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九龍城寨之圍城の九龍城

日本でも「トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦」という邦題で上映される「九龍城寨之圍城」です。ネタバレがあるので観賞予定の方はご注意ください。


映画情報

まずは映画情報ですが、あらすじや感想だけ見たい方は読み飛ばしてください。

『九龍城寨之圍城(Twilight of the Warriors: Walled In)』は、黎俊、陳大利、欧健児、岑君茜が脚本を担当し、鄭保瑞が監督を務めるアクション映画です。

主な出演者には、古天楽(ルイス・クー)、洪金宝(サモ・ハン・キンポー)、任賢斉(リッチー・レン)、林峯(レイモンド・ラム)、伍允龍、劉俊謙、胡子彤、黄徳斌、張文傑などが名を連ねています。

本作は余児の原作小説『九龍城寨』と司徒劍僑によるその漫画を原案にしていて、2024年5月1日に中国で公開されました。

興行成績

2024年7月5日の時点で60日以上にわたり上映されて1.1億香港ドル(≒22
億円)を超える興行収入を記録し、2023年の『毒舌弁護士』が持つ香港産映画の最高興行収入記録(1.15億香港ドル)に迫っています。

あらすじ

時は1980年代、香港マフィアに追われる青年・陳洛軍(林峯)が逃亡中に九龍城に迷い込みます。

「三不管」(無法地帯)である九龍城は龍巻風(古天楽)のシマ。さすがのマフィアも追い返され、陳は九龍城の中で身を隠し続けることにします。

最初は冷たくあしらわれた陳ですが、徐々に九龍城の人たちに受け入れられていきます。

一方で洪金宝演じる「大老闆(大ボス)」や伍允龍演じる「王九(ウォンガオ)」が率いる香港マフィアは、九龍城の地主・狄秋(任賢斉)と秘密裏に取引を交わした後、陳洛軍(林峯)を狙って九龍城に攻め込みます。

元祖「動けるデブ」として名を馳せた洪金寶も登場

陳の父親が実は因縁があったりとてんやわんやするのですが、リーダーの龍巻風は陳を含めた「城寨四少」(九龍城の若手四天王とでも訳せばいいのか…)を守るため命を懸け、マフィアの襲撃によって倒れてしまいます。

最凶の悪役である王九は大ボスも倒してマフィアのトップに立ち、独自の技「硬気功」を駆使して刀や銃をものともしない殺戮を繰り広げ、九龍城も蹂躙されます。一度は敗れた城寨四少ですが、九龍城の人々を守るため再度王九に立ち向かいます。

専門家の評価

まずは鑑片工場評の映画評論より。

本作は、1980年代の香港・九龍城砦という混沌とした「三不管」の地帯を、緊迫感のある時代絵巻として生き生きと再現しています。映画は悪名高い城砦の波乱に満ちた動乱だけでなく、当時の社会の底辺に生きる人々の生活も描き出しています。

歴史的背景に基づいた社会現象の深い描写や、登場人物の運命を繊細に描くことで、観客に視覚と感情の両面で豊かな体験を提供すると同時に、旧社会の香港への深い洞察も示しています。

鑑片工場評

私の義理の母は昔九龍城に住んでいて、妻も九龍城にいる祖母を何度も訪ねたそうですが、「底辺に生きる人々」ってひどい言われようです。

「無法地帯」というと北斗の拳とかソマリアみたいな治安が悪い意味で使われますが、九龍城の場合は文字通り(中国やイギリスの)統治が及ばなかっただけで、衛生的には悪い環境ながらも相互扶助の自治によって普通に生活をしていたそうです。

お次は光明日報評の評論:

『九龍城寨之圍城』では、「九龍城寨」というテーマや迫力満点のアクションシーンが、観客に往年の香港映画への郷愁を呼び起こしました。大画面で高水準のアクションを見るのは、独特な視覚スタイルのSF映画を鑑賞するのと同じくらいの興奮をもたらします。

本作は、漫画『九龍城寨』を原作にした実写映画であり、このため登場人物たちの戦闘スタイルには漫画特有の力強さと優雅さが共存しています。一部の観客は、アクションシーンにおいて俳優のワイヤーアクションが浮ついたり漂ったりしていないとコメントし、これはアクションシーンとして非常に高い評価と言えます。なぜなら、目立つ「吊りワイヤー感」がアクションの美感を損なうことがあるからです。

光明日報評

ブルース・リーやジャッキー・チェンの生身の時代?を経てワイヤー全盛期に突入したこともある香港アクション映画ですが、それらの経験を生かした集大成と言えるかもしれません。

メイキングを見るとワイヤーがうまく使われていることがわかる

感想

九龍城

エンタメとしてはよくできていますし、タイトルにもなっているように九龍城というテーマを前面に出したことで古き良き香港のノスタルジーがよく出てると思います。既に取り壊されてしまった九龍城というのは設定としては申し分ないかと。

実際の九龍城

製作費の大半を九龍城セットにつぎ込んだということ。九龍城内は暗くて怖かったと妻は言ってましたが、太陽の光が入らない感じも当時の情景が忠実に再現されているようです。

精巧に作られた張りぼてを配置するメイキングシーン

そういえばシェンムー(という知る人ぞ知るドリキャスのゲーム)でも九龍城が出てきましたが、違法建築の団地じゃなくてほんとに城塞みたいにそびえ立っていて、啟德機場(啓徳空港)の高さ制限があった中でこれはないだろうと思ったことがあります(シェンムー自体は好きでしたが)。

シェンムー2に出てくる山の上の「九龍城」

なお、「城」は日本語ではCastleですが、元々中国では城壁に囲まれた都市を指し、今では都市や町も「城」(や城市)と呼ばれます。九龍寨城の英語名もKowloon Walled Cityです。香港には第一城(City One)や東薈城(Citygate)など、「城」が付く町やモールもあります。

沙田ニュータウンとして開発された第一城

アクションシーン

アクションシーンの感想としては思ったより激しいです。血もドバドバ出るし残酷なシーンも多いので、小さい子供と一緒に観賞するには向かないと思います。

でも古天樂も歳を感じさせないかっこよさですし、特に伍允龍演じる王九が敵役として光ってました。まあ、王九強すぎだろってのはあり、殴っても斬りかかっても傷一つつかない鋼鉄の肉体は最早カンフーの域を超えて北斗の拳や男塾の世界に近いです。

刃物も効かないという無敵属性

ブルースリーや、葉問といったリアルカンフー映画のつもりで見るとびっくりするのでご注意ください。

葉問3でマイク・タイソン(本人出演)と戦う葉問

リアルとフィクションの尺度でいうなら、イメージ的にはジャッキーチェン系をさらに脚色した感じで、周星馳(チャウ・シンチー、スティーブン・チョウ)のカンフーハッスル(功夫)よりはおとなしめな感じでしょうか。

私はどちらもOKではありますが、カンフーハッスルくらいまで行ってしまうとギャグ要素になってしまうのでちょうどいい塩梅だったと思います。

コメディーとして楽しめるカンフーハッスルのワンシーン

個人的にはもう見れなくなったしまった古い二階建てバスやネオンの街並みが再現されているのも眼福でした。

奇しくも2023に消えゆくネオン職人の映画、燈火闌珊が公開されましたが、それを観たあとだと郷愁にかられること間違いありません。

看板の「サウナ」が「クウナ」になっていたりと、怪しい日本語が再現されているのも芸が細かすぎるあるある香港になっています。

古き良き?変な日本語


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