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仕事とは、お互いのできることを交換すること

「私にできることなんて何もないんです」

このままの人生じゃ絶対に後悔する。29歳の頃、そんな青臭い思いで安定した会社を辞め、何の保証もないままピンときた場所へ飛び込み働き出した。でもすぐに上手くいくはずもなく、自信を失いかけていた頃「私にできることなんて何もないんです」と、友人にポロっと言った時だった。

「仕事って、お互いのできることを交換することなんじゃない?」
そう言われ、ハッとした。

大学に入り就活をして、安定した会社に入る。敷かれたレールで長く働くことを前提にジェネラリストの道を歩む。サラリーマン家庭で育った私にとって、それが当たり前の生き方だった。それを信じて疑わずに進んでいたが、「仕事に我慢は付き物だから」「世間的にはこれが普通だから」違和感を感じながらもそう言い聞かせるたびに感覚が麻痺していくことに気が付いた。当時商業施設の運営の仕事をしていた私は、今できることで自分の感覚が取り戻せることは何かと必死で考え、誰もが生き生きと楽しく働くために何かしたい。テナントの店長やスタッフがもっと楽しく働ける場所であってほしいと、担当する仕事の範囲外でイベントを企画したり、テナント関係なく横のつながりができる仕組みを考えては小さく実行したりしていた。

当時はこれが仕事として成立するなるなんて1ミリも思っていなかった。その後会社を辞め、もがきながら前に進んでいって偶然辿り着いたのが、シェアオフィス MIDORI.soと、コミュニティオーガナイザーの仕事だった。そこに待っていたのは意思を持って設えられた空間、それぞれにストーリーを持つ家具、心地良い音楽、季節を教えてくれる花や植物に囲まれ働くことができる環境だった。その空間に引き寄せられ入居するメンバーたちに、おはよう!と挨拶をし、掃除をし、コーヒーを淹れながらメンバーと最近の話をする。そんな経済的には非合理的であろうやり取りの積み重ねが居心地のいい場を作り出し、人がつながり出す。自分の感覚と経験を信じ道を切り拓いているメンバーたちの話は互いに刺激を生み、気が付けば仕事でコラボレーションしていることもしばしば。

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photo: Masayuki Nakaya

最近ではそんなMIDORI.soの取り組みを知り声を掛けていただいた企業と一緒にシェアオフィスを作ったり協業することも増えた。自分が心の底から楽しんでいることが仕事として成立し、社会から必要とされていることに驚きと益々のやりがいを感じている。

変化が激しく未来予測が難しいVUCA時代と呼ばれる今、仕事や職業、会社の在り方も着実に変化している。職業名が付き定義された仕事をしていたとしても、その枠を外し、突き詰めると自分ができることは何なのか?直接的ではなくても、すぐにお金にならなくても、自分のできることで社会に還元できるのはどんなことなのか?私の友人が言ったように、仕事とは突き詰めると「できること同士の交換」なんだと思う。それを必要とする相手、場所、手段を諦めず探し続ければ、きっと道は拓ける。そう信じて良い仕事をする人たちと、これからも出会い続けたい。


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