19歳



嵐のように過ぎ去った一年だった。
もう思い出したくもない一年前。
周りの人が皆敵に見えて、誰も信用できなかった。
お金も頼るあても全くなくて、生きるためには体を売るしか方法がなくて
毎日100錠近くのブロンを流し込むしか、体を動かす術を知らなかったあの頃から
ちょうど一年。
その言葉以上に、環境が目まぐるしく変わりめく一年だった。
幼いころ、年を重ねれば当たり前に手に入ると思っていたものは、
当たり前に手に入らないのだと知った。
年を重ねるだけじゃ、大人になれないのだとわかった。
自分も。他人も。
たくさんの“当たり前”を失って、たくさんの“ズレ”を得た。
その“ズレ”が自分なのだと、社会の厳しさと自分の弱さを知った。

失ったものはものすごく大きかった。
けれど、それと同じくらい、未知のものに出逢った。
はじめて見る世界に右も左もわからず、
何度も困惑し、迷走した。

絶望の中でも小さな楽しみを感じられる自分に、嫌気がさした。
“私なんかが幸せになってはいけない”“幸せになるのが怖い”
自ら危険な方向に走ることをやめられなくなる時は、今でもある。

こんな年になっても、言語化できない感情にどう向き合えばいいのかわからない。



私はこんなのじゃなかった、と最近よく思う。
ずっと何かの分厚い仮面をかぶって、何にかはわからないけれど
ずっと何かに怯えているような。
話し方はゆっくりで、トーンは1オクターブ上、ただ笑顔で相槌を打つだけのお人形。

今の私は、とにかくよく話すようになった。


そんな自分が今までとはまるで別人のようで
自分が自分じゃないみたい。

それぐらい、変わった。
自分も周りの環境も大きく変わった。


それでも変われないものもあった。
いつまでたっても捨てられない感情を抱きながら、
生きたくもないのに死ねないからただ生きてる、それだけ。




目に見えるわかりやすい進歩がなかった。
ただ、それでもいいかもしれないと思えるようになった。

まだまだ未熟な私はどんな大人になりたいのかですら、まだわからない。
“生きたい”ともまだ思えない、一年後自分が生きている姿すら想像できない。
先が見えなくて怖くて、ただただその一瞬一瞬を何とか生き延びてる、だけ。

周りからは随分と遅れているし焦るけれど、
今はそれでもその一瞬を大切にできたらいい。

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