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NY生活で感じる民主党と共和党

NJに住みNYで働くというブルーステート生活を送っているので周りには民主党支持の人が多いですが、個人的には政策ベースで考えるのでどっちもどっちだったりします。

民主党、共和党支持者はどんな人たち

各党のイメージとしては…

  • 民主党:意識高い系、高収入高学歴エリート、ぼくの地球を守って

  • 共和党:富裕層や白人エスタブリッシュメント、地球より実利 

  • トランプ:自分が良ければ良し、気に入るか気に食わないか

アメリカの上位1%に属するエリート※は82%がバイデン支持(他の投票者は41%が支持)
※修士号を持ち、大都市に住み、年収15万ドル以上

プロファイル別でみるとそれぞれの支持層が浮き彫りになってきます。共和党支持者は白人男性で年齢層が高い傾向にあります。

民主党と共和党の各問題に対する立場と主なプロファイル

今回の結果を地図で見ると一目瞭然で、移民も多い東西沿岸部の大都市では民主党支持が鮮明ですが、中西部の大多数は真っ赤に埋まっていて、これらの広大な田舎が共和党の支持基盤でもあります。

斜線付きは前回とは結果が変わった州

2020年のCensus統計(米国国勢調査)を見ると、ニューヨーク大都市圏でも多様な人種が集まっているのはニューヨーク市周辺で、ひとたび郊外に出れば広大な白人地域が広がっているのがわかります。

ピンクは白人地域。緑はアジア人地域でフラッシングやブルックリンのチャイナタウンで顕著

この田舎に住む土着※の地方豪族が、不法移民反対含めた共和党の価値観にミラクルフィットしているのです。

※まあ彼らもインディアンの土地を奪った移民の末裔ですが…

😅

労働者階級の代弁者は…いない

👆でお気づきかと思いますが、民主党も共和党も基本的に社会の上位層であって、今回の選挙で争点にもなった、ラストベルトを代表するような人たちではありません。
 
もちろん当選するために選挙ではどちらも労働者階級に寄り添う姿勢を見せましたがあくまで政治的パフォーマンス。
 
特に滑稽だったのはイーロン・マスクによるバラマキ作戦で、共和党を支持する署名をした人の中から毎日100万ドルが抽選であたるキャンペーン。実際にあたった人はうれしいんでしょうが、金持ちが一般人を金で釣ってるに等しく、はたから見ると格差の象徴でしかありません。 

エントリーには「言論の自由と武器所持の権利」を支持する署名と、激戦州での有権者登録が必要

今回の選挙では共和党が圧勝しましたが、もともと共和党は富裕層や重厚長大産業の大企業が支持基盤ですし、法人税減税は個人よりも企業に直接恩恵を与えます。

大統領選の献金額ランキング

献金ランキングを見るとその党が誰のために政治を行うのかがわかります。

まずは共和党向け献金、メロン銀行財閥のティモシー・メロンを筆頭に大富豪や実業家が名を連ねます。

民主党へのマイナス2900ドルとはいったい…

先週のnoteで触れたHFT業者Citadel FinancialのKen Griffinも1億ドルを献金して5位にランクインしています。

お次は民主党向け。

トップはブルームバーグ創業者のマイケル・ブルームバーグ。ただ、献金額を共和党献金者たちと比べるとその少なさが目立ちます。

2位のDustin Moskovitzはフェイスブックの共同創業者。

ちなみに企業ランキングで見るとテック企業は民主党支持が多いです。

テック企業は民主党な一方で、金融系は共和党支持が多い

こうしてみると共和党政権で潤うのは富裕層のフトコロで、今回共和党に投票した労働者階級はその希望とは裏腹にさらなる富の格差の広がりを目の当たりにすることになるでしょう。

ミクロ化した争点

今回の選挙では民主党は争点が細分化されてしまったと思います。
 
中絶の権利の訴えは、テレビ討論会直後にテイラースウィフトが支持を表明したように若い女性には響いたと思いますが、男性有権者や他世代との分断を広がる結果を招いてしまいました。

中絶を優先課題に考えていたのは若い世代の女性だけで、同じ若者世代でも男性では18%のみ
世代別では30代以降は経済対策(インフレ)の方が優先

同じく民主党はLGBTQ2+の権利を支持していますが、逆にマジョリティー層には受けが悪く、これらを強調するほどキリスト教福音派の支持が離れていき、「多数決の選挙では少数派支持が不利に働く」というある意味民主主義の欠点ともいえる部分が露呈したと思います。
 
候補者討論会やメディアインタビューでもそちらに時間が割かれてしまい、老若男女問わずアメリカ全体で影響を受けている移民や経済について声高に叫んだトランプの方が有権者に響きやすかったというのもあると思います。 

実際、カルフォルニア州と並んでブルーステートの旗手であるニューヨーク州ですら、これまでヒラリー・クリントン、ジョー・バイデンのときは民主党が60%以上取っていたのが、今回のカラマ・ハリスでは55%と落ち込み共和党が躍進しました。

政府が力を持つとろくなことにはならない

上のように書くと民主党支持のように思われるかもしれませんが、個人的には経済政策は共和党の方がマシだと思っています。
 
例えば民主党のハリスが掲げていた、初めての住宅購入者に平均2万5000ドル(≒380万円)の頭金支援をする政策、住宅保有者が「なんで我々の税金からそれを払わないといけないんだ」と反対していました。
 
イーロン・マスクのバラマキは自分のお金なんで好きにやってもらえれば(公職選挙法に違反しない限り)かまいませんが、税金でそれをやられたらたまったものではありません。住宅不足からの価格高騰を招いてさらにインフレを加速させるのかとの批判も上がりました。
 
同じくバイデンが推進し、ハリスも公約に掲げていた学生ローンの免除。これも格差解消という皮を被った「公権力による強制的な富の移転」に他なりません。

「格差解消」の綺麗事

2019年、投資家のロバート・F・スミスが、モアハウス大学の卒業生約400人の学生ローンを個人資産ですべて払ってあげたというのがニュースになりました。
 
このニュースは一見「めでたしめでたし」のように見えますが、これで一番損したって感じるのは前年や翌年の卒業生だったと思います。

イーロン・マスクと同じく、このニュースも富豪の個人資産なので、ギリギリ対象から漏れちゃった人には「残念だったね」で済みますが、これが税金だったらそういうわけにはいきません。

バイデンが今年4月に発表した学生ローン減免案も、「利払いが追いつかずに返済額が膨れ上がった借り手約2500万人を対象に、最高2万ドル(約288万円)を免除する」というものでしたが、共和党知事の7州は施行差し止めを求める訴えを連邦地裁に起こしました。

ちなみに学生ローンは半分近くが延滞状態で、その多くが3年以上支払いをしていないというひどい状態なのですが、真面目に払っちゃった人たちが損をして、延滞や踏み倒すつもりだった人たちの方が得をするというのが「格差解消」なのかと考えると納得いかないところだと思います。

支払いの一時停止措置(青グラフがない部分)があったにもかかわらず増加し半数近くが延滞

そしてすでに同じようなことが「不法移民にルーズベルトホテルの部屋を提供したニューヨーク市」などでも起こっています。

グラセンの隣にあるルーズベルトホテル。こういったホテルは135軒にのぼる

ブルックリンの86stで私が見かけた、ホームレスシェルター建設に抗議していた住民の人たちとしても、「自分たちの税金を使って自宅周辺の治安や地価を悪化させる」のは不公平以外の何物でもないでしょう。

マンハッタンの渋滞税の導入と環境保護の矛盾

そういえば今年無期延期になったはずの渋滞税(Congestion Price)ですが、反対しているトランプの就任前、来年1月5日から駆け込みで導入されることになりました。

ピーク時はゾーン侵入時に9ドル徴収される

毎週チャイナタウンに通っている我が家としては直接打撃を受けることになります。上のブルックリンの市民のように日々の生活に直結する話になり、「女性の権利は大事だし、LGBTQ2+も尊重したいけど、渋滞税はやめてほしい」という人も多いと思います。

上位1%エリートの7割がガソリン車やガスストーブ規制に賛成。投票者の7割は反対

日本の自動車メーカーの肩を持つわけではありませんが、EV推進の潮流も、製造過程や電力発電でガソリン車以上の二酸化炭素を排出していて費用対効果が疑問視されていたり、ノルウェーのように石油を輸出して稼いだ金でEVへの補助金や「脱炭素」を進めているといった矛盾している実態もあります。

燃料だけでなく製造時にもバッテリー製造でCO2をガソリン車より消費するEV車

この点、共和党からしてみたら、温暖化対策を推進した結果、ライバル国家を利して米国経済の衰退を招いては本末転倒になります

民主党が重視しているのは「気候+中絶>経済」
共和党は「経済・移民対策」

実際、世界のEV生産台数は中国が突出していますし、意外かもしませんがクリーンエネルギーも中国が世界をリードしています。

中国が世界最大のクリーンエネルギー生産国

さらには現在ウクライナと中東で起こっている戦争。

大量の火薬を使い街や森を破壊して、ダムまで決壊させて生態系を壊しています。気候変動対策を声高に叫びつつ、武器を供給して環境破壊を手伝っているのは民主党の自己矛盾です。

隠れているロシア兵もろとも木々を焼き尽くすウクライナの火炎放射ドローン

エリートの思い上がり

エリート主義にしろ、極左にしろ、マルキストにしろ、人類の進歩と調和のために富や社会資源を再分配して平等を実現するという理想自体はいいんだと思います。
 
ただ最大の問題は、資源を公平に分配できる有能で私利私欲のない人間など存在しないということです。
 
国家規模の資源分配になれば、関連省庁や下請け企業など、関係者は数千、数万に及び、それに関わる各フェーズの決定者たちが私腹を肥やそうとすることのない聖人君子である必要があります。

日本で最近騒がれているザイム真理教にしろ、増税したら昇進や天下り先が良くなるといった🥕をぶら下げるのは聖人君子とはほど遠いところにあります。税金を集める側がそうなのだから、いわんや使う側です。
 
〇〇対策で数兆円の予算が組まれたりしますが、その大半は実際に必要としている人よりも経費や関連ポスト、下請け企業に消えていきます。東京オリンピックにしろ大阪万博にしろ、それで得をするのは誰かを考えると本音と建前が見えてくると思います。

日経新聞「五輪事件 437億円事業、官民で骨抜き」

理想と現実は違う以上、どちらかといえば大きな政府より小さな政府、ケインズよりハイエクでありフリードマンなのだと思います。

シカゴ学派のフリードマン(左)は金融商品の先物取引導入にも一役買っている

スペースXを政府と契約させたりと、イーロン・マスクも公私混同甚だしいですが、膨れ上がった政府機構にメスを入れるという点ではDOGE(政府効率化省)には期待したいところではあります。

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