー!」
ユウ「もぉおおお!なんなのぉ!」
タダ「売れない役者ってやつかぁ」
ユウ、カッとタダノリを睨みつける
ユウ「売れないもなにもそれ以前の問題。なんていうの?台詞が聞こえるように言えて邪魔にならないそういうポジションとして重宝されちゃって、ただダラダラやっちゃって、、、気がついたら舞台も現実も居場所がないの。くそなの」
ヤス「まぁ、そう自分を卑下しないで、お嬢さん美人なんだし」
ユウ「お嬢さん、、、なんて歳ではないのよ!!もっと綺麗な子なんて五万といるし!あー!もぉーーーー!」
ユウ暴れる
レイ「落ち着きなさいよ!と、言っても無理かもぅ。いいわよいいわよ、もう飲みなさいよ。諦めたわよ。お好きになさい。あ、お願いだから壁だけ穴開けないでね。これ以上あいたらもうここバラックだわよ」
ヤス「でも俺たちからみたらお嬢さんはまだまだ未来のあるお嬢さんだよ。このスナックボンヂュールだけが1日のせめての慰め、そんな工場勤めの俺たちより夢があって、羨ましいくらいだけどなぁ」
レイ「悪かったわね、せめての慰め程度で」
タダ「まぁまぁ」
ユウ「夢、、、ありました、舞台は、楽しかったです。でも疲れちゃったんです。毎日夜遅くまでの稽古、バイトと家の往復だけ、劇団の仲間以外には知り合いすら増えない。そんなだからもちろんチケットも売れない。あー、ここにいても私便利な世話焼き役だけで主役にもならないし何にも変わらないなって気付き始めて、でもぬるま湯って居心地よくて、、、なんとなくい続けて今日30歳になりました。」
レイ「あら、誕生日だったのね!おめでとう!」
ユウ「めでたく、、、ないです」
レイ「馬鹿ね!めでたいわよ!30なんて女盛りよ!それにね、年齢なんて、関係ないのよ。それはね、言い訳。今はきっと、ちょっと休みたいのよ。そのお休みの言い訳に、年齢や才能や自分の未熟さを持ち出してるだけ。堂々と休めば良いじゃないのっさ。」
ユウ「でも、、、私、変わりたいんです!劇団には戻りません。なんか、家も引き払いました。戻るところはもう、ありません。身一つ!心機一転!人生をやり直すんです!!」
レイ「あら勇ましいこと!」
ユウ「荷物もこれだけです!」
ユウ小さな肩掛けバッグを抱える
レイ・タダ・ヤス「ぇえええ!?」
ユウ「財布とスマホさえあれば、なんとか」
タダ「そう言われればそうだけど」
ヤス「強い、、、」
ユウ「ママ!ここで、ここで働かせてくださいっ!!」
レイ・タダ・ヤス「ぇえええ!?」
ユウ「私、桜沢佑と言います。お役に立ちますから!」
レイ「いやいやいや、このバラックスナックじゃあなたのお給金出ないし、まぁ1人で間に合っちゃうからなぁ。」
ユウ「お役に立ちますからぁ!!」
レイ「んぅー、、、」
タダ「あ!ママ!継子ちゃんの方手伝って貰ったら?」
レイ「あぁー!それなら良いかも継子忙しくてアップアップしてたから」
ユウ「???」
レイ「このスナックボンヂュールはね、昼間は喫茶ポンパドールになるの。」
ユウ「ポンパドール」
レイ「娘の継子にやらせてんだけど、店で出してるスイーツが当たっちゃって今はもうほぼケーキ屋。遠くからも買いに来る人がいるもんだから大変らしいのよ。家事や子供たちの世話も切り盛りしてるから可哀想でね。」
ユウ「やらせてください!!」
レイ「だから落ち着いて!まぁひとまず聞いておくわ。」
ユウ「ありがとうございます!」
レイ「あと、あんた今日泊まるとこないんでしょ?狭いけど子供たちの布団の間にでも潜っておけば?」
ユウ「ほんとですか!?ありがとうございます!このご恩はきっと!」
レイ「やだやだご恩とか重い重い。めんどくさいめんどくさい。」
ヤス「ママったら照れちゃって」
レイ「や、本当にめんどくさい。それより!よく、決断したね。新しい世界の始まりだ!良い誕生日じゃない?ハイこれ」
レイコ小さなイチゴショートを差し出す
ユウ「え?」
レイ「私勘が良いのよねぇ、なんとなく継子にケーキ一個残しといてって言っといたのよぉ。役に立ったわね。
小さくてなんの取り柄もないケーキだけど。美味しいわよ。
お誕生日、おめでとう。」
タダ・ヤス「ハッピーバースデートゥーユー♬ハッピーバースデーディアゆうちゃーん!ハッピーバースデートゥーユー!」
ユウ、涙ぐむ
「ありがとうございます」
レイコ蝋燭を刺して火をつける
レイコ「さ!願い事をして!」
ユウ顔の前で手を組み合わせて祈る
そして吹き消す
暗転
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