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人生残り2000週間…失敗できない時代のスプレッド投資
25年の投資歴の中でいろいろ手を出しました。日本株、中国株、FXにはじまり米国株、ETF、国債、社債、商品先物では原油、トウモロコシ、粗糖、金、銀、銅、プラチナ、金利先物に指数先物…。ただ結局トレードの根底は同じで、「上がるか、下がるか」という点に変わりはありませんでした。
気付けば人生も半分を過ぎ、何歳まで生きるかはわかりませんが残り2000週間は切ってしまっていると思います。
20代、30代での失敗はまだ取り返しがつきますが、人生後半に入ると1回の失敗が命取りになります。私も実際👇で書いたとおりタイムスリップを味わい、残りの人生を考えるともう失敗できない体になってしまいました。
これまでいろいろ試した結果、リスクヘッジの手段として行き着いたのがスプレッドトレードでした。
スプレッドとは?
スプレッドの定義は広いですが、一言で言えば「差分」を意味し、日本語では鞘(サヤ)とも呼ばれます。
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投資家にとって身近なスプレッドは、買値(ビッド)と売値(オファー)の差で、FX業者選びではスプレッドの狭さが注目されたりします。
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スプレッドトレードとは?
スプレッドトレードとは、差分(Spread)の拡大と縮小をトレードする手法で、特徴を一言でいえば「リスクを抑えてヘッジの効いたトレード戦略」です。スプレッド取引や相対価値取引、サヤ取りトレードと呼ばれることもあります。
具体的な取引手法としては、1つの証券を購入し、関連する証券を同時に売却します。これらの証券は「レッグ」と呼ばれ、スプレッド取引に対応した市場(例えば先物のカレンダースプレッドやオプションスプレッド)では複数のレッグをまとめて一単位として取引されています。
スプレッドトレードの種類を図にするとこんな感じです。正確な定義が決まっているわけではないので各名称の配置は私のイメージです。Time SpreadやArbitrageも広義のペアトレードに含まれることがありますし、取引プラットフォームによっても呼称が異なります。
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相関係数は、両者の証券の価格がどれだけ連動しているかを表すもので、+1に近いほど同じ動きをし、0で最も相関が弱く、逆に-1に近いと逆相関があることを表します。
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ペアトレード(Pair Trade)
価格の相関性が高い銘柄同士の差分を狙います。
例えば、S&P 500とNasdaqはどちらもハイテク銘柄を抱えた米国指数で似た動きをします。相関が高い両者の差分が広がった(相関関係が一時的に崩れた)ときに高い方を売って安い方を同金額分買い、差がなくなったときに手仕舞いすることで差分を利益にすることができます。
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あくまで差分で勝負するので、市場が上げようが暴落が起ころうが直接影響を受けないのがスプレッドトレードのポイントです。
ただ、競合他社のコカ・コーラを買ってペプシを売るのような、相関係数がそこまで高くない場合、一度開いたスプレッドが戻らない危険性もあります。
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ちなみに先物市場ではインターマーケットスプレッド(Intermarket Spread)と呼称されることが多いです。基本的にはペアトレードと同じで異なる商品間でのスプレッドトレードです。
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タイムスプレッド(Time Spread)
タイムスプレッド(カレンダースプレッド、イントラマーケットスプレッドとも呼ばれる)とは、同一の資産における異なる満期の先物価格の差を指します。
この差分は、主に市場参加者の期待、資金調達コスト、保管費用、金利、配当(株式の場合)などによって決まります。指数先物の場合は保管費用は関係ないので、リスクフリーレートと配当でFV(Future Value、将来価値、理論価格)が計算でき、どれだけ価格に歪みが生じているのかを定量化することができます。
現在私もポジションを持っているキャッシュアンドキャリー取引は、先物価格が理論価格よりも高い場合に行われる裁定取引の一種で、先物の期日と現時点のスポット価格との差分の裁定取引という点でタイムスプレッドの一種といえます。
以下はSPX(S&P 500)とES(E-mini S&P 500先物)の差分をチャートにしたものですが、先物は満期日の価格を取引する契約なので、満期日に近づけば近づくほど現在価格との差分はゼロに収斂されていきます。
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アービトラージ(Arbitrage)
ペアトレードもHFTも広義のアービトラージなのですが、ここでは相関係数がほぼ1であるペアのスプレッド取引をアービトラージと呼んでいます。
基本的に同じ原資産に投資している組み合わせで、たとえばSPYとVOOとIVVは、どれもS&P 500のインデックスETFですが別々のファンド会社によって運用されています。
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相関係数がほぼ1になると鞘自体が生まれないのでサヤ取りの機会も急激に減ります。
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が、1日の中では数セントずれることも頻繁にあります。
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個人投資家の場合は手数料やスリッページなどを考慮しなければなりませんが、1セントでもスプレッドが取れれば100株単位で1ドル、それを1000回繰り返せば1000ドルの収益になります。
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HFT
同じ商品(相関係数が1)の顧客注文とNBBO(National Best Bid and Offer、全米最良気配)や各証券取引所の呼び値との差分をマイクロ秒単位で取りに行くHFT(High-Frequency Trading、高頻度取引)もスプレッドトレードの一種です。
2014年、上場を申請していたVirtu FinancialがSEC(米国証券取引委員会)への提出書類で、2009年1月から2013年12月までの5年間で、1日を除いてすべての取引日で利益を上げたと公表した※ことで議論を巻き起こし上場延期になったこともあるほど勝率100%のトレード手法です(※しかも損失が出た原因は人為的ミス)。
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他にもTradebotのCEO、デイヴ・カミングスが同様に勝率100%を公言していますが、HFT業者はコロケーションを使った高速取引を使うため一般個人投資家では真似できず、聖杯というよりチートやインサイダーに近いと言えます。
IB証券の「リアルタイムデータ」は、株、先物等で250ミリ秒、オプションで100ミリ秒、FXで5ミリ秒で更新されるので、どうしてもミリ秒単位でしか取引できません。が、HFT業者はマイクロ秒単位で数セントのスプレッドを何度も取引して利益を上げています。
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HFT業者はマーケットメーカーでもありますが、PFOFでも稼いでいるのでグレーなイメージもつきまといます。PFOFはイギリス、EU、カナダ、オーストラリアなどでは規制されていますが、アメリカではまだ合法です。
PFOF(Payment for Order Flow)とは、証券会社が特定のマーケットメーカーに顧客(機関・個人投資家)の取引をルーティングする見返りに受け取る報酬です。アメリカの新興証券会社のRobinhoodなどは、手数料ゼロの代わりにPFOFで儲けており、投資家に最善の取引価格を保証しない可能性があり利益相反を引き起こすとして批判されています。
個人投資家とヘッジファンドとの闘いに発展して映画にもなったゲームストップ事件では、証券会社とPFOF契約を結んで件のヘッジファンドにも投資していたHFT業者のCitadel Financialも裁判で注目の的となりました。
ただ証券取引所自体も営利企業であるためHFT業者と持ちつ持たれつになっていることもあり、たとえばVirtu Financialは東証と取引システムの直結契約を結んでいますし、東証の決算報告書ではコロケーションサービスからの売り上げも報告されているのを見ることができます。
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こうしてみると個人投資家とは縁のない話のように見えますが、👆のHFT以外の方式でも、単に上がるか下がるかのトレードよりははるかに低いリスク&高い勝率を実現できます。
オプションスプレッド
オプションスプレッドとは、2つ以上のオプション契約を同時に組み合わせるトレード手法です。リスクとリターンをコントロールしやすく、特にリスク管理を重視する投資家に人気です。
たとえば、エヌヴィディア株に対してブルプットスプレッド(ITMのプットを売ってOTMのプットを買う)を組成することで、リスクを限定しつつ利益を狙うことができます。損失の上限が決まっているので、資産を吹き飛ばす心配もありません。
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名称がついているような組み合わせだけでも何十種類もあり(私はプリンス・カメハメに倣い48の殺人技と呼んでいますw)、単なる2者の差分を取る取引とは次元が異なるため、オプションスプレッドについてはここでは深入りしないようにします。