マガジンのカバー画像

あたおか散文

432
流れ落ちるままに生み落とした「あたおか」な散文たち
運営しているクリエイター

2020年8月の記事一覧

引き倒して恋慕の凄艶

迫りくる悪漢

黒いピンヒールで討ちとめて

今日はこれぎり見栄を切る

またのお越しは要らないよ

やれ散々と思うたら

角の地蔵に謝りな

きっとあんたもわかるから

そうかこの世は狂言と

気づけば哀れも思おうぞ

可愛いお顔が台無しだ

あたいあんたが好きだわよ

小山羊の訪問

3番線の人参が

とらぬ狸に恋をして

無賃乗車で大立ち回り

風車の色ヒラヒラリ

天然木馬が空を巡って

君の家まで桜桃のお届け

こんばんは

一昨年のお礼です

ここを開けてくださいな

開けたらきっとわかるから

ひなびた夏の陰影

ぴたぴたのTシャツ

改札口でホームラン

玄界灘こそ豆腐の角

平家住まいのマコが目覚めるまでに

エクセルにマトリョーシカを入力すれば

ガマの油がよく売れるってさ

ありもしない幻想の救出

期待を着たい

気体のように

軽やかにはおる

奇態な姿

私が演じて見せましょう

それをあなたが望むなら

道化がどうかこの身に合って

あなたを救い出せるなら

最先端の発掘記録

テモネック星人が3000年後の採掘所から生まれて

用もない子は星の瞬き

芸のない子はチリチリアクタ天手毬

まぁまぁ縁側で団子でも呼ばれましょ

月が隠れて雉の鳴く

珊瑚の簪落として潜る

ニッカの灯り

感情の島の果て

ジンギスカン鍋の上で焦がす澱

脂と泡とを脛に纏って

やれ山楂はどこだと漕ぎいだす

オペラ座の夜が煌めく

名画座のキャラメル

遠巻きに覗く狐達に

さぁさご挨拶

いつかまたねと

ご機嫌よう

転がして崖の底

甲斐甲斐しくも眼前の崖

転がる小石を遠巻きに

眺めてくゆらす煙草の火

もうあげますわと差し出して

酩酊したのはアゲハ蝶

キリギリスの声恋しくて

先だってのうなじを思い出す

ガラガラと引く乳母車

揺れたり刺さったり

たまり漬け

大黒柱

時計のズレ

カツカツ降りるキルケゴール

水くれないかと手を出して

高下駄サンダルラクダの股引

連綿と続く蛇目傘

雨雲一つお隣から借りて

尾の白い犬こっそり連れ出す

大根おろし甘いか辛いか

スコア250越えの税理士

明滅する勿忘草

「正しさ」をボストンバックに詰めて海に流そう

どこかの岸に着く頃にはきっともうどうでもいい事になってるんだろう

この傷もこの悲しみも怒りも

全ては生まれて消える波の泡

ほんなこつ言うたかて

一寸の虫にも五分の魂

生まれた泡になんしか生まれた意味もつけたらんかいな

変わって変わらない結局元の木阿弥で救った衝動

須く魂という機構の臓腑

ぐるぐるぴったん

カタカタぐにょり

ただ流されていざ進め

お為ごかしの冒険を

予定調和の波乱万丈

いざいざ進め

忘れてるふりで声張り上げて

たのもー!このフラグを打ち倒すものはないかー!

かんなで削った義侠心

むかしこっぷり

デジタル旅情

豪快に振りかぶって投げたさよならは音速の彼方に

脱色しすぎた髪

大手町の階段

ハイライトじゃなくてマルボロ

ネクタイにミートソース

かかとの潰れたスニーカー

今日のアジェンダ

特攻服の真っ赤な薔薇

テレワークでビール

硬派の契り

お前と俺とで夢は彼方に捨てていく

手を取り合って捨てていく

誰かの為に捨てていく

後悔と崩落をさめざめと泣く

もう全部忘れてもいい

寝て起きたら微睡の観世音菩薩

鏡が割れて

河原が燃えて

敗れた剥げた恋と舞台の床

まんまるの月

おわりのはじまり

今でもあの誰もいない時空に

マリアは優しく微笑んでるの

誰も覚えていない窓から

光は差し込んでるの

行き場のないひとりきりの手毬麩

宙ぶらりん

友すればひとりきり

繋いだ手は気づけば溶けてまた一人

じっと手を見る啄木と私

愛していると呟いた波はかき消されてどこへも行かない

淀みが目の前を覆ってら

見えているのに見えない
言っているのに伝わらない
鳴っているのに聞こえない

あぁ千里の道を生かされる

輪廻と回転からはじかれた虫けらの夢

桃 つるり
羽 ふわり
猫 ぎらり
街 ざわり
砂 さらり
海 ざぶり
女 するり
刃 ぬらり
骨 ころり
子 ずしり
金 ざくり
蜜 とろり
人 ほろり