マガジンのカバー画像

あたおか散文

432
流れ落ちるままに生み落とした「あたおか」な散文たち
運営しているクリエイター

#小説

お仕舞い

お仕舞い

なにかの作法のように
丁寧に静かに服を着せられる

ショーツが太腿の間を滑り

ブラのホックが止まり
肩紐を合わせ

ブラウスのボタンが
ひとつ、またひとつ留められる

スカートがスルリと腰まで上がり
ヒダのひとつひとつまで整えられる

さっきまでの嬌声と水音が嘘のように
衣ずれの音だけが耳に響く

一枚、一枚と

着せられる間に

ひとつ、ひとつと

私は幼子に戻されるような思いがした

その鮮

もっとみる

こんな夢をみた

こんな夢を見た。

気が付くと僕は片田舎の本屋の看板だった。

老人は曲がった腰で重々しげに毎日シャッターを上げては閉め、店先のワゴンを出してはしまい。変わらぬ日々を送っていた。時に子供が絵本をねだり、少年は少し早い性の目覚めを後ろめたそうに覗き、OLが旅の予定をみつけあて、主婦は今日の夕飯を探し当て、サラリーマンは小さなロマンを抱きしめながらそこで過ごしていた。しかし、誰もが知っていたであろうそ

もっとみる