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黒い靴
シナリオスクールの課題で書いたものです。夏になると不穏な物を書いてしまうよねっていう不穏シリーズです。世にも奇妙な…イメージの作品です。
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人 物
新井智子(28)保険会社営業事務員
戸田康則(23)派遣社員
吉川浩司(30)保険会社営業
○マリアナ保険・営業統括部
慌ただしい社内。戸田抱えた封筒から一部を吉川に渡す。
吉川「あ!?うちの部署のじゃねぇよ」
吉川戸田の顔に向かって封筒を投げ返す。
戸田「す…すいません」
吉川「しっかりやって、ハ・ケ・ンさん」
戸田引きつったにやけ顔。智子が入ってくる。
智子「はい、戸田君」
智子落ちた封筒を拾って戸田に渡す。
智子「いつもありがとう」
戸田怯えながら受け取る。
吉川「智子ちゃんに話しかけられるなんて生意気だな」
戸田「…はぁ…すいません」
〇富士川荘・外観(夜)
戸田の唸り声
〇富士川荘・戸田の部屋(夜)
布団の中でうなされてる戸田。女の叫び。ドスン。飛び起き周囲を見渡す戸田。辺りは静寂。
戸田「また…」
頭を抱え布団に潜り込む戸田
戸田「ごめんなさい…ごめんなさい…」
〇マリアナ保険・営業統括部
戸田コピー機の前で書類を抱えている。吉川、戸田に足をかける。戸田書類を落とす。
戸田「あぁ…すいません」
戸田怯えながら書類を拾う。書類の下から黒いローファーを履いた智子の足が現れる。戸田飛びのく。一緒に書類を拾い出す智子。
智子「ねぇ、戸田君」
戸田「すいませんいつもご迷惑ばかり…」
智子「戸田君と私って似てる」
戸田「え?智子さんと?いや…僕なんて全然」
智子「自分の胸だけにしまってる事…ない?」
戸田ハッと息をのんで固まる
智子「私そういうの、ほっておけなくて」
戸田「あ…の…」
智子「もし、話したくなったらで良い」
智子書類を手渡す
智子「私は戸田君の味方、だよ」
〇マリアナ保険外観(夜)
戸田の後を追って智子が走ってくる。
智子「いたいた!一緒に帰ろう~!」
智子戸田の脇に手を入れて腕を組む。
〇赤坂タワーマンション裏ベンチ(夜)
戸田・智子並んでベンチに座り缶ビールを飲んでいる。
智子「戸田君本当はもっと能力のある人だと思う。なのに」
戸田「僕は…あなたが思うような…」
智子「何?」
戸田「あ、いや…」
智子「ねぇ、力になりたいの」
智子戸田の手をとる
戸田「僕は…人を…」
智子「え…」
戸田「いや…殺してない!そんな事になるなんて…だって!」
戸田前のめる。智子後ずさる。
戸田「高校時代周りの子とはすごく気軽にセックスしてて、そんなもんだって思って、だから!」
戸田ゆっくりと顔を覆って震える
戸田「みんなでからかうみたいに…やっちゃって…まさかそんな事で…自殺するなんて…思わなくて…今でも」
戸田ハッと周囲をうかがう
戸田「夢に見るんだ…屋上に並んだ黒い靴」
戸田ベンチから降りて地面に頭をこすりつけて謝る。雨が降ってくる。
戸田「ごめんなさい!でも…殺してない…僕じゃない…僕、だけじゃ…ごめんなさ」
戸田、ハッと息を飲んで智子の靴をみる。智子が黒いローファーを履いて いる。智子は穏やかに見下ろしている。
智子「怖かったね。ずっと、隠れて、逃げて来たんだよね」
智子戸田の頭にそっと手を置いて優しく撫でながら微笑む。
智子「もう、大丈夫だよ、お疲れ様」
智子置いた手に力を込めて戸田の頭を鷲掴みにする。
智子「今度はちゃんと償ってもらうから」
智子戸田の髪を掴んで引きずり上げる
智子「智美、お姉ちゃんやっと見つけたよ」
降ってくる雨が戸田の頬を伝って智子の靴に落ちていく。
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