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金利のある世界の投資方法:絶対儲かるETF?

以下は2004年3月25日にBloggerで公開したブログの再掲です。


日本ではマイナス金利解除で騒がれていますが、アメリカの政策金利(Target Federal Funds Rate)は5.50%で高金利状態が続いています。

高金利の世界では、投資の判断基準は「損しないかどうか」、「プラスかマイナスか」ではなく、プラスになるのは大前提で「リスクフリーレート以上の収益を上げられるかどうか」になります

(※以下の例は2024年3月時点のものになります)

銀行金利

誘導目標に対してEffective FFレート(実効フェデラル・ファンド金利)は5.33%ですが、日本と同じく個人が直接5.33%の恩恵を受けることはありません。

この点、ネット銀行に該当するようなところは高めですが、G-SIBsに該当するような大手銀行ではSavingsでもたいした金利がつきません。

CDだと少しレートはよくなり、アメリカ最大の銀行※であるChaseの場合、条件によって変わりますが4%台です(※資産、顧客数、店舗数で一位)。一方で固定期間で縛られますし、預金にしろCDにしろそのまま買付余力として使えないため投資用としては微妙です。

個人顧客向けCD利率

ちなみに後述するIB証券ではセカンダリマーケットで各銀行が発行しているCDも買えます。

米国社債市場

ETF

また、金利をベースにしたETFでも高金利の恩恵を受けることができます。

例えばBOXX ETFでは1~3カ月のオプションボックススプレッド(実質的なゼロクーポン債)に投資することで過去1年で5.12%の利率を実現しています。

理論上は右肩上がりになるBOXX ETF

原資産に該当するのはオプションスプレッドですが、クリアリングハウスのOCC(Option Clearing Corporation)がボックススプレッドのカウンターパーティーリスクを取ってくれるので短期米国債に近い利率を実現しています。こういったリスクフリーレート(RFR、無リスク金利)に準じたETFの場合、ほぼ必ず右肩上がりの収益グラフになります(アメリカでは政策金利がマイナスになったことは一度もありません)。

実効フェデラル・ファンド金利(effective federal funds rate, EFFR)

「絶対儲かる」なんて100%詐欺の常套句ですが、金利のある世界では「リスクフリーレートよりも儲かるか」という条件で考えます。

この点、短期証券やそれに準ずる原資産で組成されるETFの損益がマイナスになる場合としては、手数料と売買スプレッドのマイナスを相殺する前に短期で売却または早期償還された場合か、ファンドマネージャーが下手をうった場合、発行体が破綻した場合(OCCが破綻する可能性の方がよっぽど低い)等のケースが考えられます。

同じく、政府系有価証券に投資するSGOVやBIL、TFLOなどでは毎月配当(利払い)があるのでグラフ上は鋸型をしていますが配当込みで5%強の利率になります。

株と違って「読みやすい」ETF

米国債

高利率を享受するには米国債に直接投資する方法もあります。

アメリカでは州税控除の対象になる(連邦税は控除対象外)ので、節税目的でも投資妙味があります。ただ、既発債をディスカウントやプレミアムで買った場合や、OIDやSTRIPSによっても控除の扱いが変わってくるので控除目的の場合は注意が必要です。

社債投資時に随分苦労させられた米国の債券課税

満期まで持つつもりならTreasuryDirect.govで新発債を買うこともできますが、Cash-equivalentな米国債の低い証拠金維持率の恩恵を受けれないので投資対象としては下の下です。一方で証券口座で既発債を買えば1%~といった極小の証拠金維持率のため買付余力を他の投資に充てることもできますが、既発債のセカンダリマーケットは流動性も低いのでスプレッドも開いている場合が多いです。

米国債の流通市場

証券口座の現金残高に対する付与金利

証券会社の場合、証券口座に余らせているキャッシュがあると金利が付きます。

日本でいうMRFのようなもので、投資商品を何も購入しなくても単に口座に置いているだけで利息が付くので、マーケットの好転待ちでポジションを持っていないときでも資金効率がよくなります。

この点、IB証券以外はかなり不利なレートなので金利を重視するならIB一択ですが、IB証券の場合、1万ドル以上の部分に4.83%付くので、10万ドルなら年間4,347ドル(≒66万円)、100万ドルなら47,817ドル(≒724万円)の利息が付くことになります(詳細はIBのサイトで計算できます)。

付利される利息は証券会社によって大きく異なる

MRFと同じく証券口座に置いておくだけで付く利息のメリットは、その資金をそのまま買付余力として投資に回せることです。

ROI(投資利回り)対リスクフリーレート

日本にいたときはゼロ金利が当たり前だったので、ROIはリスクフリーレート抜きで考えても違いはありませんでしたが、米ドル口座では「無駄に寝かせておく」だけで、上記の例でいえば10万ドルなら4,347ドル付きます。

IB証券では証券口座残高にMMF相当の利息が付く

何のリスクも取らずに、投資行動すら起こさなくても4,347ドルの収益を生み出すことを考えると、年間4,000ドル程度勝っても投資する意味がなく、ましてや損をするなど「もってのほか」なわけです。

つまり、冒頭での話につながりますが、リスクを取って投資をするかどうかの判断基準は「最終損益がプラスかマイナスか」ではなく、「4,347ドル以上の収益を上げられるかどうか」になります。

マイナスが論外なら重視すべきは投資利回りよりも標準偏差(シャープレシオでもソルティノレシオでも構いませんが)で、下方偏差が高くてプラス収益を高期待値で見込めないようであれば、リスクアペタイト的には投資をしないのが賢い投資になります。

逆に言えば、積極的な投資をしなくても利息の付く口座に現金を入れておくことが大事になります。当座預金のChecking Accountや利息がろくにつかない口座に置いたままだとせっかくの高金利時代を享受できないばかりか、インフレにやられて実質的な資産がどんどん目減りしていくことになります。レイ・ダリオの言葉を借りるとすればCash is Trashです…。

Ray Dalio famously claimed "cash is trash."

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