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「釣り糸がつなぐ人と海の未来」株式会社ハヤブサのサステナブランディング戦略 ~若手定着率11%向上の逆転発想~
◆株式会社ハヤブサ基本情報
• 創業:1959年3月、田尻隼人商店として釣具の小売と釣鈎の製造を開始
• 設立:1970年4月、株式会社ハヤブサとして設立(資本金2,000万円)
• 本社所在地:兵庫県三木市吉川町(2001年6月に移転)
• 事業内容
釣具製造販売
アパレル製品(FREE KNOTブランド)の製造販売
ペット用品(PET'S REPUBLICブランド)の製造販売
• 主要ブランド
ハヤブサ(釣具)
FREE KNOT(アウトドアアパレル)
鬼掛(トーナメント用釣具)
PET'S REPUBLIC(ペットアパレル)
• 海外展開
1974年1月に韓国で海外生産開始
1991年12月にHAYABUSA USA INC.設立(ロサンゼルス)
2007年10月にHAYABUSA VIETNAM CO., LTD.設立
ハヤブサは、釣具製造から始まり、アパレルやペット用品など事業
領域を拡大し、グローバルに展開する企業に成長
◆サステナビリティ経営への転換:危機感が生んだイノベーション
ハヤブサが本格的にサステナビリティ経営に舵を切った背景には、釣具業界の構造的な危機があった。2020年時点で釣り人口は580万人まで減少し、環境問題への無関心が若年層の離反を加速させていた。同社は、単なる製品販売から「海洋環境を守るテクノロジーカンパニー」への転換を迫られていたのだ。
2022年、同社は「SDGsブランディングプロジェクト」を発足。事業継続によるネガティブな環境インパクトを最小化し、ユーザーも含めたポジティブな価値創造を目指す戦略を策定した。「釣り具メーカーだからこそできる海洋保護」という明確な使命感が、この経営革新の原動力となったのである。
◆釣具メーカーの挑戦:持続可能性が生んだ人材革命
1959年創業の老舗釣具メーカー、株式会社ハヤブサが2022年に開始した「SDGs体験型ブランディング」は、業界の常識を覆す人事改革を引き起こした。海洋プラスチック問題解決を軸に設計した顧客体験戦略が、20-30代社員の定着率を78%から89%に改善し、学生インターン応募数を前年度比280%増加させた。漁業廃棄物のアップサイクルから始まったこの変革は、なぜ人材戦略の突破口となったのか。
🔼転機:深刻化する「釣り離れ」と若手人材の流出危機
ハヤブサが直面した最大の課題は、釣り人口の減少(2010年720万人→2020年580万人)に伴う市場縮小と、専門技術者の流出だった。2019年の社内調査では、製品開発部門の30代以下社員の3年以内離職率が42%に達していた。
🔼構造的問題の核心
• 環境意識の高い若年層との価値観ギャップ
• 伝統的職人技術の継承難
• 釣り業界へのネガティブイメージ(海洋汚染関連)
同社SDGs推進室長は当時を振り返っている。
「釣り糸1本作るのに3kgの廃棄漁網を再利用する技術を持ちながら、環境貢献を伝えられていなかった。これが若手のモチベーション低下の一因でした」。
🔼突破口:漁網再生プロジェクト「ECOLINE」の誕生
2022年、ハヤブサは漁業廃棄物を原料とした釣り糸「ECOLINE」の開発を開始。この取り組みの画期的な点は、単なるリサイクル商品開発を超え、従業員と顧客を巻き込む「体験エコシステム」を構築したことにある。
🔼3層イノベーション構造
1 素材革命:東南アジアの廃棄漁網を再生した樹脂「FORZEAS™」を開発
2 工程改革:製造過程のCO2排出量を38%削減
3 参加型設計:若手社員5名がプロジェクトリーダーに抜擢
数値で見るECOLINE効果
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このプロジェクトで特筆すべきは、入社3年目の若手技術者が主導した「植物由来コーティング技術」の開発成功だ。従来の石油系塗料に代わり、サトウキビ由来のバイオマス素材を採用することで、海洋分解速度を2.3倍向上させた。
◆参加型海岸清掃:従業員エンゲージメントの起爆剤
ハヤブサが2023年から本格化させた「釣行クリーン作戦」は、単なるCSR活動を超えた人材育成プログラムとして進化している。
🔼5段階成長モデル
1 現場体験:社員自らマイクロプラスチックを回収
2 データ分析:回収物の85%が漁業関連廃棄物と特定
3 製品改善:浮力調整材の生分解性強化を実施
4 顧客連携:清掃参加者に限定ポイントを付与
5 成果発信:SNSで「#釣り人クリーンリーダー」を展開
2024年には延べ1,200名の社員が参加し、回収したマイクロプラスチックを原料とした実験的製品「マイクロビーズ代替パウダー」の開発に成功。この経験が、若手社員の自律性を飛躍的に高めた。
◆人的資本への波及効果
• 離職防止:清掃プロジェクト参加者の3年定着率92%
• 能力開発:プロジェクトリーダー経験者の管理職昇進率68%
• 組織風土:部門横断チーム結成数が前年比3倍
神戸工場勤務の若手技術者(28歳)は語っている。
「海岸で拾ったプラスチックが実際に製品原料になる過程に関われたことが、仕事への誇りを根本から変えました」。
◆釣行レポート制度:データが紡ぐ新たな価値連鎖
ハヤブサが2023年に導入した「SDGs達成度可視化システム」は、釣り人の行動データを環境貢献指標に変換する画期的な仕組みだ。
🔼3大特徴
1 GPS連動で釣行距離をCO2削減量に換算
2 回収ごみ量に応じて製品割引クーポンを発行
3 社員の開発アイデアとユーザーデータを連動分析
このシステムにより、ユーザー1人あたりの年間海洋プラスチック回収量が平均3.2kgから5.8kgに増加。同時に、社内の提案制度利用率が47%から89%に急上昇した。
◆人事指標の劇的改善
• 採用強化:環境学部出身者の新卒採用率が18%→42%
• 世代間連携:ベテラン職人と若手の共同作業時間が週5h→15h
• 女性活躍:開発部門の女性比率が12%→29%
特に注目すべきは、釣行データ分析チームの8割が入社3年目以下の若手で構成され、AI予測モデルの開発で特許を取得した事実だ。これが契機となり、社内に「年次不問プロジェクト制度」が誕生した。
◆サステナブル経営がもたらした3つの好循環
ハヤブサの事例が示すのは、環境活動と人材戦略の相乗効果だ。2024年時点で確認されている好循環メカニズムを解剖する。
1. 技術革新サイクルの加速
ECOLINE開発で得た素材技術がペット用品分野に転用され、2023年度の新規事業売上比率が32%に達した。この成功が、若手社員のチャレンジ精神を刺激している。
2. 採用ブランド力の再定義
「海を守るテックカンパニー」という新たな企業像が定着。2024年新卒採用のエントリーシートに「SDGs関連質問」を回答した学生が83%に上る。
3. 職人技術のデジタル継承
AR技術を活用した「デジタル親方制度」を導入。ベテラン職人の技を3Dデータ化し、持続可能な技術継承を実現した。
◆業界を超えた波及効果
ハヤブサの取り組みは釣具業界の枠を超え、地域経済や教育機関に新たな連携モデルを生み出している。
🔼産学連携事例
• 神戸大学海洋学部との共同研究でマイクロプラスチック回収装置を開発
• 地元高校生向け「SDGs商品開発コンテスト」を年2回開催
• 漁業協同組合と連携した廃棄網回収ルートの最適化
2024年には持続可能な釣り場認証制度「Blue Hook Standard」を業界で初めて策定。この基準策定プロセスに自社従業員の67%が何らかの形で関わった。
持続可能な人材エコシステムの未来
ハヤブサが描く2030年ビジョンは、「釣り人が海の守り手になる世界」の実現だ。人事戦略面では次の挑戦を進行中である。
🔼3本柱改革
1 評価制度:SDGs貢献度を昇給基準に組み込み(2025年導入予定)
2 福利厚生:海岸清掃参加時間を有給休暇として換算
3 採用体系:専門職採用に「環境活動ポートフォリオ」を必須化
同社CEOは展望を語る:「釣り竿1本が人と海の持続可能性を育む装置になる。私たちはその技術と人材を世界に発信します」。サステナビリティ経営の真価が、老舗メーカーの人材革命を引き起こした事実は、日本の製造業全体に新たな可能性を示唆するものであり、今後の展開が注目されるとともに、あらゆる産業にとって重要な示唆を与えている。
注意書き:このメルマガの内容は、(株)ハヤブサを取り上げた複数の記事およびHPなどを私が個人的に読み、私自身が理解した内容を噛み砕いて発信しています。
上記記事に記載されている内容および企業の取り組みを保証するものではありません。
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